クロロ成り代わり | ナノ
被害者は誘拐犯

以前誰かからスキルハンターで拝借した能力を駆使して、何とかウボォーさんの元(荒地)に辿り着いた私は、とんでもないものを見てしまった。

えっ…何かウボォーさん車に詰め込まれてるんだけど。そのままドアが閉まり、その車は凄いスピードで走りだした。
明らかにスピード違反だ。通報したほうが…って私犯罪者じゃん。ちょっと混乱してきた。
そうして私は、呆然と走り去った車を見送った。そして見えなくなった所で、ようやく事態を把握した。
………えーと、



「誘…拐……?」



っえええウボォーさんが誘拐されるって、ええええキャラじゃなくない!?誰だよそんな事するやつ!
ていうか拐うなら別の人にするべき……いやうちにそんな可愛いのいないわ。女性陣とコルトピは私的にはおいしいけど。
他はいろいろと駄目だ。誘拐なんてキャラじゃない。ちょっと笑えるんですけどぶはは。

で、今そんな笑える出来事が進行形で起こっているわけだが。



「………やばくないか」



実際は全然笑えないんだけど。これはやばいぞ…ウボォーさんより相手方の方が心配だよ。
ウボォーさんが心配じゃない訳じゃないけど、確実に怪我するのはウボォーさんじゃない方だ。
ウボォーさんを誘拐して無傷で済む筈ないしあの人負けず嫌いだから大暴れするだろうし…………うわああやばい!!

私は走り出した。今からなら間に合うかもしれない。兎に角あんまりあの人が屈辱を味わわされる前に取り返さなきゃ私の手に負えなくなる。
ていうか他の奴等はどうしたんだよ。何で皆で出て行ったのに誰一人として追って来ないわけ!?
私だってウボォーさんの強さは信用してるよ、ウボォーさんはきっと死なないだろうとも信じてる。
違うよ、ウボォーさんが死ななくても周りは死ぬんだよ!!そして私だよ苦労するのは!!
ねぇ皆わかる!?ねぇ!!

車が見えてきた。車の方も私の姿を確認したのか更に速度をあげた。こうなったら意地でも逃がさん。
私はすかさずスキルハンターを出す。こんな時に必要なページは、本が選んでくれるはずだ。こんな時は、運任せが一番。
パラパラと風に吹かれたように勝手に開いたページを手で抑え、ろくに確認もせずに、とにかくと私は技を発動させた。



「そぉいっ!!」



イラストで描かれているとおり、車に向けて右手を伸ばす。すると私の手が光り、車も光を帯びた。そして……



ドォーーン!!!



車が派手な音をたてて目の前で爆発した。……えっ



「えええ……!?」



ちょっ、何だよこの能力危なっ…誰のだ!!なんでこんなページ開いたんだよ!!風のバカ!!
やばい、これこそ最悪の事態だ。まさに火に油を注いだ感じだよ。
どっ…どうしよう…。とりあえずつい先程まで車だったものに近づく。
そこには数人の人が倒れていた。気を失っているようだが目立った外傷はない。
その事から察するに私が使った能力は、どうやら殺傷能力自体はかなり低いらしい。
これならウボォーさんも無傷だろう。意識もきっとあるはずだ。ああ嫌な汗かいた……
ほっとため息をつきながらウボォーさんの方に目を向ける。其処にはこれまたびっくりする光景が広がっていた。
…あれ、ウボォーさん何か傷だらけなんだが。更に近づいて見ると意識もないようだった。
冷や汗が垂れる。やばい、私仲間吹っ飛ば………吹っ飛ばした…!

私以外に意識のある人はいないのに何だか妙に気まずくなって、私はウボォーさんの腕を肩に回し立ち上がると、
辺りをもう一度見渡した。その酷い有り様に自分の口から乾いた笑い声がもれる。



「えーと、何て言うか…悪かったな」



周りに転がった、誘拐犯であり被害者である皆様にそう一言謝罪すると、
私はウボォーさんを引きずってそそくさと退散するのであった。



(やばいやりすぎた)

130114

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