解けないゴカイ
ウボォーさんを見送ったあと、アジトに帰ろうとしたら道に迷った。
だって目印なにもないのだ。荒野がひたすら続いていて、今何処に向かってるかもわからない。
もうこのまま帰らないっていうのもありかな、と思ってきたところでシャルから連絡が入る。思わず舌打ちした。
ピッ
「なんだ」
『団長、今何してるの?何で勝手に出歩いてるんだよ、しかも遅いし』
電話に出た瞬間に、苛々を隠そうともしないしゃべり方でシャルが責めてきた。
怖い。何だこいつは。私の恋人か、親か。どっちも違うだろうが。
「シャル、お前はいつから俺の保護者になった?」
『なった覚えないけど』
「…なら別に問題ないだろ」
『指令出す人いないと、俺達だって困るんだ』
よく言うよ!指令はお前が出してるだろ!
怒りでケータイを壊しそうになるのを抑え、用件はそれだけかと問うと、
少し間があいて、静かな声でシャルは言った。
『ウボォーが拐われて、そのまま帰ってこない』
「………」
『神経毒で身体の自由が奪われてるし、それは回復したとしても…蛭が体内に入ったままなんだ』
…まぁ、帰ってこないだろうな。さっき行っちゃったからね。
ていうか待て、蛭が体内に入るって一体どういう状況だよ、こわっ。何があった。
『行き先も掴めなくて…』
「ほう?お前がか」
『………まぁね』
悔しがってる悔しがってる。あははざまぁ。
笑いを堪えているとシャルが途方に暮れたような若干弱い声で言った。
『ねぇどうしよう、もしかしたら…』
「いや、ウボォーは大丈夫だ。既に脱出して鎖野郎のところへ復讐を…」
込み上げる笑いを完全に抑え込み、真面目な声で返事を返す。
ここまで完璧に感情隠して話せる私凄くないか。会話に一切の不自然さがないぞ。
そんな感じで自画自賛していたらシャルがまた不機嫌そうに言った。
『何で団長そう言い切れるんだよ』
いや、さっき会ったからね。
話せば長くなりそうで電話代が勿体ないので、私はとりあえずアジトに帰ってから話そうと思った。
「とりあえずすぐ戻る。みんな居るのか」
『うん…みんな困ってるんだ、早く戻ってきてよ』
本当に困ったような声でシャルは言うので、
珍しく思いながら私はアジトに急いだ。
***
「ただい「遅いよ団長!!」……すまない」
更に荒野をさ迷いつつ、やっとの事で帰ると真っ先にシャルに叱られた。
マジでこいつ私の親みたい。いや、逆に子供か?嫌だなこんな子供可愛くない。
それか恋人か?束縛激しすぎてそれも嫌だなぁ……
私の中でそんな嫌な妄想が膨らんでいくのを阻止するように、シャルは言う。
「さっき言った通りウボォーが帰って来ないんだよ。で、何で団長ウボォーが脱出したって言えるのさ」
「ああ、ウボォーは俺が脱出させた」
「ええ!?そうなの!?それで、何処に」
「ああ…鎖野郎とやらとケリをつけてくると息まいて、止めようもな「えっなにそれ!いつ頃だよ!」
「……今日は何日だ」
「9月2日の夜10時」
「……」
もうすぐド○えもんの誕生日だ。
ていうか私が出て行ったの1日の夜10時だよ!?丸1日さ迷ってたのか!
ウボォーさんが行っちゃったのは日付が変わった頃、だから。
「昨日の深夜だな」
「…もうすぐ丸1日たつぜ、復讐にしてもちょっと遅くねぇか」
団員の間に妙な緊張が走る。
いや…でもさっき考えたのだが、シャルですら拐った奴等のことを探しだせないのに、ハンターライセンスのないウボォーさんがたどり着けるわけなくないか?
つまり私の考えはこうだ。ウボォーさんはまだ鎖野郎のところにたどり着いていない。そして、シャルに教えられた通りビールもちゃんと飲んでいて、無事である。どうだ、完璧な理論だろう。
なんて考えていたら誰か…十中八九ノブナガだが…が言った。
「その鎖野郎とやら探し出してブッツブソウゼ!!」
「えっいや、ウボォーさんは、」
「くそ、俺達が追い付いてれば…!」
「それを言ったら俺が復讐に着いていけばよかったという話になるが…それはともかくだな、」
「ぶっ潰すもなにもまだ死んだかわかんないだろ?夜明けまで待とうよ」
「そう!それだよマチ!!」
「もう少し待っても帰って来なかったら予定変更…かしら?」
「うん、そうそう!!」
「あいつが遅れるなんて、考えにくいもんな」
「よし、じゃあ「じゃあ夜明けまでまって、それでも帰ってこなかったら予定変更だね」
何仕切ってんだてめぇ!結局私の話聞いてるやついなくない!?
……もう、勝手にしろ!!!
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