2時間前舞台裏


仕事の指令を出してからしばらく経ったが、
ぶっちゃけ仕事は難航していた。
クルタ族襲撃から約5年が経過して、当然の如く緋の眼は中々取り返しがつかないくらい
各地に散らばってしまったのだ。取りに行くだけなら容易いんだけど
まずそれの行方を全部調べて、クラピカにリストを渡して、それから行動…となると
やはり時間も食うのである。まぁ調べるのは私じゃないから苦労してないんだが…


「………クロロ、そこ邪魔」

「あ、はい」


そう、難航している仕事にひぃひぃ言っているのは私じゃない。
たった今私に毒と舌打ち付属でガン飛ばしながら去っていった情報部隊のシャルだ。
数日間ずっと徹夜で頑張っていたのかパッチリおめめの下には隈、態度も普段のムカつくくらいの爽やかさがなく
むすっと顰められた表情にはいつもより凄みがあった。いや、むすっとか言うとちょっと
可愛く聞こえるけど全然可愛いとか思えないよ。マジ怖だよ。ぞっとするよ。
ていうか邪魔とか言われたけど私普通に端っこにいたんだけど。何故だ。
まさか視界に入る事すら煩わしいと…?いや、シャルのお陰で本当に助かってるんだけども、
今回の件が意外と大変だと知ったとき、多少の八つ当たりも許すつもりでいたけども。
その、いや、流石に怒るし泣くよ?私のメンタル舐めんなよこるぁ

…いや、泣いたら泣いたでさらに傷つくのは目に見えてるから簡単なことじゃ泣かない。
とくに今のシャルナークなら、泣いてる私にゴミを見るような目を向けたあと
「………チッ!はあぁぁぁ…!」と盛大な舌打ちとため息をくれるだろう。それかなりへこむ。怖いシャル。
仕方ないので何も言われないように本当に隅っこに行って、本を読むことにした。
ちなみにシャルはその間もずっとイライラしっぱなしであった。


「シャルナーク、おつかれさま」

「うん、パクもおつかれ」


…ん?皆には割といつもどおりなのに私だけにあからさまに当たりすぎじゃない?
違和感を覚えシャルをガン見してると睨まれたので慌ててそっぽを向いた。
そろそろ涙目になってきたそんな時、私のところへやってきたのは


「団長、」

「あ、フェイタン…今はあっちに行っていた方が」

「一緒にゲームするよ」

「ゲーム?」

「グリードアイランドいうね」


そう言ってカセットではなくゲーム機本体を
こちらに見せようと掲げたフェイタン。
グリードアイランド……あ、この前のオークションのカタログに載ってたやつ。
めちゃ高かったのでびっくりしたやつか。どうやって手に入れたんだ財力高ぇなフェイタン。


「奪たね」

「あ、そうですかーですよねー」

「このゲームなかなか面白そうね。やるよ」

「うーん…だが…」


ちらりとフラフラしてるシャルを見る。
今ゲームするのは流石に悪いなー…
それに確かグリードアイランドって始めたらなかなか終わらないやつじゃなかった?
それをフェイタンに聞くと頷いた。


「だめだ、これから仕事なのに」

「……チッ」

「す、すまない…」


私に聞こえるか聞こえないかくらいの音量でされた舌打ちに
思わず出た謝罪はスルーしてフェイタンは行ってしまった。
そこにちょうどフィンクスが通りかかったので呼び止める。


「フィンクス」

「?何だ、団長」

「フェイタンって、緋の眼盗りに行くの嫌がってたりしたか」

「………あー、」

「…………」

「確かに文句は言ってたぜ」

「…、そっかぁー…」


やっぱりなー、と溜息を吐く。
最初は納得してたじゃんよ………
じゃあ何を指令にしてほしかったんだ畜生…


「や、仕事自体は程よい規模で満足してるんだろうけどな。少なくとも植木よりは」

「植木ってそんなにダメだったのか…て、じゃあ何が不満なんだ?」


フィンクスは少し考えるような素振りをしたあと
淡々とその理由を述べてくれた。


「最初はあいつ、嬉しそうだったんだけどよ、シャルに聞いたんだ」

「…シャルがまた何か?」

「今回の指令、あの鎖野郎の為らしいじゃねーか。
団長をボコった鎖野郎の為に動く、フェイタンはそれが気に食わないんだと」

「!!……そっかぁ…、」


フェイタンの行ってしまった方向を見て思わず
口元が緩む。フェイタンって、何だかんだでやさしいよなぁ…話聞かないけど。


「や、それは団長にだけだと思うぜ」

「え…?どういう、あ!話聞かないのか!そりゃそうだ!」

「は?」

「え?」


私がフィンクスに続けて尋ねようとしたとき、


「終わったーーー!!!」

「!」


シャルの声がした。フィンクスと顔を見合わせ、とりあえずシャルの所へ行くと、
さっきと打って変わってにこにこしているシャルがいた。


「団長!緋の眼の行方、全部わかったよ!!」


はしゃいだようにそう言ったシャルが
紙を渡してきた。そこにはいくつもの名前と住所が書いてある。
ホントに全部わかったんだ…すごいや…


「さぁ、早速行こうよ団長!」

「え?これから?まずクラピカにこれ渡さなきゃ」

「あー…じゃあ夜に行くし、それまでに帰ってきてね。正確に言うと2時間で帰ってきてね」

「ええー」

「はやく電話かけた方がいいよ、あと1時間五十九分五十秒」

「まさかの2時間きっかり!?時間に厳しいのはウボォーさんだけにしてよ!」


シャルに急かされ慌ててケータイを取り出し
クラピカ電話をかけると、数回のコールですぐ出た。


「あっクラピカ!その、今から会えるかな!?リスト渡したいんだけど」

『クロロか。それはまた急だな……わかった、何処に行けばいい?』

「ほんと!急でごめん…えっと、」


クラピカに場所を言っている最中に
シャルが後ろで「調べるの大変だったんだから感謝してよねー」とか言ってきた。
それが聞こえたらしく、礼を言っておいてくれ、と後でクラピカに言われた。
クラピカ礼儀正しい………シャルめ…


こうして、ようやく旅団は動き出した。


130906
※不機嫌シャルの7割は主人公の被害妄想です



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