私の想像通りだったゾルディック家の広いお風呂を堪能し
ハイテンションで廊下を歩いていたら、


「あ」

「……あ」


私を見て小さく声を漏らしたあと
しかめつらでこちらを見つめているきみは…確かみるき!!!


「……な、なぁ、」

「………」

「…トランプやらない?」

「……は?」

「そこにいる着物の子も一緒に」

「!!」


さっきから気配がしたのでここぞとばかりに向こうの壁に話しかけると、
ものすごく不機嫌と言った様子の着物の子がでてきた。ふっふっふ、バレないと思ったのか。
私だってなんの理由もなしに団長に適任されてるわけじゃないしそこそこ強いといいのになぁ。


「やってもいいけど、僕トランプ強いよ」

「えっ…そんな、俺弱いぞトランプ」

「そんなこと言って負けたらどうす……え?」

「…じゃあ、お菓子あげる「負けたら僕のいうことひとつ聞いてよ」…死ねとかなしだぞ?な?」


カルト君は「そんなこと言わない」と頷いた。
ならいいか。と私も頷くと、視界の隅に逃げようとしているミルキー君発見。


「きみもやろうか」

「いやだうわっ!!」


逃げようとしたミルキー君を捕まえ大満足で頷いたとき、なんだかシャルナークを思い出した。
あいついつもこんな気分だったの?超むかつくじゃん!


***


28。この数字が何を指すかお分かりだろうか。
私の負けた数である。
カルト君は、初めに勝ったあと
“ここじゃ言えないお願いを叶える約束”を取り付けて、余裕の表情で
悔しがる私に再戦してあげてもいいけど。と笑った。このやろう。やろう?
そしてそこから怒涛の32戦。一応4回勝った。それ以外は負けた。なんなのこの比率…。

そんなこんなで、疲れきった様子のカルトとミルキーにうまく逃げられてしまった所でトランプは終了。
次はUNOでもやる?とイルミに言ったが却下されたので、私はようやくごろんと広いベッドに寝転んだ。
イルミはそんな私を見て、何故かふぅ、とため息を吐いた。


「クロロの最初のイメージ完全に崩れた」


イルミはそう言い残し電気を消した。予めつけておいた枕元の灯りだけがぼうっと光っている。
イメージ崩れたって、まぁ…そりゃあそうかもだけど…これが私の本性である。
もう隠すまでもないだろう。それでも泣かないし私って言わないだけ、イメージ保ってると思うし!

開き直って一人頷き、暗くなった部屋を改めて見渡す。
いつもと違う空間で寝るときの、電気を消した瞬間のわくわくそわそわはやっぱりたまらない。
それはわりと全国共通な上、いくつになってもそうだから不思議だ。
私は上機嫌で、隣に座ってぼんやりしているイルミにつぶやいた。


「ほんとうに修学旅行みたいでなんだか懐かしい」

「だから、何それ」

「昔、同い年の子が沢山集まる場所でな、あった行事だと思うんだ。もうずっと前だからほとんど覚えてないんだけど、皆でカレー作ったり火を囲んで踊ったりしたんだよ」

「なんの儀式?怖いね」

「怖くない、今度イルミもやろう。そうだ、今度旅団でもやろうって言ってみようかな」


そう言ってから、旅団では私の提案は大抵聞き入れて貰えないことを思い出してへこんだ。
いつだったか川の字になって寝ようって提案したけど無視されたし……


「や、やっぱりイルミとやろう」

「やだよ」

「そんな!あ、じゃあ今度ゴン達も呼ぼう!キルアきてくれるぞ!」

「え、キル?」

「うんうん、それならいいでしょ」

「いいよ」

「俺の時はそんなあっさり頷いてくれないのに…」


これがキルちゃんパワーですか!!偉大!!
というか、言ってみて思ったんだけど私がキルちゃんとか言ったらキルアは「キモ!」っていうだろうな。
今度言ってみよう。


「旅団でやればいいのに」

「それ思ったんだけどな、無理なんだよ。あいつら全然俺の話聞かないから…あ!いや、ちょっとは聞くよ?一応威厳はあるから」

「そう」


うつぶせになって肘をつきながら
旅団についていろいろ話す。シャルが最近束縛強すぎなこと、ヒソカが相変わらずきもいこと。
みんなは少しずつ話を聞いてくれるようになったけどやっぱりたまに無視してくること。
イルミは何も言わずに聞いてくれた。もしかして聞いてないのかなーとも思ったが、まぁいいか。


「それでさー…」



ぽふり

突然自分の頭に何かが触れて、驚いて横を見ると、
イルミが手を伸ばして私の頭に触れていた。
つまりいい子いい子されていたのだ。驚かないわけが無い。26歳にいい子いい子は絵ヅラ的にきつい。
ていうか、あのイルミが、キルア以外の頭をなでる…だと…


「…ぃ、いるみ……?」


心なしかぼんやりしているように見えるイルミに、冷静を装いつつ恐る恐る声をかけると、イルミはその光のない目に私を映した。
この目、ホントはちょっと苦手だ。見てるとたまに無性に泣きたくなる。


「ん、あれ?」

「…え」

「俺、クロロのこと撫でてた?」

「え、うん……」


小さく頷くと、イルミは少しだけ眉を顰めて手を引っ込めた。そしてその手を数秒見つめたあと「うわ、」とか声をあげて服でゴシゴシしはじめた。


「えええ!?ひど!拭うな!」


自分からやってきたくせに理不尽すぎるだろ!私不憫!
憤慨していると、イルミはこてんと首を傾げた。
なんでだ。怒るに決まってるだろ。自分悪いですかみたいな顔やめろ。


「クロロさぁ……」

「なんだよ!」

「…いや、なんでもない」

「なに!!」


煮え切らない態度のイルミに「言いたいことがあるならはっきり言え」と言っても返事もしない。聞く耳持たずとはまさにこのこと。腹立つ。
それにしてもだ。何だか今日のイルミは変だと思う。いや、私を雑に扱うのはいつも通りなんだけど、そういうんじゃなくて。

気になって私がなになになんなの、と
しつこく聞き続けると「はいはい消灯。」と枕元の電気も消されて誤魔化さてれしまった。
なんだそれ。気になるじゃないか。言ってくれよ。


「…ねぇ」

「だからー…なに?」


「旅団とかたのしいの?」


急に問いかけられて、理解するのに一瞬遅れた。
というか、結局言うんかい。拍子抜けしちゃったよ。
イルミは聞いたくせに興味なさげに長い髪をいじっている。
でも返事は聞こうとしているようで、早くしろ、というように視線を投げてきた。


「うー、ん…?…まぁまぁ、おれは、きらいじゃないよ」

「ふーん」

「それに、楽しい楽しくないじゃなくて団長は俺にしか務まらないから!」

「へえ」


いいこと言ってやったにもかかわらず、終始髪をいじりながら興味なさげに返事をしてきたイルミに
流石に本気でビキビキってなった。お前が聞いたんだから「そうなんだ!流石クロロくん!」ぐらい言えよ!!何なんだよ!!


「ぐぐ…じゃあイルミは暗殺たのしい?」

「うーん…さぁ?わかんない」


たのしいよ、ってかえってきたら
ふーんって返すつもりだったのに。
返ってきた答えは予想外に曖昧だった。


「……てっきり楽しいって言うとおもった…」

「勝手に決めないでよ」


そう言って、ふいっと猫みたいにそっぽを向いたイルミを見ながら、イルミにも色々あるんだな、なんて今更当たり前のようなことを思った。
そうして会話もなくなってしまったから、気まずくて小さくおやすみと言って目を閉じると、またふわりと頭に何かが触れて。
もどかしい気持ちになったけれど、「どうかしたの」と聞いても、きっと手を拭われてしまうだけだろうから
目は開けないで、撫でる手に少しだけ擦り寄ってみせた。


(いつかちゃんとイルミのことを知って)
(友達になれたなら)
140606


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