反撃からの反撃


「次の仕事決行は明後日にしようか」


精一杯の気を遣い、当たり障りのないようにシャルに声をかけるとシャルはきょとんとして首をかしげた。
意地を張らずに正直に言うと…顔女の子みたいだから普通に可愛いんだけど……
隈が怖い…怖すぎる……


「何で?」

「何でって、シャルお前寝てないだろ」

「そうだけど?」

「何当たり前のように頷いてるのシャル君」


だからなに?みたいな顔がうざい。
何で私に対していつもそんな態度なの…ほんとどんだけ嫌いなの…あからさま…
でも寝不足によって少しだけうざさを失ったシャルはあはは、と笑った。代わりに不気味である。


「でも団長、俺まだまだ大丈夫だし。仕事を続けようよ」

「大丈夫っておま、隈を隠してから言おうな?な?」

「何言ってるの、はは」


シャルはケラケラと笑い続ける。
隈がある以外普段通りすぎて更に怖い。てか、なんで私がこんなに気を使わなきゃならない?
何で八つ当たりされなきゃならない?なんでプリン分けなきゃならない?なんで髪を…
そりゃまぁ、今回の仕事は私が企画したものだし?完全に私の都合だし?ほんとに、頑張ってもらって
感謝は心からしてるんだけどね?でも別に休まず働けとかそんな鬼みたいなこと言ってないし
八つ当たりされて髪も抜かれて(これはかなり根に持ってる)流石の私もね……!

よくよく考えるとムカムカしてきた。
そんな時だ、シャルがトドメの一言を放ったのは。



「大体そんな事言ってまた仕事したくないだけだろ」


ブチィ

クロロは激怒した。


「良いから寝ろおおおおお!!!」

「!?」


私は叫ぶと同時にシャルの腹のあたりに思い切りタックルをかましてそのまま肩に担ぎ、走った。
クロロになって人より力持ちになった私は自分より大きい人を担いでも全く負担にならなくなったけど、
足を動かす度にシャルがぐえ、とか苦しそうに呻くので可哀想で心なしかゆっくり走ってやった。
持ち方を変えてやる気はない。野郎をお姫様抱っこするほど私はやさしくないのである。
そしてそのままシャルの部屋に着くと、私はガッとシャルの足をつかみ、


「え、ちょ、まっ待ってクロロちょっと…!」

「どっせーーーーい!!!」

「わぁぁあ!?!?」


怒りに任せてベッドまで放り投げてやった。
予定通りベッドの上に落ちて呆然と天井を見上げているシャルをみて、やり遂げた感。
べつに汗出てないけど「ふぅ」とか言って腕で額を拭って、渾身のドヤ顔を披露してやった。どやぁぁぁあ


「さて、シャル。俺もな、リスト作ってくれた事は感謝している。クラピカも感謝していたし、すごく助かった」

「………」

「うん、だから感謝してるんだが…そんなに頑張らなくていい。せめてしっかり寝ろ。隈が出来てると、ほら、気になるだろ」

「………」

「わかったかシャル」

「………」

「はぁー」


私が何を言ってもだんまりを決め込むシャルに呆れ、思わずため息を吐いた。子供かお前は。
これ以上何言っても無駄だろう。仕方ない。元々話を聞かない奴だから諦めもつくわ。


「ちゃんと寝るんだぞ」


念を押しながら「仕方ないわねー」とか言って
シャルに布団をかけてやろうとした。すると、

ガッ


「ん?」


シャルに思い切り両腕をつかまれた。
そしてそのままものすごい力でギリギリされる。


「いっ!?痛い痛い痛い痛いえっシャル!?」


驚いてシャルのほうを見るとすごい近くに真顔。心臓が跳ねた。
いやこれはびびるわ近いしてか痛いし痛いしやめろしいてえええええ!!!


「シャルってばぁぁぁぁあああぁ………あ…あれ?」

「…………」すーすー

「………ねている」


やっぱり眠かったんじゃん…
すやすやと寝息をたてて寝ているシャルを見てまた溜息をはいた。意地っ張りな奴。
まぁ…それにしても、今回シャルがんばってくれたなぁ…。鎖野郎のこと、嫌わずとも好きにはなれないだろうと思ってたから
今回みんなが私の指令一つで動いてくれる事が人生最大レベルの“意外”である。


「おつかれ、ありがとうシャル」


そう言って少し笑った。心は何だか穏やかで、シャルに対して愛情すら湧いてきそうだった。よし、私も寝よう。
そう思って私はシャルを起こさないように静かにそこを離れた。否、離れようとした。
しかしそう簡単に私の思い通りに行く世界ではなかった。


「…あれ、おかしいな、はずれないな」


シャルの手が未だに私の腕を絞めている。
しかも丁度手首の脈の辺りにギリギリされてて超いてぇ…
ていうかさっきから屈んでるから腰のが痛い。
ぐいぐい何度も引っ張るが一向に取れる気配もなく。


「(だっ…誰かァァァァァア)」

「うーん……クロロ…仕事…しろ……」すーすー



そうしてしばらくぐいぐいしてたら
朝日が眩しくなってきた。うぅ…寝ぶそクロロ…

131013



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