とある日の旅団アジト。
非常に素敵なことに、私にはこれといった仕事もなく(他の人々はもそもそと何かやっているらしいが)、私は久しぶりに平和な時を過ごしていた。
今日は何をしようか。そうやって暇な時間をどう潰そうか考えるのってこの世で一番の幸せだよね。忙しいなんて過労死してしまう、耐えられない。ああでも、真面目にあくせく働いてお金を稼ぐのなら、充実してていいかもなぁ……
私は盗賊の仕事が嫌なだけなのだ。働くなら本屋。もう面接行ってこようかな。行ったもん勝ちかな。

あ、本屋といえば。


「そういえばフェイタン、この前クラピカと行った本屋にフェイタンが好きそうな本があったぞ」

「……!」


すこし離れた所で本を読んでいたフェイタンがこちらを向く。
私が続けて口を開こうとすると、その前に近くにいたシャルが「また鎖野郎と出かけたの!?」とぽこぽこ怒り出した。
やべぇめんどくせぇとか思って私がそれをあー…と濁していると、少し考える素振りをしていたフェイタンが口を開いた。


「興味あるね」

「お、そうか」

「団長あんだけボコボコにされたのにまだ懲りないの?」

「(む、無視無視…)こ、今度行ってみたらどうだ?」

「どこの本屋か」

「えっとな」


私が説明している間もジト目してくるシャルは無視して
フェイタンに場所を教えると、フェイタンはしばらく黙って
それから私の顔を見た。


「団長今ひまか」

「ああ、ヒマだけど…」

「……」

「?」

「…案内してほしいね」

「!!」


思わず口がぽかんとアホみたいに開く。
フェイタンとおでかけ……!ち、ちょっとたのしそう…!
ていうか誘われるなんて!!あれ、これ誘われたってことでいいの!?いいよね!


「え、あ、勿論!」


私の答えにフェイタンは頷いた。私も同じように頷いておいた。
ようやく諦めたらしいシャルが「じゃあ俺は作業でもしてようかな」と行ってしまって私はもう一度頷いておいた。一安心である。
最近のシャルなんだか妙にめんどくさいよねー…。


「団長」

「あ、いこうか、」

「早くするよ」

「おっああ」


ぐいっと加減を知らない力で袖を引かれてつんのめりながらも、何だかうれしくて
低い位置にある頭を撫でたくなったけど、そんな事したら私なんて瞬殺惨殺、さいあく拷問されてしまいそうなのでやめた。
自分がされる想像したらかなり怖かった。怖いどころじゃない。爪剥がされたところでもう必要以上に叫ぶよ私。

その日はフェイタンとあちこちの本屋を見て回りました。
たのしかったです。作文?


◆◇◆


翌日。


「団長!!」


みんなが出払ってしまい、一人でフェイタンと買った本を読んでいると、
シャルが素晴らしく爽やかな笑顔で近づいてきた。勿論警戒する。その笑顔はろくな事じゃないに決まっていた。


「俺も俺も!」

「………ん?なにが」

「新しいパソコン欲しい!から案内してよ」


にこにこにこにこ。
…いやいや、パソコン買うのは大いに結構だけど、
シャルのが電化製品系は詳しいだろ、私いらんだろ。


「一人で行けよ、全く。女じゃないんだから…」

「えー、フェイタンはいいのに?」

「フェイタンはいいの!道知らなかったんだし」

「絶っ対知ってたよ」

「フェイタンはお前とはちがう」

「それ幻想だよ。ヒソカが言ってただろ。変化系は嘘つきって」

「おま、ヒソカの名前をだすな」


あいつ名前出したら出てきそうじゃん!やめろよ!
私が一歩後ずさると、シャルは顎に手を当てて
考えるポーズをしたあと、やっぱり笑った。


「うーん、なんでも良いからおごってよ」

「それが目的か!!やっぱりろくな事ない!!」


私は叫んだ。つまり遠まわしに拒否した。
ノーと言えない日本人魂である。しかしシャルがそれを分かってくれるはずもなく。
シャルはちっと舌打ちをしながらス…とアンテナを出してきた。操る気!?!?


「え……いっ……行くよ!!しょうがないなー!!」

「アハハ、冗談だよ。俺がそんなことするわけないでしょ」


さっ行こうクロロ。
そう言って上機嫌でにこにこするシャルに一日中つれまわされ
へとへとになりながら荷物持ちをする羽目になるのを私はまだ知らない。


かくして、一週間の奮闘記が幕を開けたのだ…!!


つづく
130915


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