クロロ成り代わり | ナノ
悲劇的で喜劇的

うん、昔からあいつら、誰も団長の言う事に耳を傾けてくれなかったな。
あの日の事もそうだが、前の仕事の時もその前の仕事の時も私が程よい優しい指令を出したのにも関わらず、皆突然何か勘違いしてうおおおってなって、結局大暴れして最終的に私の指令総無視だもんね、いっっつもそうだよね。
シャルに至っては私に変わって裏の代表になってるから。あいつはさすがに、本当に可笑しい。

今回の件も、シャルは裏で色々とやっていたようだし、ウボォーさんは勝手にどっか行っちゃうし、皆暴走するし、とにかくあいつらマジ勝手で言う事聞かないし言い出したらきかないし、
一応団体行動してんだよ!?おまえらでリーダー決めたんだよ!?そいつの話ちょっとくらい聞けよ!!
そういえば前世でテレビで見た競技の団体行動は今でも覚えている。ものすごく綺麗に列なして、あれは本当にすごかった……

ああもうまた泣けてきた。私、ダメな奴、クズだ。
やっぱり、こんな私ではみんなと一緒になんて無理なんだろう。こんな情けない私では、みんな着いてきてくれないし、みんなについていけない。シャルは、それをどうしてわかってくれないんだ。利用するにも、もうその価値すらないはずだけれど。

鎖野郎ですらも謝っても聞いてくれないし、それでフルボッコにされるし…ちょっとコーヒーブレイクって言っただけじゃない。
こうして振り返ると私にはカリスマ性がびた一文もないことに気づく。やっぱりヒソカは嘘つきだ。特質はカリスマ性があるんじゃないのかよ。

死んだ方が良いかなって、 何度思った事か。だってあいつら、私の事、心の底では絶対必要としていない。



「…俺に人質としての価値などない」

「これ以上下らん戯言を……!?なっ、お前、泣いて…「泣いてない」え、いや、しかし…」



この鎖野郎にもせっかく捕らえてもらったところ申し訳ないが、本当に私にはその価値がないと思う。
今もあいつらは、きっと私を生かさない方向で話を進めているんだ、そうに決まってる。薄情者どもめ……!!
知らないうちに決まっていた、私には少し気に食わない蜘蛛のルール的にもそうだけど、元々頭である私にも大層な価値はないのだ。
改めて認めると、ショッキングな事実ばかりである。もう無理……よし、もし生きて帰れたなら流星街に帰ろう。そっちの方が平和だ。
反対にもし死んだら、それはしょうがない。どっちにしろゴミ捨て場行き。私は元の場所に帰るんだ。そう思うと、少しおだかやな気持ちになった。

私が遠い世界に意識を飛ばしている間にも、話が進んでいたようで、何故か突然助席に乗っていた女性に私の心臓の音嫌がられた。
ほら、もうやっぱ死んだほうが良いんじゃん!!!



「お前らは一体……」



更に鎖野郎には異物を見るような目で見られる。
私達が、おかしいというような目。確かにおかしいけれど、いや、組織としてはそんなにすごいものじゃないよ。誰も団長の言う事聞かないからね。
団員の一人は下剋上してるからね。組織として既に成り立ってないからね。もう、私操作系が大嫌い。友達だと思ってた奴は裏切るしには操作系ろくなやついない。



「5年程前……緋の眼のクルタ族を虐殺した時、お前は既にリーダーだったのか?」

「……えっ?」



鎖野郎が唐突に話しかけてきたと思ったら、何かよくわからない事言ってきて、私の頭は対応しきれずに、えっと驚きの声を漏らしてしまった。
今なんて言ったんだ、この人。五年前も、確かに、一応私は団長と呼ばれていたけれど…クルタ族?虐殺?



「答えろ……!!」

「…えっ?何それ?」



殴られた。ほんっとに、流石に理不尽すぎるだろこのガキ…!
鎖野郎は怒りを隠しきれない様子で私を睨みつける。こいつもはやおかしい。スカートはきながら鎖持って殴って睨んでくる男とか。嫌だ。



「忘れたとは言わせないぞ…!お前らがやったんだろう…!!」

「いや、だってクルタ族って眼が赤くなる人達でしょ!?」

「(口調…!?)……そうだ」

「俺達やってないよ本当に、人の眼抉るなんてきもちわるくて進んでやりたいと思わないよ、ああフェイタン以外…それさぁ別の盗賊団だよ確か」

「嘘を言うな!!お前らがっ「クラピカ、本当よ!」…は?」

「彼の言っている事は全てほんとう!」

「────!?」



空気が凍った。そんな中私はひとり、事のあらましに納得していた。
ああ、なるほど。そうか────私達は非情集団だから、こういう誤解はありがちで、確かに世論的にあの事件は、幻影旅団がやったことにされている。
私達の真似っこをする偽物もいれば、新聞のでっち上げも少なくない。とりあえずこいつらだろうみたいな、そういう適当なのが多すぎるのだ。
これは流星街を出る時に懸念していた冤罪と大差ないことだと思っている。
たまに読んでいて目玉が飛び出しそうになる。えーやってないーー!!!みたいな。シャル達個人でやってるのかとも一瞬疑うけれど、事件の感じからしても、明らかに違うな、と、そんなのはすぐにわかることだ。

なるほど、この鎖の使い手は、あの凄惨な事件で虐殺されてしまった美しい種族、クルタ族の生き残りか。だから復讐のために旅団を狙いつづけ、私を捕まえるに至ったのだろう。
しかし真実では、確かに5年前クルタ族を襲おうという提案がオモカゲさん辺りから出され、行きそうになりかけてたけれど、気持ち悪いのでこれ以上ないくらい必死で私が却下したのだ。
そうしたら私のあまりの必死さに久々にシャルや皆も味方してくれて、行かない方向になって。みんな……!!って、感動したんだよ。
そうして阻止したにもかかわらず、その直後別の盗賊団が緋の眼を盗りに行って、結局彼らが殲滅されたというのは、なんというか、哀しい話だけれど。
どうしてみんな、美しいものに容赦がないんだろう。どうして、そんなに、そんなことをしてまで自分のものにしたいんだ。その圧倒的行動力は、ひょっとしたら、団長である私が、見習わなきゃいけないものだったのかもしれないけど。

しかし、待てよ。私、やってもないのに人の目を抉ったって疑われてこんなめにあってたのか?
鎖ぐるぐるにされて子どもに散々フルボッコにされて、結局、冤罪?



「……もう嫌だ…ぐすっ誰も俺の話聞いてくれないし…」

「いやっすっ…すまない…」



慌てて鎖をとってもらったが、もう心の傷は癒えない。ぼろぼろと涙が出るのを止められなかった。私は深く傷ついた。
26歳にもなって人前で泣くとは思っていなかったがそういえばネオンちゃんの前でも既に号泣していたんだった。
もうプライドなんて明後日の方向にぶん投げてやろう。そもそも私に持っておくべき大したプライドなんてない。相当ちんけだ、私のプライドなんて。
絶対皆私のことプライド高いって思ってるよね。違いますよ。私は平気で土下座するし人前で泣くし、叫ぶよ。皆気づいてなかったみたいだけど。
今まで誰にも本性がバレなかったのは、奇跡としか言いようがなかった。

そうして私は今、ようやく人に自分の本性を見てもらえたのだ。この涙は主に解放感と絶望感からきているものだろう。散々だったよ今まで…
やっぱりあの時シャルにのせられて流星街から出ていったのは間違いだったのだ。
今すぐ帰ろう。あの愛しきゴミ捨て場に。どうせみんな迎えになんて来ないだろうし…



「……立て続けに悪いんだが、私の仲間がそちらに捕まっている。お前はまだ解放できない」



ブチッ
何かが切れる音がした。



「だから!俺に人質としての価値なんてないんだってば!!傷を抉るなよ!!」



うわああと泣き出すと、鎖野郎に戸惑いがちに背中を撫でられた。
子どもに気を遣わせてしまった………

そんなクロロ=ルシルフルは、何度も言うが26歳である。


130322

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