プリンとゼリー


あれから速攻でクラピカに会って
「協力してくれた彼には改めて礼を言っておいてくれ、ありがとう」とか言われ
なんだか涙が溢れてきつつ少し談笑したあと、二時間ギリギリになって全力疾走して帰ってきたらみんないなかった。
ちょっとくらい待ってくれててもいいじゃない!慌てて外に出たら皆が歩いてるのが遥か遠くに見えたので
疲れた身体に鞭を打ち走ってやっと追いつくと、相変わらず隈のあるシャルがこちらを見ずに
「3分21秒」と静かに言った。恐怖をかんじた。

そうしてやってきたアジトから一番近いお屋敷。
マフィン関係の人の家らしい。やだなぁ…ヨークシンであんな大規模な事件起こしたあとに…


「というか、シャル最近一切寝てないだろ」

「そうだけど」

「寝ててもよかったのに…」

「は?なに、俺に邪魔っていってるの?」

「ちがいますごめんなさい」


えええ何でほんとそんな不機嫌なのー!?
びっくりなんだけど、態度悪すぎなんだけど!いやいつもの事だけどさふざけんな


「あと、団長」

「えっな、なんだ?」

「マフィアな」

「…あ、はい」


マフィンの方がおいしそうでいいじゃん!このシャルが!!
てか、あれ………私声に出してた?


「団長、はやく合図くれ!」

「えっ…あ、ああ、わかった、そう慌てるな…」


ノブナガが待ちきれないというように催促してくる。
すぐに急かすんじゃありません!子供じゃないんだから!
とりあえず咳払いをして、仕切りなおすことにする。


「あーごほん…目標は緋の眼のみ、邪魔する者がいてもできるだけ殺すな。穏便に事を済ませるに越したことはな…」


そう言いかけて顔をあげるとノブナガは刀をじっと見ていて
その近くにいたウボォーさんはその辺の岩をばきばき砕いていた。
えっ…と思って周りを見ると全員なんか明後日の方向とか見ている。


…………


きいてない………


「ちょ、みんな!?」

「……え、ああ、団長ごめんなさい、なにかしら」

「なんだ?団長」ばきっ

「いや、あのな、ちゃんと話を「みんな、目標は緋の眼ただ一つ、邪魔する者は好きにしていいってさ!」え!?」


ばっと声の方を見るとにこやかシャルくん。
好きにしていいなんて言ってないんだけどおい、てめぇは一体私に何の恨みがあるんだよ!ふざけんな!


「ちが「よし、行くぞ!!」「おおおおお!!」ちょっとおおおおおお」


何お約束みたいに私のこと無視してんのおおおおお
我先にと駆け出したどうしようもない奴らに、仕方ないから大きな声で言いたい事だけいうことにした。


「みんな、殺さないで死なないで!!!」

「!ったりめーだろ団長!!」

「え、どっちのお願いきいてくれたの!?殺しもしないってことでOK!?」

「よーし、腕がなるぜ!!!」


えっ…もしかして私の話聞かないのわざとか?わざとなのか!?



◇◆◇



私達が屋敷に入るだけでそこはすぐに戦場に変わった。
いや当然だけど。泥棒だからね。撃退するよねマフィアだったら。まぁ今回はできるはずもないんだが。
幻影旅団相手じゃね…ていうか、ところどころに血まみれの人間がが転がっているのはどういう事だろう。
私殺さないでって言ったんだけど…あれ明らかに敵だし致命傷だよね…!!

血に気を取られている隙をつこうと向かってくる強面のいかにもって感じの男を手刀で倒す。
みんな技術あるんだからこれくらいやってよ…!そう思ったあと、おもわず血まみれの人間を見る。
ごめんなさい、と心の中で謝ったところで気がついた。

あれ、この人まだ生きてる。周りをよく見ると、あちこちが血まみれになれど死んでいる人間は思いの外少なく(0ではない)
少しは頭に入れてくれてるのかな…と都合よく考え何かうれしくなった。この調子で死者0の仕事を目標にしてほしいな!
罪が消えるわけでも軽くなるわけでもないけど、だからって命を好きなだけ摘んでもいいはずはないし。
だって同じ人間なんていなくて、大多数なんかじゃなくて、みんな顔も違うし家族や友人恋人がいるはずなんだから。
血の匂いが鼻をくすぐって、息が苦しくなりながらも、ため息で誤魔化して前へすすんだ。
あの人たちの治療、誰かがしてくれるといいけど。なんて人任せな。でも、私に治療する技術も立場もないんだ、ごめん。



「さて…緋の眼ってどこにあるんだ?」

「っあ、お前は……!?」

「え?」


急に声をかけられて振り向く。
怖い顔をしたスーツの男が更に顔を
こわばらせて私を指さしていた。な、なに…


「え…あの、なんですか」

「何ですかじゃねぇよ!!てめぇ…幻影旅団の!!!」

「!?!?」


あれ、顔がわれている、わー…
冷や汗がだらだら垂れる。なんで、なんでバレた?!


「お前、お前は、オークションで死んだはずだろ…!!」

「あ」


なるほど前科があるからか!!
そういえば私たちあの時一瞬だけマフィアに賞金かけられてたんだ!
あとから知った事なんだけども!私ほんとに当事者か…?


「何で生きてんだ!?」

「………あー…」

「まさか…幽霊……!?」

「え、幽霊?……ふっ、バレてしまったようだな…俺はまだまだ現世に未練がある、だから化けてしまったようだ」

「ぎっ…ぎゃああああああああああああああああ!!」

「っぎゃあああ!!?えっ…!?ちょ、ちょっと待って」


私の言葉を聞いて急にざっと顔を真っ青にし、足をもつらせながら
走り出した男の肩をがっとつかむ。びくりと肩がはねた。


「ひっ」

「あの、緋の眼って何処にあるか知ってますか?」

「プリンならあっちだ!さっさといけ!はなせえええ!!」ばっ

「えっ!?」


なに、誰もプリンの事なんて聞いてないんだけど!?
私の手を肩から叩き落としたあと、無念というように悔しそうな顔をして去っていったあいつ一体なんなんだ。
プリン好きなのか、私プリンよりゼリーのがすきだけどね。まぁせっかく教えてくれたし、
ちょっともらってこようかな!!!

その数分後、プリンを冷蔵庫から取り出しているところを緋の眼を抱えたシャルに見つかり、
無表情で何も言わずに髪の毛を引っ張られた。何本か抜けた。震えが止まりませんでした。
プリンを一口わけなかったら髪の毛全部抜かれてたんじゃないかな…
禿げクロロ……


130925



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