いれぶん!

※団長のキャラが壊れます。それはもう1作目のドラマCDのように壊れます。




その夜、私はとうとう見てしまった。



『なんでやねん!』

「ふむ…」



それは、見間違えでなければ、団長がお笑い番組を深夜に一人で観ている光景であった。
いや。ふむ、じゃねえよ団長。そこ笑うところだよ。何してんだあんた……
いや、でも団長だってお笑いくらい見るか。でも一人でこっそり見ることないのにな。今度一緒に観ようって誘ってみようと考えていると、
団長がテレビを不意に消した。そして、何やら本を片手に取りシュッシュッと人を叩く動作をし始める。



「大切なのはタイミングとスピード、つっこみの台詞回し…か。全て心の中でi子で試しているから問題なし」

「(は…?)」



なんだと!?
しかし今はそこにつっこんでいる場合ではない。
団長の人を叩く動作はどんどんはやくなり、
本をぽいっと投げ捨てた瞬間、

ドゴォッ



「なんでそうなるんや!」



壁を破壊した。
団長が全力の顔で壁を破壊する姿はとてもシュールで…



「ぶふぅっ!!!」


私の腹筋も崩壊した。
当然光の速さで団長はふりむく。目が合った。
重たい沈黙があたりをつつむ。



「………」

「………」

「……だっ…団長私何も見てないです!間違えたんですちょっと」

「面白かったか」

「…え?」

「いまの、面白かったか」



恐る恐る団長の目を見ると、それはもう真剣だった。
いや…面白かったというか……口ごもっていると、「率直な意見を聞かせて欲しい」と言ってきた。
そんなの言えません。



「ま、まぁ…おもしろかった、かな」

「ふむ…」



内心かなり動揺している私を放置して、団長は少し考える素振りをしたあと、困ったように笑った。



「どうもしっくりこなくてな」

「はぁ…」

「そうだ、i子、少しボケてみてくれないか」

「え!?」



なにこの無茶振り!!
本気で言ってんのかと疑ったが団長は期待するようにこちらを見てくる。
これは…幻影旅団ボケ係i子、やるしかないのか…!?



「…………」

「…………」

「……ふっ…ふとんがふっとんだぁーー……ぁ?」



ようやく恥を捨て、勇気を振り絞り私がそう叫んだ時、
私の視界に映っていたのは団長の念を帯びた平手であった。

バシンッ



「いっ!?!?」

「誰がだじゃれ言えゆうたんや、普通にボケればええねん」

「ええええええええ!?」



凝でガードしてなんとか助かった肩を抑えながら私は戦慄した。ほんとにどうしちゃったの団長!?!?
そんな私の心の声も届くはずもなく、私の頭にぽんっと手をのせた団長は、「そうだ、i子も観るか」とか言うと名案だというふうにうなずく。
そしてそのままわたしの頭を鷲掴みにしてずるずるとテレビの前に連れていった。
そのあと一晩中お笑いを観せられることを何となく予感した私は、過去の私にトイレに行ったついでに団長の部屋を覗かない方がいいと警告してやりたくなった。



「…団長なんで真顔で観るんですか、気になって笑えないんだけど」

「もう何回も観たから笑えないんだ。セリフも全部覚えてる。はいどーもー」

「いや言わなくていいです遠慮しときます」

「あ、あと。このことは皆には秘密にしてほしい」

「え、」

「i子も修行は人には見せないだろ?」

「ま、まぁ…」



いや、でももうみんなしってるんですよ。団長。

140216

 
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