クロロ成り代わり | ナノ
奇術師は嘘つき

シャルに叱られたあと、乾杯しながら思った。

ウボォーさんがいないといつまでたっても帰れないよな。と。
これは大問題だ。私は早く引き上げたいのに、だって、ウボォーさんを誘拐した鎖野郎は間違いなく私達の強敵だ。
早く逃げなきゃ。でもな…ノブナガあたりがな……復讐に燃えてるから………ウボォーさんたぶん生きてんのに、架空の復讐で此処にとどまって殺されちゃあほくさい。
そう考えて、もう一回説明してみようと思った。



「みんな、」



しかし私が何か言おうとするとやはり不思議なくらいの妨害が入る。
もうこれは才能だ。寧ろ誇らしく思ってやろうか。
とりあえず聞いてないやつが悪いと言うことで話を続けた。



「今夜ここを引き上げるから」

「……どーいうことだ?」



ノブナガ何でそういうのは聞いてるの!?
どんだけ都合が良いのその耳!便利だね、頂戴!!
ノブナガがつっかかったお陰か、皆が私に注目してきた。結構怖い。
久しぶりすぎるこの感じ。



「…言葉の通りだ、今夜此処を立つ。今日で仕事終わりだからな」

「…まだだろ。鎖野郎を探し出す」

「いや…ウボォーさんは「ノブナガいい加減にしねェか、団長命令だぞ」



うぉおいフランクリン味方になってくれるのはすごく嬉しいけど重要な部分かぶってるから!
団長の話まだ終わってないからね二人とも!



「話はまだ続「本当にそりゃ団長としての命令か?」ちょ、」

「…クロロよ」



聞けよ!!“ウボォーは生きてる”って、この一言に私はどれだけのエネルギー使わなきゃいけないの!!
…いや、でも待って、ウボォーさんが生きてるかどうかぶっちゃけ私も確信ないぞ。だってもう随分時間たってるし……
……死んだ?まさか、ウボォーさんに限ってそんな。

急に不安になってきた。そうとなると、私だってそれなりにやりたいことが出てくる。鎖野郎を探さなきゃいけないかもしれない。
今まで自分の身を守ることで精一杯だったけど、私も一応団長だし、ウボォーさんは大切だ。ウボォーさんが死んだだなんて、まだあまり信じていないし、そんな筈はないと思う。
でも、これはきちんと確認する必要があるかもしれない。

問題はどうやって確認するか。
ひとつは、鎖野郎本人に聞く。危険が伴うけれど、でも一番確実で、手っ取り早い。なにしろ、“最悪の結果”だった場合、そうすれば全て済むからだ。復讐にせよ、弔いにせよ。そうでないのなら勿論その必要はない。簡単な話だ。
ただ、この方法は難しい。私がわかっているのは相手が鎖の使い手と言うことだけ。それだけでどうすれば…

────そうだ、ネオンちゃんの能力。
このまま私がここに残って鎖野郎を探す命令を出したら、みんなで探しているうちに誰かが鎖野郎と接触するかもしれない。その予言が出れば、鎖野郎へのヒントになる。
そして、ふたつめのウボォーさんの安否の確認方法もこれだ。元々これに頼るつもりだったのだ。まさに一石二鳥だった。クロロ冴えてる!!



「ノブナガ!」

「っ!?」


自画自賛して喜んだ私が大きな声を出すとノブナガは面食らったような顔をした。
ちょっと何だこいつみたいな感情が混じってるように見えて、ちょっと気分が落ち込んだ。



「……俺の質問に答えろ」



私は紙とペンを取り出した。



***



ノブナガを占った。
そうしたら手足が半分になるとかいう物騒な結果が出た。手足って…手足って、蜘蛛の手足ってことだよね?
えええええ、これ天罰だろ。私達が散々悪いことしてきたから……鎖野郎は神の使いなのかもしれない、裁きの鉄槌だ。あ、ちょっとかっこいい……

そして、まだ時間があまっているということと、回数もまだ残っているようなのでせっかくだからとその後団員を占ったら、
シズクが自分死ぬとかパクが死ぬとか、シャルが死ぬとか、次々に物騒なことを言い出した。
それを聞いて、ふと小憎たらしいと思っていたシャルを見る。自分が死ぬだなんて深刻な予言が出たにも関わらず、興味無さそうにしているシャルを眺めて、少しだけ悲しくなったのは、きっと気のせい。

そんな衝撃的な予言が飛び交う中、一番衝撃的だったのは────ヒソカさんの裏切りであった。

ええええ、今まで変態変態思ってたけどそれだけじゃなく裏切り者だったの!?
全然知らなかった、気づかなかった!!変化系の鏡みたいなやつだったのか…!!
しかし、ここで驚くのは格好悪いので知ってましたよというように真顔で装いながら考える。
情報売られたって事は、これは本格的に、ウボォーさん、殺されたんじゃないか。
ぞっと背筋に冷たいものが走った。



「ヒソカ…お前…」

「てめぇが売ったのか、ウボォーを」



私がなにかいう前に、またしてもノブナガが怒り始める。強化系は本当に、喧嘩っ早すぎる。気持ちはわかる、けど、まだ真偽は明らかでないのに、折角団員同士のマジギレ禁止っていう素晴らしいルールがあるのに、それを簡単に破るのは如何なものか。いや、団長命令絶対っていうのから既に守られてないんだけど。
それはもう諦めたから、せめて喧嘩はやめてほしい。ここでヒソカとやり合って何になるんだ。まず話し合いなさい、喧嘩はやめなさい。あれ…何で私先生やってるんだ…?

先生の苦労を初めて知って、前世で授業聞かなかった(多分)事をこっそり謝りつつノブナガさんを宥めているその時、
私は視界の端でヒソカが気持ち悪い顔をしているのを見てしまった。嗚呼…此処は何て辛い職場だろうか。

胃が痛むのを感じながら今後の方針を考え、そのまま明けてしまった夜の終わりを見つめながら、私は唐突に本屋さんでバイトがしたいなぁと思った。
本屋で本を読みながら、店番をする穏やかな生活を送りたい。そう切に願っている。

130309

prev next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -