1
世界一の海底大監獄インペルダウン。今日、とある二人の囚人がその檻から抜け出した。


「カルムてめェハデ馬鹿野郎!!!なんで電伝虫に手ェ振りやがった!!?」

「えーだって、こっち見てたから」

「あ、じゃあ仕方ない。じゃねえ!!!」


楽しそうに笑っている少女をぎゃーぎゃーと叱りつける男は、さんざん怒鳴ったあとため息を吐いて頭を抱えた。何故、こいつをわざわざ檻から連れ出してしまったのか………。
それは、遡ること約一週間前。





『────つまんないんだ』


そういった少女が自ら地獄に堕ちていくのを、男もといバギーは目が離せないまま見送った。
気味の悪いイカれた女だった。彼女はこの監獄の中で、その身に余るだろう苦痛を少しだって感じず、ただ退屈だけに殺されそうになっていたのだから。
その時彼女をこの脱獄計画に利用しようと思ったと同時に、どこかで哀れに感じてしまうほど、彼女の瞳は空虚で、まるで何にも見えていないようだった。目の前の、バギーでさえも。
そんな少女が、バギーとの話の末に、こんなことを言ったのだ。


『バギーとなら、たのしいかも』


こんなことを言われたからといって、使えるからと言って、連れていかれてしまった彼女助け出す必要なんてひょっとしたら無かったかもしれない。
バギーはそのことに心のどこかで気づいていたが、それでも少女、カルムを助けたのは────カルムが感じていたことと同じことをバギーも感じていたから。理由なんてそのときはそれだけで充分過ぎたのだ。





「────けど、けどよォ…!!」


バギーは過去を振り返った上で、再び頭を抱えた。やっぱり致命的に馬鹿すぎて、あの時の自分に教えてやりたい。考え直せ、と。
自らの失敗を嘆くようによよよ、と泣くバギーの心は露知らず、顔をぐいん!と覗き込んだカルムは元気よくバギーの肩を叩いた。


「どうしたバギー!!」


彼女のバッサリ切り落とした短いブロンドが、視界の端で揺れている。元々は腰に届きそうなロングヘアだったが、つい先程「邪魔!」と叫んだかと思えば、近くにあった拷問用の武器で肩上までじょきじょきと切ってしまったのだ。
大胆すぎるその髪に、バギーはもはや“一応女”とすら呼べないのではと呆れたものだが、今、それを見て一人へっと笑った。


「…やっぱりその方が似合うぜ、おめェには」

「え?なに?」

「うるせェ!さっさと行くぞオラァ!!」

「おらー!!」


バギーは思う。幾ら忠告しても、あの時の自分はこいつを檻から出しただろう。これを見捨てちゃ男が廃る、とかなんとか言って。
そして、これから何度も後悔するだろう。このバカは、本当に、頭が空っぽどころか脳に蟲でもわいているに違いないのだから。
おかしな歌を歌い出したカルムの頭を引っぱたきながら、バギーは今後を思い一人盛大に唸った。

170402

back




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -