平古場凛が眩しい

中間テストでほんの少しだけ早帰りの今日が、私は億劫で仕方なかった。
午後2時。ふと視線を左にやると、窓の外の太陽は一番厳しい光と熱を発している。────出ていきたくない。こんな一番暑い時間に。しかし、早く帰りたいのは確かだった。(いっそ、10時くらいに帰してくれればいいのになぁ。)
帰りの支度もとっくに済んであとは帰るだけの私だが、皆が楽しそうに「帰りにどこどこに寄るさー」とか言いながら出ていっても、未だ立ち上がれずにいる。沖縄育ちの皆は、暑いなんていちいち言っていられないのか、それともこんなの慣れているのか、とにかく元気だった。私にはそれが羨ましい。
そうしてどんどん人が減っていく中、座ったままの私を他所にとうとう私の隣の席のその人も立ち上がって、ぐ、と大きく伸びをした。その金色に太陽の光が反射してきらりと輝くもんだから、私は思わずう、と目を細める。
ふと平古場くんと目が合って、彼は不思議そうに首をかしげた。それを見て、私はいっそう目を細めたのだった。


「……平古場くん」

「あい?」

「眩しい」

「ぬーがよ?」

「平古場くんが」

「……わんがか?」

「そ」

「……へえ」


平古場くんは何か思うところがあるような、含むような返事をしたあと、私をじっと見つめている。眩しいのでとっくに目を逸らしていたが、視線だけはビシバシと感じた。
喧嘩を売ったのは私だけれど、これ以上続ける気もなかった。八つ当たりじみているが、普段から思っていたことを言えた私は、多少満足してふうと息をつく。さて、いい加減帰るか。そう決心がついて、鞄に手をかけた時だ。ぐい、と上から頭を押さえつけられて、私はぎょっとした。
怒ったの?そう思ってそろりと彼を見上げれば、どうやらそうではなく────何を思ったのか平古場くんは、私の頭をぽんぽん撫でているのである。そして、なにやら訳の分からないことを言った。


「みょうじはじゅんに、でーじかなさんやっさー」

「……?」

「やしが、わんのことずっと見とけよー」


そう言って、片手をあげて満足げに去っていった平古場くん。……なにか勘違いしてるのではなかろうか。だって私は、文句を言ったのだ。彼の金髪が眩しくて、彼が近くに来るたびに目がチカチカすると。なのに何故あんなにもご機嫌なのだ。あんなにも足取り軽く、鼻歌まで歌って。
ポジティブバカが。と内心で罵りながらも、私は平古場くんの後ろ姿、眩しい金髪を目を細めながら見つめていた。いつのまにか、教室に残ってるのは私だけになっていた。

171227

[ 2/16 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -