あのひの思ひ出
嗚呼、大体思い出してきちゃったよ
確かあの日、私達は、私は……………
『みんな、外へ行かないか』
ついさっきこの世界が前世と違う世界で、 しかもトトロっぽいものがいるかもしれないという新事実を発見した私は、只今仲間を集めて大演説中なのである。子供にしか見えないから早く探しに行かなければ。
私まだ子供の内に入るかなぁ。精神的にはもうとっくにおばさんだけど、クロロとしては…ギリギリ大丈夫?か?
どうせ外に行くならみんなで一緒に出たいと思った。いや別にみんなで一緒にトトロ探そうとかじゃなくて。
ただ、行く場所も住む場所も目的も、何もかも違って良いからみんなで一緒に旅立って、たまに会いたいねって事だ。
それを伝えるとマチが、『どうしてクロロは外に出たいって思ったの?』と聞いてきた。そんなマチも何だかそわそわしている。
やっぱみんな行きたかったんだね……とりあえず質問に答えておく。
『ここには何もないから、』
まぁとは言っても住めば都だし困ってないけど。適応力って大事だ。
辺りを見渡してみる。どこもかしこも、笑ってしまうくらいゴミだらけだ。それでも私は現世、確かに此処で育った。
ここを出るのは少し寂しい気もしてくる。第二の故郷だもの。私は此処が好きだ。
ただ、何もないのだ。そして、お世辞にも綺麗とはいえなかった。
『だが、外には沢山のものがある』
綺麗な宝石もまだ解読されてない石盤も美しい絵画も興味深い古文書も、この世にはそういったすてきなものが沢山あるのだ。
あと美味しい食べ物とか、トトロとかトトロね!
『それを全て、手に入れたいと思ったんだ』
そう言い終わってみんなを見たら、みんな真剣な顔しててちょっとびっくりした。
割と軽い提案の気持ちで、思いつきで言っていたから、こんなに皆が真剣に考えてくれたなんて、自分が少し恥ずかしい。
私の話なんてそんなに真面目に聞かなくて良いよ。誰か一人でも反対がいるなら私は此処に居ようと思ってるし、そんなに強い決心じゃないし………と思っていたら。
『…おもしろそーじゃねーか』
『あたしはクロロについて行くよ』
『お前ならいつかこう言うんじゃないかってみんな待ってたんだぜ』
そんなふうに、みんなして思いのほか賛成してくれた。え、嬉しすぎて泣きそう。
みんなが話を聞いてくれてる時点で泣きそうなのに賛成までしてくれるなんて。
いつも割とみんな自分勝手だけどこいつら結局仲間想いの良い奴等なんだよね。私は幸せ者なんだなぁと思った。
ところが、
『盗賊か、いいな』
『何ていうか…私たちにピッタリね』
『クロロがボスだな!』
……あれ?
ちょっとまて、あの眉なしなんつった?
盗賊?盗賊っていったのかあいつ。え、私そんなこと一言も言ってなくない?
いや、確かに「全てを手に入れたいんだ」的な事は言ったけど。それは何ていうか、例えでありまして。そもそも盗るという発想がおかしい……!!
『いや俺はまずトトロをだな、』
『盗賊って事はさ、名前とかは?』
『きとクロロがもう決めてるね』
『いやだからト……』
『団長さんよぉ、ルールとかどうすんだ?俺はそれに従うぜ!!』
いやだからトトロだっつってんだろ!話を聞け話を!!お前ら小学生か!話聞かないなんて最低先生泣いちゃう!!
名前とかルールとか以前に盗賊なんて一言も言ってないし外行ってまで盗みはやだよ!!
捕まるじゃん!!逮捕!!団長?そうだね、それじゃあまずみんな団長の話をききなさい!!話はそこからだ!!
そしてそのまま訴えは聞き入れてもらえず半泣きしていたところをシャルに引きずられ、
私は生まれ育った流星街から新たな道へ一歩を踏み出したのだった。……またの名、犯罪者の道を。
130322
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