6日目 わたしはエストラガル=カルム。タカマチ生まれです。 それだけは朝おきたときに、怖いかおをした使用人さんに「おはよう」の次に言われたから、おぼえてます。たぶんわすれません。 おうちはとても大きいです。お庭もとても大きいです。だからわたしは、勉強するよりそこを走るほうがいいとおもいます。 でもみんな、わたしがそうするとすごいかおをしておこりました。そのかおは、すっごくおもしろいとおもいました。それくらいでした。
こんやくしゃ という子がいました。たまに会うだけだけど、とてもおもしろい子で、わたしはその子のするお話がすっごくすきでした。 その子がわたしに、「しあわせは、じぶんでさがせ」って言ったのを、わたしはよくおぼえてます。あのね、わたしはそれをきいて、外に出ることに決めたんだよ。 みんな、いつもよりもっとカンカンにおこってわたしを捕まえようとしたから大変だったけど、さいごにはみんな、ちゃんとわかってくれました。わたしはみんなに見送られて、タカマチを出ました。
外はあんまりたのしくなかったです。さいしょはたのしかったけど、とちゅうから全然たのしくなかったです。 いろんな人に会って、いろんな船にのったけど、みんな、おうちにいた人と同じかおで、こんやくしゃみたいな子はいませんでした。わたしはいつも、つまんなくて…………
それからずっとあと、わたしはいつの間にか白い部屋にいました。それからしばらくして、ここにつれてこられた。 インペルダウン。わるいことをした人をつかまえるところ。外よりは、たのしいところだよね。 ライオンいるし、みんなでさわげるし、夜になると“しょちょー”がたのしいひとりごとを言いにやってくるから、たのしかった。 それに、さいきんバギーという人にも会いました。おもしろかったです。外に出たいと思う人は、みんなおもしろい話をします。わたしはバギーがだいすきでした。 だから、いいところだと思う。それでもやっぱり、自由じゃないから、わたしはここでもつまらなかったの。
ろうやのなかで、ゆめをみた。 あつい、なつのうみに かこまれた、きれいなしまを、ゆめでみた。 そこは、たった1人の海賊が一人ぼっちでお酒を飲んでいて、それ以外は誰もいないさみしいしずかなしま。だけどドレスをきておじょうひんにおじぎをしたり、できないことがあって しかられたりすることはなくて、自由なんだって。 だからわたしは、そこでその人と2人でお酒を飲んで、踊りを踊った。とおくで沈む夕陽がきれいだった。
わたしは、今日もその夢をみれるように、おいのりした。でもきっと、どんなにおいのりしても、もう二度ととおくの赤はみえないんだとおもう。だってこのお部屋には、窓がない。
ああ、よるがくる。
(壁のシミとのないしょばなし) 170210 |