クロロ成り代わり | ナノ
被害者は責任者

みんなが勝手に大暴れしていて。あんまりにもやりたい放題やるせいで、旅団は暗殺者に狙われている。もう嫌。
しかし現実は絶望する暇すら与えてくれない。私にヨークシンを上からゆっくり眺める時間はないのだ。

だって何か、上から圧力みたいなのを感じるんだよ、徐々に追い詰められてるんだよ!!

さっきまでとは桁違いの人達が上の階から私にちょっとずつ威圧をかけている。いじめみたいだ。
これも暗殺者か?めっちゃ強い暗殺者ってまさかまさか、アレじゃあるまいな。
まさか、自宅が観光スポットになってる、あの一家では……。とりあえず逃げ込んだホールのような所で座り込む。

どうしよう……ゾルディックとか反則だろ……



「嫌だ……」



勝てる気がしないんだけど……

あ、そうだ!イルミ!もしこれがイルミなら!!
ゾルディック家の長男坊イルミくんであれば、私は一応友達だし、金払わないと助けてくれないけど、逆に言えば金払えば助けてくれる唯一無二の私の親友だし!見逃してくれるかも!!
よぅしこうなったらイルミ来い!イルミ、イルミ!!




「お、いたぞ」

「親父、気をつけろ。奴は他人の能力を盗む」

「………」



何でゾルディック家の主が二人ががりでくるの!!



「イルミはどうしたんだよ!!」

「は?」

「何じゃ、イルミに殺られたかったんか」

「違う!」

「残念ながらイルミは他の仕事に出とるわ」

「いやだから、」

「あいつも人気になったもんだな」

「聞けコラァァ」



何だよ、ゾルディックまで私の話聞いてくれないのかよ!!
イルミそっくり。さすが親子。イルミも私の話の七割は聞いてくれなかった。
…あれ、私とイルミって友達なのかな。

すごく深刻な問題に直面し、本気で考えこんでいると。突然目の前の二人が跳んだ。



「でぇぇぇ?!」



不意打ちだと!?なんて卑怯!最低だ!
あっ私も卑怯な最低野郎でした。盗賊のボスでした。いや…ボスっていうか、責任者っていうか、被害者だよ私。

私は理不尽を感じながらも、とにかく二人の攻撃を避けるために跳んだ。
理不尽ばかり。また泣きそうになる。最近の私は酷く泣き虫だ。クロロ、本当頑張り屋。誰か褒美を寄越せ。早急に。



***



はい、殺されかけました。二人ががりでもう……
死ぬかと思った。前にもこの人と戦ったことあるけど、前と同様容赦がない。
ベンズナイフ出した時ちょっと欲しそうにしてたからあげようかって言おうとしたのにそんな暇さえ与えてくれなかった。
だからもうあげない。

とにかく大ピンチだった私を救ってくれたのは、彼らの持っていた回線の音だった。
若い方がそれに出る。しばらくして、割りと聞きなれた名前があがった。



「イルミか」

「イルミ!?」

「おぬし…そんなにイルミが好きか」



お爺さんの方のゾルディックの言葉に頷いておく。そりゃ(たぶん)私の友達だからね!
生き生きと頷いたせいかちょっと変な目で見られたがこの際気にしない。
というか、このタイミングで電話って、まさか助けてくれたのかあいつ!ちょっと感動だぞ。やっぱりイルミは友達だった!よかった!
話聞いてくれないと思ってたけどきっと聞いてないふりして聞いてくれてたんだね!
イルミの不器用な優しさに感動していると、ゾルディックさん(若い方)に声をかけられた。



「おい」

「?」

「イルミから伝言だ。“約束の口座に入金よろしく”、と」

「えっ…」



やっぱり金とるのかよ!
ふざけんな!別に私助けてなんて言ってないし!!
それなのに勝手に助けて金取るとか怖くない!?
というかこういう時って、「礼はいらねぇよ。俺たち、ダチだろっ」(ウインク)
っていうもんじゃないの!?イルミは私の友達なんじゃないの!?



「あの、ちょっとイルミと俺が友達かどうか聞いてもらってもいいですか」



ゾルさんにそう問うと、「自分で聞け」と回線を渡された。
ええ、そんな軽々渡しちゃっていいのかよ…相当面倒くさがってるぞこの人。
そんな態度をとられ複雑な気持ちだが、私はありがたく回線を借りることにした。



「なぁイルミ、俺達って友達?」



回線を手にイルミにそう問うと、電話の向こうから
イルミの『うわ、』という声が聞こえた気がした。
うん、聞かなかったことにする。



『別に友達でも良いけど、助けるときは有料だよ』

「あ、そう…じゃあ友達って事で……あ、因みにいつも俺の話聞いてないっぽいけど、聞いてるか?」

『え?ああ聞いてる聞いてる』

「……じゃあこの前俺が見て、感想話した映画は?」

『あー確かスプラッタホラーだったよね』

「違うよ!!」



私が見たのはハートフルアニメ映画だよ!
そう訴えると『ははは似合わないね』と相変わらずの棒読みで言われた。
それから、前に私がおすすめした本や漫画のタイトルを聞いたがひとつ残らずあっておらず。
途中からとうとう私の質問まで聞かなくなり、この前食べたお菓子の質問をしたのに
『え?上履きでしょ?』と言い出した。こいつ…わからないくせに適当に答えやがって…
私が変態みたいになってるじゃないか…!!

とにかくイルミはやっぱり友達ではないということがよくわかった。
あれ、じゃあ私友達いなくないか?うわああ!!
いや待て、私にはまだ旅団が…でもあいつらも話聞いてくれないうわああ!!

そうして絶望にうちひしがれ頭を抱える私に追い討ちをかけるように
今度は私の携帯が鳴った。こういう時にかけてくるやつは一人しかしらない。無言でピッと通話ボタンを押すと、案の定間髪入れずに明るい声が聞こえてくる。



『あ、団長?よかった、無事で。俺が十老頭を始末するよう頼んだおかげかなぁ。とりあえず彼に支払いよろしくね!』

「おいシャルナーク、」

『あ、団長も早く来なよ!もう競売品盗み始めてるんだから!』



そうして電話は一方的に切られた。
ゾルディックの二人は私を哀れむような目で見たあとシュンっと消えた。忍者。

……私マジで可哀想。
こんなに頑張ってるのに神様は味方してくれない。
いや、信じてないんだけど、あれだ。苦しい時の神頼み。
助けて神様。まず、クロロ友達がほしいな。

130223

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