【和解の日曜日】
ジリリリリリリッ
けたたましい音がなって私は飛び起きた。
窓の方に目を向けると、カーテンの隙間から朝日がさしこんでいる。
晴れた、いい朝だ。私は急いでベッドから飛び降りると着替えてすぐにリビングへ向かった。
そしてリビングのドアをどきどきしながら慎重にあけると、
「お、ミト。ちゃんと起きたか」
リビングではジンが待ってくれていた。ああ、良かった。
ほっと一安心して胸を撫で下ろすと、ジンが笑った。
お母さんに朝ごはんを食べるように諭され、二人で席に着く。
「いただきます!」
いつになく清々しい朝。
それには訳があった。
今日は、ジンと久しぶりに出かける日なのである。
***
「いってきまーす!」
お母さんにそう告げ、私は玄関から勢いよく飛び出し走り出した。
ジンはそのあとからゆっくりと出てくる。そして走る私をみて呆れたように笑った。
「おいミト、走ると転ぶぞ」
そう言いながらもジンも走り出して私を追い越そうとした。
私も負けじと走って競争になるがジンに敵うはずもなく呆気なく追い越される。
「大人げないー!」
「俺はまだ子供だぜ」
「こういう時だけそうやって!ずるい!」
私は抗議するがジンは笑うばっかりでちゃんと聞いてくれない。
それどころか、競争しようぜ!とか言ってさっさと走り出してしまった。
よーいドンも言わずに走り出すとか何あいつマジで大人げないぞ……
負けるのはムカつくので私も文句を言うのはやめて、全力で走った。
くじら島の風は気持ちが良い。風にのってやってくる海のにおいを吸い込んで、ふと前を走るジンを見た。
朝のやわらかい日差しが、小さいくせに大きい背中を包み込んでいる。
一瞬、ジンが見えなくなった。一層強く光を放ったそれは、
ずっと見ているのには少し眩しすぎて、私は目を閉じる。
それでも尚、それは綺麗な日の光を浴びて煌めき、
きらきらと、きらきらとして、存在感をなくそうとしないのだ。
それなのに目を開いた瞬間、何処かへ消えてしまいそうでもあった。
いや、太陽の光を浴びて輝いているのは、少し違うかもしれない。
例えば彼自身が、きらきら輝く太陽なのだろうか。
「?どうした?」
ジンはいつかきっと遠くに行くのだろう。この人にとってくじら島は狭すぎる。
そうだ、きっとではなく絶対、ジンは私を置いて私の知らない何処かへ行ってしまうんだ。
そうしたら私はもう、この人をこうして追いかけることもできなくなる。
私は此処が大好きで、ずっと此処に居たいって思うから。
それを押し込めてジンについていくのは、少し違う気がするから。
だからきっと、お別れはもうすぐそこまできている。お別れしたらもう、簡単には会えない。
それはとても哀しくて苦しいけれど、
それでも私は、
「ミト、おいてくぞ!」
「あ、待って!」
この日の記憶が、大人になってもきらきら輝いていたのなら
それはとてもあたたかくて、幸せだろうと私は思ったのだ。
130209
和解の日曜日
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