ここに来てから数日がたった。
私は毎日何をしているかというと。鎖野郎の家の一室でぼんやり天井の模様を眺めています。
それしかやることがない。だから、今だって天井の細やかなざらつきを眺めていた。
せめてこれがなんか、モロッコ風的なのとかタイルとかの面白い天井だったらよかったのに…ただの白い天井だから、なんにも面白くないし、ほんの少しの暇つぶしにもならなかった。
それでもしばらく眺めていると時間もたち、お腹がすいてくる。私はよっこらせと立ち上がり、扉に向かった。

ここに来る前は毎日たこ殴りにされるものだとばかり思っていたが、この家は実に平和だ。
拷問もされなかった。一度気になって、拷問しないのかと尋ねようかと思ったけど、空気を読んでやめた。
鎖野郎の目を見る限りこうだ。───私は貴様らのような外道な真似はしない。

ガチャッ!



「私もしない」

「…何をだ」

「あっ!いえなんでも」



ドアを勢いよく開けると、廊下を通り過ぎる鎖野郎と鉢合わせた。独り言聞かれた…!
私は気まずくなって目をそらす。鎖野郎はそんな私にそれ以上何も言わずため息をつくと、玄関の方へ歩いていった。今日もでかけるようだ。組織に身を置く人間は大変だなぁ。
そういえばネオンちゃんは、ネオンちゃんはどうしてるだろう…ちょいちょい能力発動させちゃってたけど、お仕事の邪魔になってないだろうか。
鎖野郎にそれを尋ねようと口を開く。しかしその時には、扉のしまる音がしていた。



「…退屈すぎる」



平和だけど、退屈過ぎて死にそう。
もともと引きこもりだったからこの生活が滅茶苦茶嫌とは思ってないけど、せめて本、本が欲しい…!
いやそれは贅沢だ。でも、でも毎日何もないなんて。尋問すらないんだけど。置物のように放置されてるんだけど…二度目の人生ではじめてここまで置物の気持ちがわかった…
みんなは今頃どうしてるだろうか。今日も元気に盗賊ライフを送っているのかな。緋の眼あつめてくれてるといいんだけどな…

なんかゲームとかやってそう。



「…ああ、お腹すいてたんだった。」



本来の用事を思い出してドアの横に目をやる。
今日のご飯がおいてあった。



「やったー!!今日お米だ!!」



お盆にのってる白米をみた瞬間嬉しすぎて小躍りした。いやーうれしい!白米うれしい!
そのままくるりと一周回ったところではっと我に返った。監視カメラが有ったら恥ずかしい。やめよう。
いやぁ…でも踊ってしまうのも仕方ないよ。だって白米ってだけでもうれしいんだけど、まず鎖野郎のところのご飯美味しいんだよね、コンビニ弁当よりずっと美味しいんだよね。
私は毎日、1日二度(たまに存在を忘れるのか一度)のこのご飯だけは楽しみにしている。
退屈だが、こんな楽しみもあるので私は人質ライフを何だかんだでエンジョイしているのかもしれない。

エンジョイで思い出したけど、今回の私の罪は冤罪なんじゃないかと最近思い始めている。
鎖野郎が私に尋問もせず決めつけてるので弁解ができないが、とにかく鎖野郎の顔にも緋の眼にも覚えがなさすぎるのだ。
それか記憶障害なのかもしれない。私も流星街の価値観に染まってきてしまったのだろうか。
だとしたら、弁解の前にまずぎりぎりまで思い出すことに専念するべきだよなぁ。

ご飯もくれるし願いも聞き入れてくれたし、鎖野郎は悪い奴ではないのだ、きっと。
だから私も私なりに誠意を持った態度で対応していきたい。もし本当に悪いことをしていたら、確かにこんな軽い態度でいられるのは腑抜けててムカつくだろう。殺したくもなる。
だからこれからはなるべく気をピンと張って、それからこの退屈な時間を使ってなんとか思い出して、
思い出せたら謝って、それから、私はもうお願いは取り消して鎖野郎の好きにさせよう。

とにかく次あったときは誠意ある態度だ。
ご飯を食べながらそう思った。

150915


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