クロロ成り代わり | ナノ
ニートの楽しみ

眩しい太陽をうけて、汚染された空気を吸い込んで、運命を動かす一言を放ったいつかの夢を久しぶりに見た。
ある日目が覚めたら身体が縮んでいて、親と思わしき人物にゴミに出されるという信じられない信じたくない悲惨な起床から約二十と数年。
クロロ=ルシルフルという男の子として仲間と共にごみ捨て場もとい流星街でたくましく生きてきた私は、あの日、色々あって外界デビューした。……本当に色々あった。
思い出そうとすると涙が出てくるので思い出さないでおくけどね。そんなこんなで今や26歳、精神年齢的には〈ピー〉歳になった私は、

どう道を踏み外したのか現在盗賊団の団長です。

…本当に何があったんだ。いや、思い出しちゃいけない。泣いちゃうから。泣くなんて情けないことしちゃ駄目。もういい年だから、私。

まぁ盗賊とかいっても、私が集合かけなければ
皆個人で好き勝手やるからそんなに問題はないのだ。あんまり指令出さないと文句言う面倒な奴がいるので数年おきには出さなきゃならないけど…
今年はまだ良いだろう。2年くらい前に皆集めて暴れたもんね。

というわけで私は今年も去年と同じく、年に一度のオークションに参加しようと思います。
ヨークシンの地下競売は本当に楽しい。皆ちゃんとマナー守ってるから危なくないし。
まぁちょっと趣味悪いのが出されてるのがあれだけど、それもまた一興。言っておくと、私はオークションなるものが大好きなのだ。
競りの時のスリルとか堪らない。あまり盗賊が言うことじゃないけどねコレ。盗みのほうがスリルあるのは確かだしね。
でもちょっと刺激が強すぎて盗みのスリルは私には向かない。競りはもっと平和だ。私は程よいのが好きだ。
つまり、オークションは良い。ついでに言うとオークションの為にヨークシン近くの廃墟に住み着くくらい好きだ。
廃墟って結構落ち着くんだよ…流星街を出たのに結局廃墟が一番とはなんていうか、皮肉なものだ。前世じゃ有り得なかったなと思う。
まぁそれはさておき、今年は何を競り落とそうか。色々あって悩む。優先順位決めなければ。

そうして昨日買ったカタログをペラペラしていた時だ。幼い頃生き抜いた環境のせいで研ぎ澄まされた私の感覚が、ふいに人の気配を察知した。
ぞわりとする。誰だ。ここ廃墟だぞ。人がいるわけない。お化け?だってここ私の秘密基地だし(基地とか憧れていた)誰かにバレるわけないし…
あたりを見渡してみるが、相手も一応気配を消してるらしく何処にいるかはわからない。
敢えて気配をちらつかせながらも決して場所は悟らせない。その感じがどうもプロっぽい。怖い。しぬ。
警戒する私に、その気配はどんどん近づいてきて……あれ?何か知ってる気配なんだけどこれ。
いや、でも何故、何故あいつがここに……!冷や汗が垂れる。その時。




「団長、久しぶり」

「!?!?」



背後から明らかに知ってる声がしてばっと振り返ると、
笑顔のすてきなシャルナーク君がいた。



「……何でお前が此処に、」

「やだなぁ団長、そろそろ一仕事する時期じゃない?」

「……まだだ。今別件で忙しい」



いやホントになんでこいつ此処に居るんだ。何で私が此処に居ること知ってるんだ。
私一応隠居生活中のつもりだったんですけど?ここ私だけの秘密基地なんですけど??
今回こそ絶対バレない自信あったのに…思い返せばいつもそうだ。コイツは私が何処にいてもこうしてやって来る。
そして、こうしてこいつが現れたということはもう嫌な予感しかない…一仕事する時期?ふざけんなこの野郎私はオークションで忙しいんだぞ。



「忙しいって、どうせオークションだろ?」



そんな私の心中を見透かしたようにシャルは言った。図星つかれて面食らったが、そこまでお見通しならと開き直ってやる。



「ああそうだ。悪いが俺はまだ仕事をするつもりはない」



ていうかもうずっと働きたくない。
盗みとか普通に嫌に決まってる。まぁ…ちょっと前に盗んだお宝を売ったお金を主軸に生活してるからあまり強く主張はできないが…
でも、私は今はニートだがこう見えて少し前まではアルバイトをしていた。そう、実は私はそうしていないだけで社会に適合できるマンなのだ。色々あって1週間でクビになったことを除けば、私はスーパー社会適合マンなのだ。
やっぱり、どうしても盗みは嫌だった。もう、盗まなくてもみんな自力で生きていけるくせにいつまでこんなこと続けるんだ。しかも皆人の命まで盗むし。その上物まで破壊するからね。やめてって言ってるのにね。

団長の言うこときけよ…と1人項垂れていると、シャルがニートみたいな事言わないでよ、と笑った。うるさい。ニートみたいというか、ニートなのだ。放っておいて欲しい。
昔はもうちょっと可愛げがあったのに、目の前でまた何か企んでやがるのであろうこいつは今ではちっとも可愛くない。



「…とにかく俺はオークションに参加する。邪魔するなよ」

「邪魔って酷いな、俺たちは寧ろ団長を手伝いに来たのに」

「……俺たち?」



反復すると、シャルが笑った。そこで気づく。
気配が増えている……だと!?また知ってるオーラだ、これは、絶対…



「…よぉ、団長」

「……フィンクス…」



相変わらず迫力ありますね…!!じゃなくて。
おいおいシャルナーク貴様どういうつもりだよ何でフィンクスまで此処に?
目で訴えるがスルーされる。その間にもどんどん見知った人が集まってきた。
久しぶりだな、とか続々と集まるみんなに声をかけ、私の熱い視線をスルーしてはしゃいでいる男に本気で殺意が沸いた。
私のオークション計画、どうしてくれるんだこの機械オタクめ…!!

130102

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