▼たべもの釣り
それはほんの一ヶ月前くらいのこと。
私が山の中を宛もなくフラフラしていた時のことだ。することもなく、本当に文字通りフラフラしていたとき。何だか見知った顔を見つけたので、たいあたりをしてみることにしたのだった。
「らりるれろけっとだーん!!」
「!?」
当然怪しいもの扱いされてロープで縛られ
木にミノムッチみたいに吊るされた。
怪しくないよ。おまえらよりよっぽど一般人っぽいよ。とりあえずわたしは、誤解を解こうと会話を試みた。
「ムサシちゃんわたしだよわたし」
「そんなことはわかってるわよ。何であんたがここにいるの、コトハ」
むすっとした顔でそう問いかけてきたムサシ。
規定とは違う白に、でかでかと“R”の文字がプリントされている服を着た彼女は、
知る人ぞ知る悪党のロケット団したっぱだ。そのとなりで同じく白の服を着ている男と、二足歩行しているニャースも、
ロケット団のしたっぱだ。そして聞いておどろけ、この人達はわたしの友人なのである。
…いや、厳密にいうとほんの少し前までは仲良くしてたんだけど、今ではこのようにミノムッチ扱いしてくる有様だった。
わたしは悪くない。私が仲良くしているヤマトとコサンジがムサシたちと仲悪いだけであって…
あとは私と組んでいるやつ。あいつが愛想悪いのもきっと原因だ。私も巻き込むなんてゆるせない。
あ、あいつ思い出したら何か泣けてきた。
「……ぐすっ」
「!?ちょっ!?ちょっとなんで泣いてんのよ!」
「き、きつく縛りすぎたんじゃないかなぁ!?」
「今緩めるから待つのニャ!」
「ありがとうみんな!!」
なんか優しくされたら嬉しくて涙ひっこんだ!!
慌てる三人に笑顔でそれを伝えると叩かれた。何故。いたい。結局縄はといてくれなかった。
「…で?何してんのよこんなところで」
「あれ?そういえばなんで一人なんだ?」
キョロキョロと辺りを見渡すコジロウは恐らくわたしとつるんでいたあいつをさがしているんだろう。
いや、それがですね、
「…トキヒコ君に置いてかれました。しにたい」
そこから私のべしゃりは止まらなかった。
トキヒコ君たらいっつも超冷たいんだ。いっつも不満そうな顔してるし目つき悪いし喋らないし、そのことを注意したら凄い嫌そうな顔してくるし。
あ、ヤマトとコサンジ達にもトキヒコ君が愛想ないせいで嫌な顔されるようになったし!
あ、それはトキヒコ君だけのせいじゃなかった。君達のせいでもあるね。どうしてくれる。
ベラベラとしゃべり続ける私の話を三人はしっかり聞いてくれた。悪党だけど根はいい奴なのだ。
私もロケット団したっぱでこの人達の同期だからそれはよく分かっている。
「確かにあいつはほんと愛想ないよな」
「ニャーもあいつだけはいけ好かないのにゃー」
うんうん。と頷く三人。私も同じように頷いておいた。だってあいつの愛想のなさはやばい。同期に聞いたら絶対みんな頷く。
「それで、置いてかれて一人で歩いてたらお三方を見つけてね、嬉しくなって」
「そうだったの…」
「うん……ところで」
「「「??」」」
「その鞄の中に食べ物が入っていてだね、」
「「「!!!」」」
3人のお腹がぎゅるるるる…と鳴った。
…やはりか。私の読みは間違っていなかった。
「ちなみに中身は木の実もあるけど、どれも調理して食べた方がおいしいよ」
「あーら、ご親切に教えてくれちゃって」
「じゃあこれは俺達がいただ「私から奪うよりおいしくいただける方法があるよ」
そんな私の言葉に3人ははっとした。
そう、そうなのである。私の唯一の特技を
結構仲の良かったこの三人が知らないわけが無いのだ。
私の唯一の特技。それは、
人よりちょっとだけ料理がうまいことである!!
「な、縄とけばいいんだな!」
「ついでにしばらく行動を共にしてくれたら毎日三食ご飯作ってやらないこともない」
「「「やったーーーー!!!」」」
こいつらちょろいな。
にこにこしながら縄をとく3人を見て私は小さくふふん、と笑った。
食べる人が食べたら「まぁおいしい」と言うだろう私の料理も、この三人相手なら
胃袋をがっつり掴める素晴らしいものになるのだ。あー料理かじってて助かった。
こうして私は先月からムサシたちと行動をともにすることにしたのである。トキヒコ君はもう知らん。
あいつ私の料理「普通」っていうし嫌い。まぁおいしいくらい言え。作ってやってるんだから。
少しでもおいしいなら何でも正義が私の持論
140615
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