クロロ成り代わり | ナノ
6

【6】
※シャルが可笑しい




「ごめん、団長。悪かったよ」

「もうお前の事は知らん」

「ええ…」



参ったな、なんて言いつつあんまり困った風でもないシャルを一睨みすると
私は本に意識を戻した。私はもうシャルの事は嫌いになったのだ。
しかし私がそうしてつんとしても、奴はそんな私を見つめながら頬杖をつきにこにこしているだけだった。
やっぱりむかつく奴だ。このままずっと無視してやろう。そう思った矢先、



「クロロってさ、変だよね」



そんなシャルの突然の言葉に思わず顔を上げてしまった。変とは心外だ。
しかも呼び方戻ってるんですけど。…まぁそっちの方が好きだけども。
ていうかホントに変って何だ。お前の方が変だろ。
ムッとしてもう一度シャルを睨む。



「俺のどこが変なんだ」

「うーん…言葉じゃうまく表現できないけど。でも俺達の中で一番変なのはクロロだよ」

「は…」



え…私かなりマトモだと思うんだけど。
皆みたいに殺人中毒者じゃないし…私が一番変?



「だって、俺たちと違うだろ」

「………」



それって、つまり、



「どうしてだろ、みんな一緒に育った筈なのに、クロロだけが決定的に違ってる…クロロは変だよ。蜘蛛としても、流星街出身者としても」



それなのに俺達と一緒にいる所も。
そう続けたシャルに、お前が巻き込んでるんだろと悪態づきたくなった。

でも出来なかった。
シャルは無表情で、いつもより感情がうまく読み取れなかった。



「みんな、少し勘違いしてる」

「……」

「みんな、クロロが強くて、自分達と同じだって思い込んでるんだと思う。だからクロロがいくら泣いても変わらず団長に相応しいと思ってるし、けど」



シャルは言いながらつかつかと音を立てて近づいてきて、
私の顔をずいっと覗きこんだと思ったら



「実際はクロロ、皆が思ってるほど強くないし、団長向いてないよね」



今度はあきれたように笑って、核心をついてきた。
その笑いが勘違いをしている皆に対してなのか弱い私に対してなのかはわからないが
とりあえずこいつが私の本当を知っているということだけはわかった。
私の本当。殺しも盗みも嫌いで、人を従えるなんてこと到底無理なヘタレの一般人。
こいつそれを理解していながら今回の件も進めていやがったのか。
別に、団長やるのがどうしても嫌で死にそうって訳でもないけども。
だって私は結局団長である事を受け入れてたわけだし…
でも、それでもほんとにこいつ私の嫌がる事するの好きだよな…!



「勿論力は強いよ。俺はクロロに敵わない。でもそういうことじゃなくてさ」



私が睨んでもやつはやっぱり話すのをやめない。
私完全に嘗められているな。前からだけど。



「ただ、クロロは本当は殺しとか大嫌いだろ?メンタルもそんなに強くないし。
だからたまに心配になるよ。いつかクロロが自分で自分を殺しちゃうんじゃないかって」

「だったら何でお前、」

「んー……それでも俺が団長に仕事を持ってくるのは、それしか方法がないから、かな」

「は…方法…?何の、」

「あと、」


言いかけて、シャルはにっこり笑った。
その時のシャルの目を見て私は悟った。なめてるっていうか、
こいつ、いかれてやがる。


「俺が、死にそうなクロロも見てみたいからかなぁ」

「っ……」

「そうだ。その時がきても勘違いしてるみんなはきっと気づかないし、俺だけが知ってる」

「お前…」

「それが、うれしいんだと思う。団長が何処にいても俺だけは見つけられるから」



顔がひきつる。
ヒソカといい、私何でこういう奴にばっか目ぇつけられるんだ。
何で皆して私を殺したがったりすんの、何したらこうなるの。私はどんな地雷踏んじゃったんだろう。



「……お前、やっぱり俺の事嫌いだろ」



冷や汗を垂らしながらもなんとか笑ってそういうと
シャルはうんと綺麗に笑った。



「逆だよ」




「大好き」



シャルの言葉の真意は、わからなかった。
それどころか俺はシャル自身がわからない。
それでも、いつかわかる時がくるだろうか。

ただ1つ、今でもわかるのは、
シャルの目はあの日から変わらず
いつだって、綺麗だったこと。

それは私がここに来るよりも前から
ずっと一番好きだった色をしていた。


130531

prev next


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -