しっくすてぃーん!

ここ数日のうちに、良かったと思うことがいくつかある。いや、ここ最近の私が超絶苦労人すぎたせいで“よかった”のハードルが下がっている気がしないでもないが……まぁね、そういうのはね、気にしない方がいいに決まってるよ!低いハードルでもよかったことには変わりないわけだし、良いことは多いほうがいいし。私気にしない!i子は素直な良い子です。泣けるね。泣け。

とにかくいきます、いいことその1!団長があほの修行を昼間にしてくれた上に、週三日にしてくれたこと!
私が女子なのにガールズトークに参加出来ないのは悪いと思ったらしい団長のお心遣いです。(だけど「女子なのに、」と言ったあと「いや、ん………?」とかいって二度見してきた時は、いくら我等が団長と言えどパンチをお見舞いしたかったぜ!くたばれ!)
正直ガールズトークは、ガールズトークというか団長トークだし別に全然したくないけど、これで私のランニングの趣味も少しは楽しめるようになったわけだ。よかったよかった。

いいことその2!コルトピの部屋のドアが直ったこと!
毎晩私に、震えながらお願いしてくるコルトピくんの安眠がこれで少しは保障されたわけだ。言いがかりもいい所だよ。コルトピのやつ、今朝はみんなに祝福されながら自分の元の部屋まで練り歩きやがって、パレードのつもりかこの野郎。
次言いがかりをつけて床ドンしてきたらいくら可愛いコルトピでも許さない。即座に私はロケットみたくジャンプして天井を突き破ってコルトピにこんにちはをしに行ってやる。

その3!ノブナガの寝付きがよくなったらしいこと!(フィンクス情報)
睡眠欲求が遂に頂点に達したノブナガは、多少の雑音や騒音にも耐えられるようになり、ハイパースリーピングノブナガへと………はい!これはめっちゃどうでもいい!私の美声を雑音騒音という時点でハイパーだろうがなんだろうが全員阿呆だ。相手にしていられませんね。

その4!シャルナークくんの小遣い稼ぎみたいな商売がマチさん達によってとうとう潰されたよ!やったぁぁああぁああああぁあああああ〜〜〜!!!!


────しかしながら、事の発端であるガールズトークは未だ健在。今日も私は文句を言われないように、一人せっせと布団をしくのである。
布団を敷きながら、考える。マチ達はものすごく団長が好きで、旅団は意外とハートフルだとこの一連の騒動(?)の内でよくわかったが、その愛情の形が一体どんなものなのかと聞かれると、それは未だに不明だ。
例えば、団長と恋人みたいなことがしたい、そういう好きじゃない事はわかる。それでもマチは団長が世界で一番好きなんだろうし、そんなちんけでくだらないものなんかには絶対に死んでもしたくないんだろうとも思う。
私達は異質だ。そして旅団が旅団である限り、そこにいくら愛情があろうともお互い正しい愛情表現がなされることはなく、結局最終的には、いつまでもそれは冷たく殺伐とし続けるんだと思う。どれだけの愛情があろうとも、蜘蛛はいつか、その愛でお互いを殺すんだ。
でももし、マチが普通の女子高生で、クロロも普通の男子高校生ならば、そういうふうに好きになったんだろうか。もし、私が普通の女子高生だったら………────




「……あれ、パク。まだ8時半だよ。フライングだよ。お帰りください」

「こんばんはi子。聞きたいことがあったのよ、ダメかしら?」

「いや、それなら別にダメじゃない」



どうぞどうぞと言って私はすぐさま勢いよく布団の上にダイブした。埃が立つわ…と少し嫌そうにしながらも、パクも布団の上に座る。
私は布団に埋もれながら、こっそりパクを盗み見て、それから団長トークが理不尽にも始まった日を思い出した。大切にしまってある宝物を扱うように、柔らかい布で包まれたそれを取り出すように、丁寧に告げられたパクのあの言葉。
私はあのときただ、そういうのだよ!ってめちゃくちゃに喜んだけど、ほんとに、そういうのなんだよな。私は馬鹿だけど、あの時のパクが誰よりも綺麗で尊くて素敵だったってこと、知ってる。いいなって思った。



「それでなにー?改まって。みんな来てからじゃダメなの?」

「ダメって訳では無いかもしれないわ。けど、一応ね。ずっと気になってたの。」

「……?」

「…i子は、」





────i子は、好きな人がいたの?



「え?」

「私達にガールズトークをしようと持ちかけたときに、ひょっとしたらいたんじゃないかしらと思って」



パクの質問に、私は思考を巡らせた。そうしてすぐに思い当たるものに辿り着いたけれど、しかし私の頭は、その質問の答えを叩き出すことは、出来なかった。
元々これに関して言うつもりはなかったし、いないよで済ましても良い。けど、相手はパクだし隠せるわけもないので、私はそのままにパクにこたえた。



「…わかんない」

「そう……わからないなら、あまりお勧めはできないわね。手を引くか…そうでなくともせめてはっきりさせなければ。曖昧である事が私達みたいなのにとって一番の弱みになる。違う?」

「いや、違わない。わたしもそう思う」



本当にその通りだ。中途半端に近づいたら一番悲しい結果が待っているのは目に見えている。
ここぞというときに一瞬でも迷ってしまわないように、好きなら好き!そうじゃないならそうじゃない!はっきりさせなきゃいけない。まずはっきりしないの嫌いだし。
優先順位でいったら、答えはもう決まってるし、例えば覚悟を決めて近づいたからって、一番は揺るぎなく旅団なんだけど、でも────いや、それがもう答えか。
私ってダメなやつだなと、珍しく弱気に(可愛らしく)ため息をついた時、ふとパクのまっすぐな視線に気づいて、私はとりあえず胸の前で手をクロスした。



「見ちゃやーよ」

「私はそこまで野暮じゃないわ。あなたじゃあるまいし」

「いや私も野暮じゃないよ!パクは私にどんな印象を抱いてるの!?」

「i子は無神経よ」

「ここぞとばかりに毒吐かないで!?」



誤魔化すことなくストレートに告げられた言葉が私の胸にまっしぐらに飛んできて突き刺さるーー!!恐ろしい威力!!ちょっとシリアスというかしんみりしてたんだからもうすこしマイルドに行こうよ、気遣ってくれよ、私だからいいと思ってんのかパクでも許さんぞ。



「パクはいっつもさりげ酷いんだよこの私の可憐で繊細な麗「マチもシズクも、はっきりと言ってはいなかったけれど、気にしてたわ。あなたの恋愛話」お〜い聴いてくれ〜〜〜」

「いつか、話せる時がきたら……話してあげたら、きっと二人とも嬉しいんじゃないかしら」

「はぁ…みんなガールズトーク大好きだなぁほんと、女子力高すぎじゃない?もう女子高生なれるって」

「i子も…、i子だって……いえ、そうね……i子は……もう少し周りを気遣った方がいいわね」

「ウルセェ」



何度も言ったかもしれないし、言わなくてもわかると思うけど、私は無神経ではない。少なくともみんなよりは協調性はあるし、決してゴーイングマイウェイってことはない。わかる人にはわかるはずなんだよね、裸の王様的な。
要するに、たぶんパクは嘘つきなんだろう……仕方が無い。反論しても無駄だ。



「ガールズトークか…まぁでも、話すつもりはなかったけど、話したくないわけではなかったんだ、私も」

「あら、じゃあ聞かせてくれるの?」

「うん、こんなので良かったら……皆聞いてくれる?」

「ええ、勿論」



9時になったらね。
ガールズトークの時間まで、あと少し。

170114

 
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