スキャポライトの足音

シャルと別れ、ふらりふらりと街を歩く。
内に渦巻く恐怖は、考え事同様簡単には消えず、私はどうにかしてそれを追いやりたかったけれど、気分転換になるような大した趣味もないので、やはりそうもいかなかった。お酒は嫌いだし、友達はいない。どんなにシャルに励まされても、あまりにも、今日のことはショックであった。
しかし、そうして彷徨うその間も、ポケットの中のベリルをうっかり落としてしまっていないか、しきりに気にしている自分がいることに、宝石に触れた3度目くらいで気づいた。そこで私はようやく少しだけ落ち着くことが出来たのだ。
そう、きらいなはず、ないんだ。最近どうかしてるんだ、わたしは。呪われているのかもしれない。何かの拍子に、変な念をかけられて、操られて、暗示をかけられているのかも。
思い当たる節を探したが、私がこうなったもとを辿っていくと、団長が『本当に欲しいものはないのか?』と訪ねてくる姿が浮かぶ。それを思い出して、私はまた深い思考の底に、沈みこんでしまう。

────待てよ。
以前『何故みんな私の“ほしがり”をただの私の欲しいもの発見機だと決めつけるのか』と言ったが、今、誰より私がそう決めつけていやしないか?
そもそも“ほしがり”とは、一体何なのだ?私はよくわかっていない自分の能力に、判断を任せすぎている。よく、考えなきゃ。

“ほしがり”には、二通りある。
一つは、オーラを弾丸のように放出して、短距離をいっきに駆け抜けさせ、オーラが目的の物に辿り着いてからその道を辿る。これは既に欲しいものと、その位置がある程度わかっている場合に使うものだ。
もう一つは、私が幼い頃から無意識的に使っているもの。おそらく、少量のオーラを断続的に放出しつづけ、それを追いかける。クロロを見つけたときの場合は、おそらく彼の痕跡……それを辿ったのだ。

ふと、思う。結局私のオーラの絶対量はどれくらいなのだろうと。少ないと決めつけていたけれど、何キロも先まで辿り着いたのだ。少量とはいえ、断続的に出し続け、疲れもしなかった。
本当に、ほったらかしにしてきたせいで、私の力には謎が多すぎる。ほったらかしにしてきたというよりは、決めつけてきたのか。辿った先にいつも素敵なものがあったから、欲しいもの発見機なんだって、誰より私が。


「……でも」


仮に私やみんなの決めつけが正しくて、私のほしがりが何よりも正直に私の欲しいものを表していたとしたら。そうだ、逸れて消えたオーラは何処に向かったんだろう?また、クロロのところ?あの時私には何が見えたっけ?思い出せ。
逸れて街に向かったオーラを思った。そして、ふと────すれ違った親子を見る。何故かは私にもわからない、目が追いかけたのだ。それから、どうしてかデジャヴを感じて、私はゾッとした。


────みえないもの?


先日クロロが言っていた、クロロの欲しいものを思い浮かべる。そんな、まさか。わたしが?クロロが?これを?
私はこの瞬間、心底自分の決め付けを疑った。そんなの、絶対、絶対許さない。

わたしが“彼”に出会ったのはそうして頭を振った、次の瞬間だった。


「あ、」

「……、はい?」


この出会いが、私という人間を更に遠くへ連れていってしまうことを、私は半信半疑ながらも、自覚していた。それでも、この悩みの渦から抜け出すために、私は背後からのその声に、振り返ってしまったのだ。

170103

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