「す、すまない!長引かせてしまって…!!」


慌てながら申し訳なさそうにそう言ったクラピカは新鮮であった。
空には綺麗な月が浮かんでいる。今はすっかり夜であった。

ほんとに、ほんとに全力で連れ回された…
シャルの時と同じ位いっぱい歩いた…超楽しかったけど…
いや、まぁシャルの時もつまらなかった訳じゃないからそこは理解してほしい。うん。
いや、とにかく超疲れた…。


「いや…ほんと…楽しかった…おたがいさま…」

「大丈夫かクロロ…!?」


へらっと笑ってみせたら、余計に慌てたクラピカに
私のへらり顔ってそんな問題なのだろうかと少し不安になった。とにかくクラピカを安心させようと言葉を探す。
が、私はコミュ障であった。気のきいた言葉は浮かばない。ぼっち生活の長さの結果…!!


「ほっ、ほんとに大丈夫だ心配するなクラピ、…」


言いかけた時、ぽつり、と丸見えの我がおでこに水がかかった。まさかとおもい頭上を見上げたら、空から降ってくる無数の透明な粒。


「雨だ…」


クラピカが、静かに言った。絵になるな…きゅん!
じゃなくて。えっ何このタイミング。アジトまで距離あるし帰るの大変じゃん。
あ!タクシーとか使えば……

…アジトの場所ばれて皆に怒られるよなぁ…

そんなことを考えて内心慌てながらも真顔を保ち、
ぼんやり空を見上げていると、目に雨が入った。そりゃそうだ。


「クロロ」

「あれ、思ったより痛いし雨取れない」

「アジトまで遠いんだろう、私の寝泊りしているホテルにくるといい」

「え、うん」


目に入った雨が取れず、目をゴシゴシしていると、クラピカがガッと腕を掴んだ。


「えっあ、ごめん、実は聞いてなかった!」

「ああ、だろうな……あまりこすると、目に傷がつくぞ?」


私の方が背が高いので、向かい合うと必然的に
私を見上げる形になるクラピカが上目遣いでそう言って、勿論私はきゅんとなった。
えっ…なにこのときめく上目遣い…!可愛さと上品さと男前を兼ね備えたこの、史上最強の上目遣いは…!!


「?」

「あっその、でっ…ででで?さっき、なんて言ったんだ?」

「ああ…アジトまで遠いだろうから、私の寝泊まりしているホテルに泊まるといいと…」

「え、」

「もう少しクロロの話も聞きたいしな……嫌か?」

「あまり俺を舐めるなよクラピカ嫌なわけないじゃないか」


混乱した頭で返事をする。ん?ちょっとまて、お泊り?お泊りって言ったよな。
私の耳が正しく作動しているのなら、いまクラピカお泊りって言ったよな。私お友達のお家(ではない)に泊まるの現世ではじめてなんだけど…!!
26歳クロロ!!こんなに優しくしてもらった上に、こんなにお世話になってしまっていいのだろうか!?


「えっほんとに、いいのか?」

「ああ。それとも、雨の中走って帰るのか?」

「や、それは勘弁だけど…」


もごもご、としていたら、クラピカがくすっと笑った。
この人何をしても絵になるんだよなこれが。


「滑って転ぶ君が目に浮かんだよ」

「!?何で転ぶ俺を想像した、転ばないぞ!」

「わかったわかった。とにかく、付き合わせておいてそんな真似をするわけにはいかない」

「何なら今から猛ダッシュでアジトまで走ってここに帰ってこようか」


私の発言にクラピカがとんでもない馬鹿を見る目をしてきたところで、
私は素直に「お願いします」と頭を下げておいた。「よろしい」と言ったクラピカは良く見たらびしょ濡れだ。


「クラピカびしょ濡れじゃないか」

「ああ、クロロも」


いそぐのだよ。
そう言って掴んだままの腕を引いたクラピカは、はい。とんでもない男前でした。こいついくつだ。
私は26歳だけど、さりげなく腕を引くなんてそんないかした事やったことないぞ。

本当に、あなどれないわクラピカ…


140125


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