クロロ成り代わり | ナノ
4

【4】


「なーんだ!じゃあ団長さんは殺しが好きな訳じゃないんだね!」


私が頷くと、ゴンという名の少年はぱぁっと眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
あの日の射ぬくような目とあまりに違いすぎて逆にびびる。子供怖い……

この前の件でクラピカ、レオリオと仲良くなった私は今、二人の紹介で二人の少年と向かい合っている。そう、あの夜捕獲した二人だ。
ノブナガがウボォーさんに自慢した事によって、再び取っ捕まえよう計画を立てられている、二人だ。
やめたげてほしい。今度こそ大変なことになる。



「俺はゴン、こっちはキルア…って、クラピカに聞いてるか」

「いや、丁寧にありがとう。俺はクロロだ。よ、よろしく…?」

「うん!よろしく、クロロさん!」


えっ、ほっホントに眩しい!何この純粋な笑顔!可愛い!今までこんな子を敵視してたとか勿体ない上に恐ろしすぎる。行動次第では、あの件で旅団が壊滅するのも本当だっただろう。
ああよかった……キルアは未だに警戒を解いていないようだけど、それもむしろ好都合だった。だってこの子、あのイルミの弟だよ!?
あの、ブラコンの、イルミの、弟だよ!?ゾルディック継ぐ子だよ!?
下手に敵対するのも仲良くするのもよくないに決まっている。あいつに殺されるとか嫌だ。
あいつ、私を殺すのなんて造作もないだろうからな………友達だと思ってたのに………
少し前の友達じゃないよ事件に私がへこんでいると、タイミングよく料理が運ばれてきた。クラピカ以外の三人が嬉しそうにする。
そしてそんな三人をみて小さく笑うクラピカ。それをみた私も、小さく笑った。
因みにここはレストラン。そしてこの料理は私の奢りである。盗賊だし、大人だからね……私。
とはいっても、実を言うと旅団の儲けはほとんどシャルが管理してるから周りが思ってるよりは手持ちのお金は少ない。
…………それにしてもなんで、私が何処に行ってもシャルのが名前出るんだ…?可笑しい、あいつ、
すでに私の事情全てに絡んでる…!!



「…ほんとに良いのか、食事代を払ってもらってしまって」



きっと私が怖い顔をしていたからだろう。
複雑そうな顔をするクラピカ。私は慌ててシャルを頭から追い出した。



「大丈夫だ。団長だから」

「…本当か?」

「…いや嘘。団長っていうのは全く関係ない。俺にそんな権限はないです」

「だろうな、知ってる」

「うん…でもとにかく今回は大丈夫。迷惑かけたお詫びとしてでも受け取ってくれ」

「此方が詫びたいくらいなのだが…勘違いで、殴ってしまって」



更に申し訳なさそうにするクラピカ。律儀すぎるのも問題だ。
クラピカは全く悪くない。あの件は全部シャルが悪いって私の中で決まっているのだ。



「じゃあ俺がしたくてやってるから気にしないでくれ。こうして息抜きできるだけで、嬉しい」

「そうか…?」

「ああ、だから、これからもよ、よろしく」



クラピカは笑った。ああ、そうか。
段々、距離感がわかってきた。良いんだな、これで。私がほっと息を吐いて、未だ不思議な気持ちでいると、ゴンがあれ、と声を上げた。



「クロロさん全然食べてないみたいだけど、食べないの?」

「なにっ!?遠慮せずに食えよ、アンタの金なんだしな」

「いや、大丈夫だ。悪いな」



私がそう言った時、じと目のキルアと目が合った。
別の意味でドキドキしていると、ごはんを飲み込んだキルアがぶっきらぼうに言った。



「あのさ、素でいいよ。それ、ぎこちなくて変」

「え」

「あっ俺もそう思った!クロロさん、この前の夜と話し方全然違うよね」



すごく痛いところを突かれた。
こ、この前の夜って……あああああこの前の私の本性覚えてたのか!!
イルミにはかなり不評だった私の本性。あんなの子供に覚えられてるとか死ねる。



「いやっ…そ、それは忘れてほしい…かな」



恥ずかしすぎて腕で顔を隠しながらそう言った。ああ…黒歴史を掘り起こされた気分……。
昔、技名を考えたノートをシャルに見られた時と同じような感覚に囚われていると
レオリオに肩をぽんっと叩かれた。



「アンタの楽な態度でいいんだよ。俺達は誰も笑ったりしねぇから」



その言葉に、顔を隠していた腕をそっと退ける。
三人は、そんな私を安心させるような眼差しで見ていた。
ああ、良いんだ。この人達なら。



「…うん、ありがとう。私、みんなの前では自分らしくしてみる。それで、
いつか自分を偽らなくても大丈夫なようにす………」



その時私は視界の端に見てしまった。
必死で笑いを堪えている、キルア少年を………

私は目の前にあったパイを、無言でキルアに投げつけた。



「ぶっ!!」

「笑うな似た者兄弟!」



何はともあれ、仲良くはなれそうである。

130512

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