この偽善者が

※捻くれ者のはなし





「ねぇ、なまえはわるくないよ」


何を


「無理して笑わなくてもいいんだよ」


何を馬鹿な


「わたし…ちゃんと知ってるから」


そう言って自信なさげに笑ったあいつを私は心から嫌悪した。
私が過去になにかを失ってるからわざとごまかすようにへらへらしてるとか、いつも何処か冷めてて素っ気ないのは素直になれないだけだからだとか、浮気ばかりでふらふらしてるのはやっぱり過去が原因で人を本気で好きになるのが怖いからとか、あんまりしゃべろうとしないのは過去に裏切られて友達を信じれないひとだからとか、つい酷いことを言ってしまうのは、本当の自分を見られるのがこわいからだとか。

全部違う。おまえは0点だ。追試。
そう、全然なってない。それなのにわかったようにいうな、そんな目で見るな。
どうせなんも知らないくせに仮定だけで話をすすめるな。私の過去はお前のような幸せ者が知ったふうに言えるほど軽くないし、お前の言うような重苦しいものでもない。むしろそんな辛い過去があったならよかった。そしたら私がこんなひねくれ者であることの言い訳にできたのに。
わたしはただのどうしようもないダメ人間だ。ただ流されるように生きてきただけだ。ただ、そうやって流れるように生きているうちに何もかもめんどくさくなっちゃっただけで。
巨人と戦うのも正直もうめんどくさいし、人類全員で死んだらきっと寂しくないとか思っている。そんなクズの癖に構ってほしがりならしいわたしを構ってくれるおまえは好きだけど、そんなふうに同情するお前はだいきらいだ。わたしはクズなのだ。
そんなにヒロイン体質じゃないんだ。


「わたしのこと、全然知らないくせに」

「え……」

「この偽善者」


そういってなきそうなわたしに、わたしをたすけてヒーローになりたい偽善者な彼女はまた、勝手な妄想をふくらませてわたしを理解しようとするのだ。
もともと存在しない私の捻くれの理由を探して、わたしに寄り添おうとするのだ。わたしだって彼女、クリスタ・レンズの事を何一つ理解していないけれど、私は彼女がだいきらいだった。だって、すごく、輝かしくて、やさしくて、ほら、

そのせいで私がまた自分を情けなく思い泣くことを、彼女は知らないんだ。


あとあいつが近くに来るとユミルって女がこわいからいやだ。私はクリスタがだいきらいだ。


130807

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