無意味な大暴れ
何て事だ。どうやら私は、マフィアだけでなく暗殺者にまで狙われてしまったらしい。それに気づいたのはついさっきの事だ。
あの後私がなかなか泣き止まないものだから、気まずくなって私は一先ずネオンちゃんと別れた。いい大人が恥ずかしい。シャルが見たらゲラゲラ笑うだろう。全くいつ思い出しても腹立たしい奴だ。
そうして涙を拭いながらただ道を歩いていたら、何故だろう。すれ違う色んな奴に殺されかけたのだ。
それを何事かと返り討ちにしているうちに、10回目くらいでようやく気づいた。私の顔、マフィアにわれてるんだ!!
うわぁと思って最上階まで逃げたがそれでもみんなでしつこく追いかけてくる。
それを、来ないでよ!とお化け屋敷に自分から入っておきながらお化けに向かって言う女の子の如く叫びながら返り討ち。
そうしてインドアフィッシュ(誰かに借りた能力)でたった今殺してしまった謎の殺人中毒者も、きっと暗殺者のひとりだろう。
たぶんこいつ、マフィアに雇われたのだ。こいつ以外にもそういうやつはきっとまだまだいるはず。
ぶっちゃけこいつは弱かったから助かった。かなり怖かったけど弱かった。というより、インドアフィッシュちゃんが強かった。発動した私も食われかけたよ。所詮レンタルってこと???ひどい。
ちょっと窓開けるの遅かったら間違いなく食われてた。うん。念魚半端ない。
でも、いくら念魚ちゃんが強かったとしても、もっと、ちゃんとした本物の暗殺者はこんなに弱くないだろう。
そういう奴等がまだまだ私を殺しにくるって事だ。ぎゃああめっちゃこわい。どうしよう。
どうしようもないので、シャルを恨むことしか今はできなかった。シャルの野郎絶対に許さん……!私の命を脅かしやがって…!
ホントにあいつ招かれざる客もいいところだよ!ネオンちゃん本当の本当に天才!
そうして苛々しすぎてまた泣きそうになっている私に、追い討ちをかけるように外からドォォォンというでかい音がした。ばっと目を向けると、何故か街のあちこちが燃えている。
えっ何で?祭り?と思いながらも、嫌な予感がしてよくよく目を凝らして見ると、すごいスピードで人の間を駆け抜けていく影が。
……え、あれフェイタンとフィンクスじゃない?
街のあちこちでって、まさか皆来てる系じゃない?
ちょ、何やってんだお前ら勝手にしろとは言ったけど聞いてないよこんなの!?何で暴れてんの、一体何があったのお前らの中で!!
そこで、はっと思い出した。あ、もしかしてこれ、
死んだ事になってるウボォーさんの弔い…
「だから死んでないって!!」
この大暴れは無意味だよ!!
どうして私の指示どころか話すらきいてくれないのみんな、そのくせどうして私を捲き込むの!!
私が暗殺者に殺されても良いっていうの!?もう帰りたい。どうしてこうなった。
ああそうだよウボォーさんがいないからだよ!マジ何処行ったのあの人!!
死んでたらどうしようだんだん私も心配になってきた!!
────ねぇウボォーさん、聞こえますか?
みんな、貴方の好きな大暴れしてますよ貴方抜きで。早く帰ってきて貴方も参加してください。いやしないで。
溢れそうになる涙を必死に堪え、騒がしい夜の揺れるヨークシンを見た。
もうなんでも良いからウボォーさん帰って来てくれ。いやその前にこの私の残念ポジションを何とかしてくれ。
私に祈る神はいないので、願いは届かないのだが。
そうだね、生きて今回の件を乗り越えられたら、まず今度こそシャルに二度と見つからないような遠い遠い場所へ行こう。そうしよう。
って、数年前にも、同じことを思ったんだけれども。
130217
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