2.The search for truth begins with the doubt of all ‘truths’ in which one has previously believed.

朝、目が覚めて、隣にリヴァイが居るということにひどく驚く瞬間がある。
それが始まったのは、最近のことだ。大体一ヶ月くらい前だっただろうか。その朝、私は隣にいるリヴァイを見て、思わずベッドから転がり落ちてしまうくらいに驚いた。
もう一度言うが、別に少しも驚くべきことではない。彼は私の恋人だし、昨日確かに一緒に布団に入ったのだから、何もおかしい事なんてないのだ。それなのにも関わらず、一瞬『何でここに?』と咄嗟に思ってしまう。
それ以降、そんなのは一度や二度のことではない。寝惚け眼でリヴァイを見て、何度心臓が飛び出しそうになったことか。長い付き合いといえるくらいの時間を重ねた今になって、今更、どうしてか私はそんな心臓に悪い朝を何度も迎えていた。
思えば先日もそうだったし、今日だって私はまるでひとりで眠っていたような気持ちで目を覚まして、リヴァイを見て一瞬固まった。ベッドから転げ落ちなかっただけマシだ。少しずつ、こうして驚くことにも慣れてきてはいるのだと思う。

しかしそもそも、何故こうも毎度驚いてしまうのか。ここまでくると単に私が寝ぼけているだけではないのではないかと考えている。思うに────リヴァイの寝顔が怖すぎるんじゃないかな。だってリヴァイ、寝てる間もずうっと眉間にシワがよってるんだもの。それしか理由が見つからないし、それなら思わず驚いてしまうのも無理もないと言える。りばい君、起きてる時も寝てる時も顔怖いねって今度教えてあげよう。



「……今日も仕事だったか?」

「あ、リヴァイおはよう。違うけどなんか起きちゃった。リヴァイは?」

「今日は休みだ」

「おー、一緒だね。ラッキーじゃん」



いつの間にか起きていたリヴァイは、機嫌よく返事をした私をじっと見て、それから無言で起き上がって洗面所の方に消えた。起きて早々歯でも磨きに行ったのだろう。返事をしてくれないのは些か無愛想だが、寝起きはいつもそんな感じなのでまあ今更気にならない。
寝起きでもきちんと、忘れずにスリッパを履いて歩いていったリヴァイの背を見送りながら、私はなんだか改めて感慨深くなる。いやはや。本当私たちって、よく仲良くなったよな、と。
うん。仲はいいと思う。恋人同士にしては、淡白すぎる気もするけれど。私たちは、半同棲までしているというのに、それにしてはなんとも言えない関係だった。ときめきみたいなものは全くないし、いつもどこかあっさりしている。

正直、いつの間にか知り合って、いつの間にか恋人になっていたような感覚だ。かといって、大切なことを有耶無耶にしたままずるずる付き合っているという訳では無い。確かに私はリヴァイにきちんと『付き合わないか』というような事を言われ、了承した。順番は何も間違っていない。それなのに、めちゃくちゃな順番をたどっているように思えた。そういえば、私は彼とどうやって仲良くなっただろう。

そんな感じで色々といい加減な記憶だが、出会った時のことは鮮明に覚えている。それがまた、私の中で余計に私たちの関係を奇妙にさせる。
ある日の昼下がり、キャンパス内で、リヴァイは私に突然声をかけてきた。


────────
────


「なまえ」

「…え、……ああ!あー…あはは」

「てめぇ…覚えてないのか」

「そういうわけじゃないんですが…いえ…そうですね……何処かで会った?同級生?名前言われたら思い出すかも……」

「いや。俺達は初対面だ」

「は?えっ……こわ!!!」


────
────────


そう……出会った瞬間から、リヴァイは変なやつだった。しみじみと思い出してうんうん頷いていると、歯を磨き身だしなみを整えたリヴァイが戻ってきていた。視線が言っている。お前も早く着替えろ、と。もう少し布団にいたい気もしたが、仕方が無いので布団から出て、スリッパを履きながら私はリヴァイに疑問を投げかけた。



「ねーリヴァイ、私とリヴァイってどうやって仲良くなったんだっけ」

「そんな昔のこといちいち覚えてると思うか」

「いや、でもゆーて4、5年だぞ」



私がそう言うと、リヴァイは黙り込む。それから何故か慎重に、言葉を選ぶようにして、逆に私に聞いてきた。



「……そうじゃなかったら?」



ん?と思ってリヴァイを見る。リヴァイも、こちらを探るような目をして、私をじっと見つめていた。私は、どういう意味だろう、と少し真面目に考える。それからすぐにああ、と理解した。この恋人は、自身の抱えている何かのために偶におかしなことを言い出すのだ。先日の『死にに行くとしたら』がいい例だろう。
また変なのがはじまったぞお、と思いながら、私はいつものように聞き流すことにした。



「いやぁ、あの日が初対面ってりばい言ってたじゃんね」



言ってから、ふと、先日のことを改めて思い出した。『私がこれから死にに行くとしたら』。唐突にそんな話が始まって、後に何やら物騒なことするという宣言をされたが、結局、一番初めにそうしようと思ったのはいつの話なのだろうか?一体いつ、そう思って、実行しなかったのだろうか。



「……りばい」

「なんだ」

「ほんとはいつ、私と出会ったの?」



恐る恐る尋ねたら、りばいはなんてこと無さそうに「せんねんまえ」と真顔で答えた。ぶっ飛びすぎてて最早ギャグだ。思わずにやっとしたらどつかれた。

171019

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