すりー!
ガールズトークはもうしない。
昨日そう決意を固めた次の日、私の前には女性陣がいた。
時刻はきっかり夜9時をまわっていて、つまりシズクとマチの就寝時間の筈だ。
何でこの人達今日はぱっちり目ぇ覚めてるの。ていうか何で呼んでないのにいるの。
私が疑問符を浮かべていると、パクは私の部屋を見渡して言った。
「あら、今日は布団ひいてないのね」
「え…今日みんな呼んでなくね?」
私が正論を言うとマチはむ、と不満そうに顔をしかめた。なんでだ。私間違ってないぞ。
「i子は気がきかないね」
「なんだと」
「ほら、早くひこうよ」
「ちょっ、待て待て一体どういう風の吹き回しですか」
私が問うと、マチは今度は怪訝そうな顔で此方を見てきた。その間にもパクとシズクはテキパキと布団を敷いている。
動きがプロだった。
「どういうって…アンタが望んだものだろ」
「え、」
「ガールズトークだよ」
え……何でそんなノリノリなのマチさん。
ていうかあんたらのしてるのはガールズトークっていうか団長トークじゃん。
まさか今日もそれしに来たのか。何てこった。私それ全然やりたくないよ。
団長は好きだけど、別に語れないよ。そういうんじゃないよ。
「あの、帰ってください」
「良いからi子も布団敷くの手伝いな」
「そうよ、折角集まったんだから」
「楽しくやろうよ」
「れっ連携プレーだと!?」
折角集まったって、あんたら昨日まで私が集めても文句言ってたくせに!
そんな私の言葉はスルーして、三人は布団に潜って話始めた。
本当にひどい人達だ。私は諦めて渋々布団に入った。
そしてそのまま寝ようと思ったが、まだ9時なので眠気もやってこず。暇なので目を瞑りながら三人の話に耳を傾けていると、
衝撃的な言葉が耳に入ってきた。
「昨日さ、団長が真剣な顔で前転の練習してるの見たんです」
………
……………ん?
ちょっと待て、シズクが当たり前のように
何か変なこと言ってるぞ?
「ちょっと待って、前転?」
「あ、i子起きてたんだ。うん、そうだよ」
「真剣に?」
「うん、体操の本を見ながら」
「ええええええ」
何で!?何で団長小学生がやること真面目にやってんだよ!?
何処で使うんだよそれ!!
「団長は何でもやるからにはしっかりやるからね」
「ほんと、団長らしいわ」
「かっこいいね」
「ちょ、待て待て待て待て待て」
何故か尊敬するようなきらきら輝く目で語り続ける三人が信じられず、慌てて止めるとマチに何邪魔しとんじゃコラという風に睨まれた。
ひぃ、マチさん絶対目で一人くらい人殺してるよこれは。しかし今は怯えている場合ではない。あの団長が、え?
「可笑しいだろ!!」
「何が可笑しいの?」
「いやいや、逆に何でそんな普通なんですか!?」
「何でって…団長よ?」
「わからないよ!!そんな当たり前のように言われても私の団長のイメージと全然違うんだよ!!デマだよね!?だれだそんなデマ流したヤツ!!」
「ねぇ、向こうの部屋でノブナガが何か言ってるよ?i子の事呼んでるんじゃない?」
「大体団長子供の頃も前転できたし!やる必要ないじゃん!!」
「……ほっといて続けましょうか」
「そうだね」
「i子、ノブナガがくたばれだって」
「お前が氏ね!」
そのまま私がわーわー喚いていると、マチにとうとう念糸で縛り上げられシズクには口にガムテープを張られた。
部屋の主になんて仕打ち!?
そしてそのあと私が何をしても三人は話に夢中でこっちを見る事もしなかった。
私が見事に縄ぬけ…いや、糸ぬけしてみせてもぺちゃくちゃと、まるで私をないもののように扱うので気が遠くなった。
こうして、夜は今日も過ぎていく。
…明日誰かにもう一度今日の話が真実か確認してみよう。
130311
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