めでめでめでたい
(※5期鬼太郎)
ある日の昼下がり、妖怪長屋の前でひなたぼっこをしてくつろいでいると、前をかわうそがちょこちょこと横切った。特に用事があるという様子でもなく、ぼーっと空を眺めている。
「かわうそかわうそ」
ので、私はかわうそに声をかけて自分の膝をぽんぽんと叩き、膝に座るように諭した。
かわうそはそんな私を見て変な顔というか、何だこいつというような顔をしたが、それでもちゃんと座ってくれた。ああなんて可愛いの。
ぎゅっとぬいぐるみを抱くようにして抱きしめ、よしよしと頭を撫でる。かわうそは、むーとかうーとか唸りながらもされるがままだ。
やべぇ超可愛い。食べてしまいたい。
癒されながらしばらくそうしていると、おいなまえ、と彼は私を呼んだ。
私はんー?と返事をしながらも手を止めない。よしよししながら顔をうずめると、川と獣のにおいがした。とうぜんか。
「なんか意味あんのかーこれ」
「特にないかなぁ。私が癒されるっていう」
「ふーん」
興味無さげに返事をしたかわうそを更に抱き寄せると若干びくっとなっていたがやっぱりそのままだった。諦めているのか、はたまた彼もこの状態を受け入れてくれているのか。
どちらにせよ私は幸せなのである。
「…あれ、かわうそ?」
「……ぐー」
気がつけばかわうそは寝ていた。本当に何処でも寝れるんだな。私はそんな暢気なかわうその頭をもう一度撫でて、目を閉じた。
私の絶望も彼の絶望も、こうしていると過去のどこにも見当たらないように思える。
とじこめられて、とじこもって、世界が終わればいいといった私を鬼太郎たちが救いあげてくれたように、私も彼の安心できる居場所になれていれば良い。私達はもう二度と、君を一人にはしないよ。
だからどうか、いつも笑っててなんて言わないけれど、いつも幸せであってくれ。
めいいっぱいの愛情をあげる130223
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