ないん!
やばいやばい。やばいやばいやばい。
シャルをしめるために出ていってしまったマチとパクとシズク。ほんとにもうこんな夜中に面倒な…!
とにかく慌てて廊下を駆け抜けた。夜中にごたごたするのも物凄い面倒だけど、シャルは怒るとそれ以上に面倒なのだ。面倒ごとは本当にごめんだ。私は楽しくボケて過ごしたいの!
結構距離のあるシャルの部屋。三つ目の角を曲がったところで、プチ事件が起きた。
ドンッ
「ぎゃあっ」
「…!」
誰かにぶつかり、相手も私も吹っ飛ぶ。
きゃ、青春のはじまり…とかふざけたことを思ったが、起き上がって相手を見て固まった。
「あああ…フェイタンさんではありませんか…」
「…………」
「その…はい……」
「……………」
「すいませんでした」
素早い動作で土下座をする。シャルなんかより、この人怒らせる事が一番めんどくさくねちこく、しかも暴力的で怖くてやばい。
フェイタンは尻餅をついたままでも威圧感を放っていた。こええ。フェイタンさんぱねぇ。
何も言わないから沈黙が痛くて、もう一度謝るとようやくフェイタンは「……ちっ」と舌打ちかまして立ち上がった。
ちくしょう偉そうにちびが…今回は私が悪いから謝ったけど次回からはこうはいかないんだからな。
心の中でそう悪態づきながらも土下座の体勢を保つ私は大人だ。屈辱的だけどフェイタンが去るまでこれで我慢するのが得策だもの。
「………」
「………ん?」
しかしなかなかフェイタンは去らない。
あれ?と思ってたら、こちらに向かってくるフェイタンの足音。え?何で逆に近づいてくるの?
そう思って思わず顔をあげたら、
「………おい」
「…はい?」
「これ、何ね」
そうイライラした声で言ったと思ったら、フェイタンは突然私の顔にビシッと紙を突きつけてきた。
あまりの態度のでかさにさすがに耐えきれず、わざとはたくように紙を取り上げばっと見ると、
団長のジョジョ立ち写真。
「あ、……ぶふっ」
「なに笑てるか」
「いっいや、改めて見ると、ちょっと、傑作かもなって、くっ」
「………おいお前」
「へっ」
ずおっ
フェイタンの手が近づいてきて、やばいと思った時にはがっと思い切り襟首掴まれて持ち上げられていた。
「ぐえっ」
「お前、団長盗撮するなんていい度胸ね……!」
「いや、わた、わたしじゃな、ぐるじい、この、くそちび…!!」
「…殺す」
「うそうそうそです!身長なんて関係ないさそしてわたしじゃないよその写真撮ったの!」
「じゃあ誰がこんなことするか?」
「それはね、」
私が事の元凶となったやつの名前を言おうとした
そのとき、
「ちょっとi子!!」
そんな声が聞こえた。フェイタンと二人して声の方を見ると、プンスコしてるシャルナーク。噂をすれば……!!
「i子、あの写真3人にばらしただろ!!」
「え、うん」
「合計で150枚も写真巻き上げられたんだけど!大赤字だよ!!しかも何か殴られたし…120000J払ってよ!!いや、慰謝料も含めたら…」
「は、わたしが!?私がはらうの!?」
私別に悪くないよ!そもそもお前が盗撮なんてするからだろ!
団長ファンって全員頭どうかしすぎでしょまじ怖すぎ…私の襟首を現在進行形で掴んでいるこの男も含めて…あ!そうだ!離せよ!!
怒り心頭だったシャルもそこでようやくこの状況に気づいたかのようにあれ、と言った。
「てか、フェイタン怒ってるの?なんで?」
「お前のせいだよ!そしてフェイタン離せ!犯人アイツです!!」
「シャルか」
「え?なにが?」
「ちょ、襟首離してってそろそろ服ちぎれるから、エロ同人みたいになっちゃうから!きゃーえっち!乱暴しないで!」
「はっww」
「あ?てめなんだ今の笑いは?その憐れむような目やめろ?」
冗談で言ったのに何だその目!冗談通じないやつ嫌いだよ!まぁ、ほとんどのやつが通じないんだけど…シャルも何か自室の壁を這うナメクジを見たような顔をしているし…
つまらんやつらめ!!
「馬鹿は放とくね。…で、この写真シャルが撮たか」
「あーうん俺。1枚800Jだけどフェイタン買う?」
「………」
私は無言で、物のようにぺいっと投げすてられた。
「いてっ!おい!!このやろっもっと優しく扱ってよね!!」
当然これも無視された。なんなのまじ。いや、私がふざけすぎてるのが悪いんだけど、でもノリ悪すぎだろてか痛いな許さない。
睨みつける私にフェイタンは謝る素振りも見せなかった。そして、床に落ちたジョジョ立ち団長写真を拾い上げると、
あろうことか楽しそうに笑った。
「ワタシ買わないね、欲しいものは奪い取るよ」
「えっ…それ私の…」
「シャル、これ以外の全種類寄越せ。代金はこいつに払わせるね」
「は!?おい!?!?」
言いたいことだけ言ってスタスタと去っていったフェイタン。
それを唖然として見送る。のち、当然のことながら私は叫んだ。
「っはぁぁぁぁあ!?欲しかったの!?自分で買えよ!!?」
「まぁまぁ、団員同士のマジギレ禁止だよ。明日慰謝料込で合計万190000Jよろしく」
「くたばれ!!」
「あはは、おやすみ。口のききかたには気をつけた方がいいよ」
ぽんっと肩を叩かれ、上機嫌で去っていったシャルの頭にたんこぶが見えたのが唯一の心の救いだった。
被害者は私だけじゃない。いや、気休めにもならないんだけどね?こんなの。
こうして何故かものすごい出費をする事になり、服も伸びてしまった私がとぼとぼと部屋に帰ると、
150枚の写真を広げて満足そうにしている三人がいて、もう溜息を吐くしかなかった。
140101
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