7.Love is more afraid of change than destruction.

まただ。また、リヴァイが魘されている。
私はムクリと起き上がって、苦悶の表情を浮かべ唸っているリヴァイを見下ろした。
そして一瞬、ほんの一瞬だけ、『ああ、嫌だな』と思う。リヴァイが例のせんねんまえの話をするようになってから、ほんとはずっと考えていた。
一千年前の話は嫌いだ。それが、リヴァイの妄想であったなら私も楽しんで聞くことが出来るのだけれど、私は小馬鹿にしながらも心のどこかでいつも不安だった。もしも、本当だったとしたら──そんなのは、考えたくもないことである。
私はこのリヴァイという男に比べて、何十倍も楽観的な人間だと自負しているが、しかしそんな私でも、不安になることはあるのだ。
こんな気持ちじゃあ二度寝しても私まで悪夢を見てしまうかもしれない。勘弁してほしい。嫌だな。そう思いながらも、仕方が無いので、私は手を伸ばしリヴァイの肩に手を置いた。



「おーい、りばい」



私がそう言って揺すると、リヴァイはまた僅かに呻いたあと、くそ、くそ、と暴言を吐いた。リヴァイってクソって言葉ほんとすきだなあ。たぶんもうリヴァイの中でクソという言葉は座右の銘くらいの扱いなんじゃないかと思うし、絶対にリヴァイが人生で一番使った言葉だと思う。まぁそれはいい。とにかく、いくら私が嫌だとしても、関わりたくないとしても、苦しそうに呻いている彼を、一刻も早く悪夢から救い出してあげなければならない。それが、隣で眠る私の勤めだ。



「りばーい」

「……っ、ぐ」

「りばい……りばいってば。ねえ、……リヴァイ!」



一向に起きないリヴァイの肩を掴んで、夜だということも気にせず強く呼びかけたら、ようやくリヴァイははっと目を開けた。額にうかんだ汗が、その拍子にリヴァイの目尻をつたって落ちてゆく。虚ろな瞳が、ゆらゆらと、不安そうに揺れていた。それはかなしいほどに、うつくしくて。ああ、もう────本当に、仕方の無い人だ。リヴァイはの心はどうしても、この時代にいられないらしい。やっぱり今夜も、いまよりもずっと昔に行っていたのだろう。
私は、リヴァイの頬を伝った汗を掬いとって、ひどい顔をしている彼に笑いかけた。



「また、一千年前に行っていたの?」



笑いながら私がそう言うと、リヴァイは私をその瞳に映して、それから、らしくなく泣きだしそうな顔をした。まるで救われたかのような、そんなかお。ああ、胸が痛い。苦しい。
だって、ほら。リヴァイの目は、まるで私と何かを重ねているかのようなのだ。それはきっと、一千年前の“私”で。

リヴァイは、今いる私を、少しでも見てくれているだろうか。私はいつだって、それが不安でしかたがなかった。どうあがいたって私に一千年前の記憶はない。もしも1000年前の記憶を持った、私にそっくりの人間が突然現れて、リヴァイに『わたしがなまえだ』って言ったら────リヴァイは、どうするのだろう。

そんな考えを振り払うように、私は努めて元気よく、にっこり笑って言った。



「ねえリヴァイ、今日休みでしょ。ドライブ行こうよ」

170107

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