堕ちた先から見た景色は
………
「……あ、雨」
誰かが呟くようにそう言って、みんなは空を見上げた。
ぽつりぽつりと降ってきていた雨を発見し、ほんとだな、と返そうとした途端
バケツをひっくり返したようなどしゃぶりに変わって、思わずわっと声をあげる。
「うわっ結構降ってきた!」
「やっかいだね」
「風邪ひいても困るしさっさと済ませて帰ろうよ」
「そうだな」
これから盗みに入る美術館の裏。
みんなは鬱陶しそうに空を見上げて、張り付く髪を払い除けてたりしていた。
そんな不機嫌そうにしなくても、みんな水も滴るいい女と男だよ!それに雨は緑にやさしいし草木が育つのでうんたらかんたら。
「あ…雨もいいじゃないk
「雨って、あんまり綺麗じゃないらしいよ」
シャルがぽつりと、つぶやくように言った。
何の感情も込められていないような、そんな声色だった。
「そりゃあね。空気が汚いんだから」
「うん」
シャルは苦笑いして、そのあとに
懐かしむような顔をしてまた空を見上げた。
「雨…子供の頃は降ったら嬉しかったもんだけどね」
そう言われて何となく思い出したのは
雨の中競争して、私が負けて散々な目にあったということと、妙にきらきらした何かだった。何だっただろう。
やな記憶でかすぎて思い出せないんだけど……最悪…!!
あれ、というか、
みんないつから雨ではしゃがなくなったんだっけ。
【墜ちた先の景色】
知らないといけない常識を知って私達は大人になった。
知らない方がいいことを知って、私達は子供じゃなくなった。
今が嫌なわけじゃないけど、ずっと子供でいられたら、大変でも、ただ楽しかったかもしれない。
そんな妄想にふけりながら今日もクロロは元気に盗みを働くのであった。
(そういえばあの日勝ったのはシャルだった畜生)
130911
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