クロロ成り代わり | ナノ
オークションだよ全員集合!

ええと…何か結局団員大集合しちゃったんだけど…ちょっとそろそろ発狂したくなってくる。
しないけど。私は一応前世でも現世でも冷静沈着って言われてきたのだ。実際全然違うとしても、そう見られてきた。自らイメージを壊す勇気はない。
心の中ではすごい怯えたり怒ったりしてるし、緊急事態とか起きたらまっさきに大騒ぎするのは私だが、それでも冷静沈着って、勘違いも行き過ぎていて怖い。私のポーカーフェイスが完璧すぎってことだろう。罪深い。

本当に冷静沈着だったらなら多分、今までももう少しこの人達を静める事が出来たと思う。上手い具合に丸め込めたはずだ。
それが私にはできない。団長失格だ。失望されるのは怖いが、いっそうっかりダメな奴だってバレて、団長の座から降ろされるのも仕方ない。それくらいに私には向いてないよ。

心の中でそう言ってみて、実際の私がかなりの無能であることに気付きへこんでいると、
ウボォーさんが待ちくたびれたと言わんばかりの表情で、必要以上の大声で言った。



「団長、今回は何を盗むんだぁ?早く命じてくれ!」



いや勘弁してくれ。シャルが勝手に集合かけちゃったみたいだけど私は何も命じることなんてない。
今の私の頭の中はオークションで…そう、オークションでいっぱいなのだ。



「いや、俺はオークションにだな、」

「えっオークションってまさか、ヨークシンの地下競売のこと?」

「………そうだ」

「まさか、全部盗るの?」

「いや……」



言いかけたところで、ここぞとばかりにシャルが私の妨害をしてくる。さっき言ったじゃん白々しい…!
そして、私がシャルを黙らせようと睨みをきかせているその間にも早速ウボォーさんははしゃぎ出す。いや、ちょっと、誤解だよ。
私は純粋に競売を楽しもうとしてるんだよ。強奪なんてもっての他だ。
そんな事したら私暗殺者とかに殺されちゃうから。シャル貴様…あ、笑いやがった!!てめぇぇえ



「皆…というより一部、人の話は最後まで静かに聞「命じてくれ団長、今すぐ!!!」



いやだから…と言いかけてふと、オークションの事を正直に話した場合の結末を考えた。
ウボォーさんは勿論、他の皆も若干テンション上がってるこの状況で「競売には真面目に参加するから皆帰っていいよバイバイ!」と言った場合…


\\ザ・フルボッコ!//


これは恐らくシャルの名前を出しても聞いてもらえないだろう。
フルボッコは大袈裟だとしても、数人がブチ切れる事は確実。そうなればもう何かしらの被害を私が被るのは絶対避けられない。あと厄介なのはその後拗ねたりして面倒な事になることだ。

というかまず、私がバイバイって言ったところでみんないうこと聞いたりしないんだよな。こうなったら止まらないのだ。
たとえ私が言ったところで、聞いてもらえたところで、こっそり行ったりするに決まってる。どのみちオークションはめちゃくちゃだ。今年のオークションはどうやら諦めるしかないらしい。
カタログ買っちゃったのに…もう泣きそう。だけど、腹をくくるしかない。私は責任者だ。

盗賊は、何度も言うが元一般人の私には中々キツい仕事である。殺しなんてもってのほか。だから今まで暴れたくて仕方が無いみんなに何度も声をかけ、私なりに必死で殺戮を減らしてきた。でも、流石に今回は避けられないだろう。相手は世界中のヤクザ。やらなきゃやられる。
殺しは怖い。私の様な甘い世界の人間には、絶対に慣れない行為だ。



「俺が許す、殺せ」



しかし私は、今世になって知ったのだがどうやら「人を殺すくらいなら自分が死んだ方がマシ」と言える聖人君子的人間ではなかったらしいのだ。
殺さなきゃこっちが死ぬのなら、最悪の場合そうするしかないし、怖いけれど、仕方ないと思っている。みんなにもそうしてほしいし、他の誰かを殺してでも、絶対誰一人として死なないでほしい。



「その代わり死ぬな」



私は自分や身内の為に他を犠牲にするような最低クソ野郎だった。前世の時は自分がこんな奴だなんて考えもしなかった。平和だったから。
でも、こんな最低の奴だったからこそ私は今ここに立って、生きていられるのだから、世の中どうかしている。真っ当に生きるには今回の私の世界は少し危険すぎた。
そんな言い訳をしながら生きている自分に襲いかかるのは、やはり捨てきれない前世から持ってきてしまった罪悪感や価値観。それらのせいでそろそろ精神的な病にかかりそうだ。
私は結局、他の団員と違って殺した人の顔を忘れる事ができないから。

もしも前世の記憶とかなくてただのクロロであったのなら、みんなと一緒で忘れることができたのだろうか。
そんなことを考える時点で私は相当腐っている。笑えない。ああ生きるのって辛い。この一般的な価値観いい加減捨てないとやってけないな。

それにしてもこいつらホント人の話聞かないな。
私今若干蜘蛛のルールに反すること言ったけど誰も何も言ってこないよ。
まぁ生かすべきは蜘蛛なんて私言ったことないけどね。誰だそんな事言い出したとんまは。そもそも全員揃って一匹なんだから誰一人欠けちゃ駄目じゃん。そんなにホイホイ手足変えたらどう考えても破滅を招く。
しかしほんとに、改めて言うけど本当に聞いてくれない。聞いたところで従わないだろうけれどそもそも聞いてくれない。私本当に団長か?団長なのか私は。
いつもは私がなるべくやる様にしてるけど多分今回この後指示出すのはほぼシャルだし私もうただの象徴みたい。シャルが実権握ってる気がする。これが旅団政治の現実か……っ

嫌な世の中である。


130104

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