つー!
次の日。
「さて、ガールズトークしようか!」
「まだ言ってたのアンタ」
「諦めが悪いのは相変わらずね」
「おやすみ」
そう言いながらもちゃんと今日も来てくれた女性陣。何だかんだでいい人達だ。
昨日一晩かけて恋バナが如何に素晴らしいかを語り明かした甲斐があったのか、今日は全員自ら布団に入ってくれた。しめしめ、これで今日こそ皆の好きな人聞けちゃうぜ。
それに意味があるのかと問われると特にないと言わざるを得ないが、ただ、ほら、なんとなく何か良いじゃんそういうの。要は感覚。それが一番大事。
あっこらシズク寝るな!
寝ようとしているシズクを叩き起こして仕返しに無表情で頬をつねられながらも、うきうきと弾んだ声で私はみんなにどうしてもしてみたかった質問をした。
「ねぇねぇ、みんな好きな人いないの」
「いないね」
「いないわ」
「いないよ」
「何だこいつらつまんね」
マチに殴られた。いたい。しぬ。筋肉お姉さん。
しかし、わざとらしくうずくまる私をスルーして
パクは考えこむような素振りを見せたあと口を開いた。
それはとても優しい表情だった。わぁ…私が痛がってるのはホントにスルーだ…
でもパクがあんまりにも穏やかな顔をするので私は口を閉じて言葉を待った。
「大切な人なら、いるわ」
「うおーそれそれ!それだよ!そういうの待ってた!!」
隣の隣の部屋からうるせぇっつってんだろ!!!という声がまた聞こえた。
続けて、その声がうるせぇよ!!!という声も何処からか聞こえる。
ああ…ノブナガとフィンクスか。お前ら両方共うるさい。近所迷惑だ。こんな夜中一体どういうつもりなんだろう。
うるさい苦情の声をスルーしつつ、パクの大事な人について考える。
「パクの大事なひとかぁ…どんな人?」
「団長よ」
「言っちゃったよ!」
「あ、団長なら私も大事」
「あたしも」
ええ、こういう時って「だれだれ〜?」「おしえなーい」「良いじゃん〜」
って言うのが普通って聞いたんだけど。あっさり答えられちゃったよ。
何だこの人達ホントにつまんないな!!そう思ってたらマチに睨まれた。エスパーマチ。
ていうか団長モテモテすぎだろ…これ修学旅行じゃなくてよかった。
修学旅行だったらもうこの場の温度は氷点下まで下がって、ブリザード状態だよ。
「団長は素敵だわ」
「うん、団長はかっこいい」
しかし、恋愛的な話ではないこの場に一切そういう空気はなく、寧ろ三人は楽しそうに団長の良いところについて語り始めた。
いやいや、これ最早ガールズトークじゃないよ、団長トークだよ。
「でさ…」
「あああ!!何かちがうよ!!!」
「何だい、アンタが好きな奴について話したいって言ったんだろ」
「そうだけど…これはちがうよ!」
「どうして?」
「どうしてもだ!ていうか私を置いてかないで!」
「i子も入れば?」
「いや、私も団長は好きだけど…!」
言いかけてハッとした。
何だこれ、何だこれ。流されるなi子、私がやりたいのと大分違うぞ!?
だってこれ誰得だよ、団長がハーレムなだけだよ!!
叫んでいると、またうるさいと苦情の声が聞こえた。誰だか知らんがとんだクレーマーだな。嫌な時代だ。みんな我慢を知らない。
しかし、私がいくら叫んで苦情を言われても、団長に夢中な彼女達にそんな私の抗議は一切聞き入れてもらえず、結局そのまま夜は明けていった。
そして私はもうガールズトークを諦めた。
僅か2日で断念とは無念だ。諦め早いな私。
でももういいんだ。切り替えは大事。別の人誘ってやろう。相手が悪かったよ。
皆団長大好きだもんね。恋愛より蜘蛛だもんね。そういや私もだわ。
兎に角ガールズトークはもうやめだやめ。あんま楽しくない。止めた止めた。
そうして私は決意を固め、団長の長所連発をBGMになんとか眠りについたのだった。
130305
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