ケチャップライスがとまらない

フリッピーがまたあの凶暴な性格に覚醒してしまった。私が悪い。私のせいだ。私が彼をオムライスパーティーに招いたのがいけなかった。
そして、ケチャップがあることを知っていながら私の手伝いをしようとキッチンにやってきた優しいフリッピーもいけなかった。
おかげでやさしいいい子のフリッピーとは大違いの気違いフリッピーは、目をギラギラさせてもう私を殺す気満々といったご様子で包丁を構えている。
誰が見てもわかることだが、私はこれから殺されるんだ。
恐怖はない。この街で、死なんてものは生活の一部であるし、この気違いフリッピーに殺されかけるのも実は初めてじゃない。もう両手で数え切れないほど経験済だ。ご近所はつらいよ。
まぁ要約すると、こんなの慣れっこなのだ。だから
私は慣れた様子でフリッピーに微笑みかけた。



「私を殺していいよ。だけどね、お願いがあるの」

「あ?」

「私、ひとりで死ぬのは怖いから、みんなの死体を見届けてから死にたいなぁって。付き合い長いんだからこれくらいの願い叶えて欲しいなぁ。」



ウルセーんなの関係ねぇ殺す、って刺しにかかってきても可笑しくなかった。というか、それが普通だと思う。だけど私がそういうと、フリッピーは鼻で笑った。そうして、結局頷いた。



「くだらねー、逃げんじゃねぇぞ?お望み通り皆殺ってきてやっからよ」



そんなことを言いながら願いを普通にききいれて行ってしまったフリッピーを見送りながら、私はいつものように呆れた。
いつもの事だった。いつもそうだった。いつだってフリッピーは普通を裏切って、私の願いを鼻で笑った後、頷いて元気よく出ていってしまう。毎回そうだ。飽きるほど同じ展開。
はじめにお願いした時は、勿論ダメもとだった。あんな状態のフリッピーに理性なんてないと思ってたから。会話が可能だと気づいた時は驚いたけど、代わりに馬鹿であると気づいたときは可哀想になった。残念なヤツって。
そう、フリッピーは馬鹿だ。どうせみんな殺すからいいと思ってんのかな。殺す順番は大事だと思うけどな。
そう、殺す順番は大事。だから本来被害者になるはずの私に決める権利はないし、フリッピーに私の願いを聞き入れる義務もない。私に決める権利を与えてはいけなかった。いつもそう思う。
もっと考えなきゃね、フリッピー。って。

キッチンの外からは悲鳴と、ガタガタと大きな物音。まるで合唱のようだと思いながらキッチンを出て、カドルスの内臓を引きずり出しているフリッピーに近づく。フリッピーは振り向こうとした。
────でも可哀想に。振り向けなかったのだ。


ブシャアアなんて噴水みたいな音を立てて血が吹き出す。私が振り下ろした斧はフリッピーの頭にくい込んで、フリッピーはぱっかんと真ん中で真っ二つになった。
私は、先程まで生きていた人間から出た赤い汁やら脳みそやらをモロに被りながら、まっぷたつなフリッピーを無感動に見つめた。
なんか、メロンみたいだな、と思った。



「あばよ、フリッピー。また明日。」



死ぬのは私じゃないお前だ。私からオムライスを奪おうったってそうはいかない。
私は凶器をそのへんに放ると、キッチンに戻った。そして予定どおりオムライスを8人分作って、日付が変わる前に全て平らげた。

ごちそうさまでした、おいしかったです。




14/5/22

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