2日目
────そいつはエストラガル=カルムだ。可愛い顔してるが、イーストブルーでは一時期有名人だったぜ。貴族の生まれだったが、10の時に豪邸の大人を皆殺しにして家出した血の匂いのするガキだってな。


次の日、懲罰でレベル4にやってきたバギーは例のおかしな女にまた会った。
女だというのに、そんなこと関係ないと言わんばかりのふてぶてしさ。焦熱地獄だというのに暑さなんてものともせず、ぽけっとした顔で、ずんずんと元気よく意気揚々に木材を運んでいる。他の囚人よりは小さめだが、それでも彼女よりもずっと大きな木材だ。なんだあの馬鹿力は。あの細身でゴリラ並の怪力とは、一体どういう身体の仕組みしてんだ?そう思ったが、昨日聞いた話では、15の時に捕まってから約4年間、この地獄でこうして働かされていたらしいので、必然的に鍛えられてしまっているのかもしれない。
素質のあるやつだ。大監獄インペルダウンは、見た目に反して末恐ろしいこの若すぎる犯罪者にメキメキ力をつけさせてしまって良いのか?一生出さないつもりだからいいのか。

ちらりと、もう一度姿をよく見る。こいつが本当に、家族を殺し家を出て────その後5年間、海賊船に潜り込み一緒に悪事を働き、時にはその海賊船を潰したりもしながら、転々としていたとんでもない奴だというのか?見えない。ついでに19歳にも見えない。せいぜい13、14歳くらいだろう。クソガキだ。
しかし、長い金色の髪はこの地獄の中で艶を失ったのかボロボロのくすんだ色をしているが、実際は豊かなブロンドであっただろうことが伺えるし、笑顔にはどこか品がある。貴族の生まれ、要するにいい所の娘らしいという事だけは事実なのかもしれない。想像に難くはなかった。
ふと、視線に気づいたのか────エストラガル=カルムが、ぐるんと勢いよくこちらを向いた。人らしからぬ奇妙なその動きに、ぎょっとして思わず固まる。


「あれ、うーん……あ!昨日の!わーい!昨日のヒト!」


しばらく考えているようだったが、思い出したらしい。奴は思い出せたことが嬉しかったのか、ぱぁぁっと目を輝かせ、あろう事か笑顔でこちらに手を振って駆け寄ろうとして来た。猛スピードで逃げた。

170206

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