>> クロロ成り代わりif/主人公(クロロ)が♀だったら
「団長、今夜一緒に食事でもどうだい?」

「ひえ」


ある日、私が楽しく優雅に小説を嗜んでいると、突然背後から気持ち悪いねっとりとした声。う、嘘だろ……背後を取られた……!!!
ギギギギ……と音がつくようなぎこちなさで振り返るとやはり────目の前でヒソカがニッコリと笑っている。思ってたより距離が近いことにゾッとしていたら、その間にもヒソカは距離を詰めてきた。思わず身を引いたが、後ろは椅子の背もたれなのでこれ以上下がれない。やめて!


「食事?い、行くわけない」

「つれないなぁ、一度ぐらい良いだろう?」

「一度っていうかそれ人生で最後の晩餐になる気しかしない」

「ボクはそんなにがっつかないよ。確かに一刻も早く団長と戦いたいけど、ご飯はご飯で食べに行きたいんだ」

「何故」

「魅力的なヒトと食事を共にしたいっていうのは、真っ当なことじゃないかい?」

「きもちわるいよお」


真っ当とかヒソカが言ってることがまず気持ち悪い。お引き取り下さい。そう思っていたら、自然な動きで手を取られ、私は固まった。ああ、おしまいだ────そう思った時だ。



「何してるんだよヒソカ」


そんな、私を助けるような声の方を見れば、そこにはフェイタンと、珍しいことにシャルナークが立っている。フェイタンは私が困ってる時よく助けてくれるけど、しゃ、シャルナーク……!?お、お前……!私を助けるなんてことが出来たのか……!!それなら普段からそうしてくれ……!!
ヒソカは、シャルとフェイタンの方に目を向けると、大人しく私の手を離した。それから、とんでもないことを言った。



「おや、王子様の登場か」

「王子!?」


ヒソカの言葉に思わず動揺する。ど、どっちが!?どっちもか!?ヒソカは一体何を言っているんだ。フェイタンが王子なんて国が滅びるし、シャルナークが王子とかへそで茶を沸かす。そう思っていたら、じわじわと面白さがこみ上げてきて、私は思わず吹き出した。すると、その間につかつかと近付いてきたシャルに思い切り頭を押さえつけられた。


「いたっ」

「確かにうちの団長は冷静なふりして実は流されやすいタイプのバカ女なところがあるけど」

「ぶっ殺すぞ」

「そこにつけこもうとしたところで、団員がいるってこと忘れないでよね」


珍しく挑戦的に笑ったシャルナークを見上げる。マジでムカつくことを言っていたのでこのあと私とシャルの戦争は不可避だが、元凶のヒソカはやれやれと肩を竦めて去っていった。
ひとまず助かった────そう思い、一度息をつこうとした時。私は、フェイタンがものすごい顔をして怒っているのを見てしまった。な、なんだ、どうした……と見守っていると、フェイタンはどうやらシャルに文句があるらしく、シャルを睨みつけている。新たなる争いが、フェイタンとシャルナークの間で生まれようとしていた────


「……シャルお前、今団長のこと馬鹿女言たか」

「そ、そのこと?そのことなら私が後で「やだなーフェイタン。俺は褒めたんだよ。ちょっと馬鹿なくらいが可愛いっていうでしょ」

「団長が馬鹿だたこと一度もないね……流される様な間抜けもしないよ」

「まぁまぁ。……フェイタンが知らないだけで、クロロって案外馬鹿なのは事実だよ」

「お前が団長の何を知てるか……?」

「うおおおいおいもうバカでもなんでもいいからここで暴れるのだけはやめてくれよ」


私がそういうと、フェイタンは私の方を見た。私も流れでフェイタンを見ると、目が合って、すぐにぱっとそらされる。それからフェイタンは、小さな声で言った。


「……私は団長のこと馬鹿だと思てないよ。そして、馬鹿が可愛いとも思わない」

「……あ、うん」

「…………」


フェイタンはなぜか私の方を微妙な顔して見た。こいつ言ってることわかってるのか。わかってないだろうな。はあ。みたいな顔だ。なになに。なんでそんな顔するのかがわかんないよ。
そう思っていたら、それ以上はなんにも言わずに、フェイタンも去っていった。煮え切らないがこういうとき追求するとフェイタンは私にも軽くキレてくるのでやめておく。

そうして、結局残ったのはシャルナークである。なんかムカつくことを言われた気がするが、もうなんか怒る気も失せて、小説を手に再び椅子に座った。無視しよう。そしたらいなくなるだろう。
そう思っていたのに、シャルナークはあろう事か小説を読もうとしている私の頬をぷす、と指でつついてくる。やめろ。不快だ。そう目で訴えてもやめるどころかドリルみたいにグリグリされたのでやむを得んと思いひっぱたこうとしたら離れた。腹立つな〜自分が被害被らないギリギリの所までやるのめちゃくちゃ腹立つ。せっかく怒る気も失せていたのになんだというのだ。


「なに」

「いや。あれじゃお馬鹿な団長にはただの事実にしか聞こえないのにねって思ってた」

「これ以上バカにすると、私はお前を殴る」

「こわいなぁ、わかったよ。降参」

「降参ついでに向こう行って」

「やだ」


そうしてニコニコ笑って私の近くに座り込み、時たま私の髪をいじったりしてちょっかいをかけてくるシャルナークは、昔から物好きの変わり者で、何考えてるのかまったくわからないのである。ほんと、へんなやつ。


171227
補足
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