「ルッチ、ちょっと手伝ってよ」



私がそう言ってルッチに近づき、勝手にルッチの右手を拝借しようと手を伸ばせば、まさかのバンザイをされて避けられてしまった。
万歳をしたまま私を見下ろしドヤ顔をするルッチに私はしばらく唖然としたが、彼の相手をバカにしてるとも言える態度に次第にムカムカしてきて、私は憤慨した。



「手伝ってよ!!私今猫の手も借りたいんだ。ほら出せよネコネコの手。ほれ来い、それ来い」



掌を上にしてぐいぐいルッチに押し付けると、今度はいつものように私をものすごい馬鹿を見たときの気の毒そうな目で見下ろしてくる。
さらにムカついたし、もうムカつきを通り越して、どうしていつもそんなに態度がでかいのかと呆れて注意してやりたかったが、そんな事をしても態度を改めてくれるわけがないし手を貸してくれなくなる可能性の方が高いので我慢だ。私は今、まさに猫の手も借りたいのだ。
しかし中々貸してくれないので、更にぐいぐいしていると、ルッチは無言で私の手にグーにした手をお手のように乗せてきた。



「………」ぽむっ

「おっ」



やったー貸してくれるのかと喜んで思わず笑顔になった瞬間。
ルッチの手が突然ケモノ化し、ガリガリガリッと爪を立てて私の手のひらを抉りだしたのだ。私は悲鳴を上げた。



「まじかよ!まじで猫の手を出すとは思ってなかった!爪くらいしまえよ!右手持ってかれるよ!まぁいいや借りるね!」

「!!」



私の手の中はまさにブラッドフェスティバルだが、これはチャンス。私はルッチの手をそのまま無理やり引っつかみ歩き出した。祭りに興じる暇は私にはないのだ。
私の真剣さが伝わったのだろうか。血が滲み、ぐじゅりと嫌な音がした時にはルッチの手はもう人の形をしていた。まったく、おちゃめにも程があるよ。最初から悪ふざけやめろよな。
ルッチはめちゃくちゃ面倒くさそうな顔をして私を睨んでいるが、まぁそこはもうどうでもいいことだ。気にしたら負けなので、いつも無視をすることにしている。



「あんねー私今部屋の模様替えしててねー例のアレが届いたから私の部屋に運んでほしいんだよ」

「なんだそれは」

「ふっふっふ…聞いて驚け、高級マッサージチェアさ!これでタダで気持ちのいいマッサージが可能に!多分ルッチなら指1本で運べるからかかるのはちょっとした手間だけ。はいはいっがんばっていこー!」

「人にものを頼む態度を考えろバカヤロウ」



ルッチは拳をかかげた私を見て心底ウザそうにしているが、それでもついてきてくれるのだからこれはただのツンデレに違いない。私は気分がよくなって、ぶんぶんっとルッチの手ごと振り回して歩く。すごく血が飛ぶ。なんだか楽しかった。向こうから歩いてきたジャブラがひどく迷惑そうに避けていたのでさえ面白かったので、わざとジャブラの方に飛ばしておいた。くらえ、私の超優秀なDNA。

170504
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