逃げるイルミを追いかけて追いかけて
気がついたら飛行船に乗って船に乗って
パドキア共和国まで来ていた。
いやいやいや…!イルミ速すぎ!!暗殺者こわい!!ヨークシンからパドキア共和国までものすごい距離あるよ!
なんで一回も追いつけないの私…か、体なまってるからだよね…!うん!!そうだと思いたい…
そんなこんなでパドキア共和国に足を踏み入れた後もまた、走って走って、山を登って。
そこで一度だけ追いついたが針を出され投げつけられて、よけて、その間にイルミはとうとう捕まることなく無事に帰宅を果たしてしまった。
当然ここまで来てそれで済ますわけには行かない。試しの門とかいういつみても腹の立つ門を突破し、屋敷に侵入。
躾のなっていない獣に追われながらも、なんとか廊下を歩くイルミに追いついた。
「つっ…つかまえ、た…!!」
「うわ…まだついてきてた…」
「もううわって言われても傷つかないぞ!さあ写真を渡すんだイルミ」
「ただいまー」
「無視するな、写真を渡せって…」
いつものように私の言葉をスルーしてスタスタと廊下を進み、部屋に入ったイルミにてくてくついていく。
イルミは私を1度ちらりと見たが、とくに追い払うこともせず椅子に座って本を読み始めた。
「…ちょ、写真…」
「…………」
都合の悪いことは聞こえない便利な耳を持っているイルミはだんまりを決め込んだ。というか本を読むのに集中し始めた。
はぁ、とため息を吐き、私はいちど辺りを見渡す。あまり生活感のない静かな部屋だった。
「………ここ、イルミの部屋?」
「ん、まぁね」
イルミはこちらに見向きもせずに淡々と答え、ぺらりとページを捲った。ここがイルミの部屋か。なんというか、イルミらしいと思う。
「イルミー」
「…………」
「はぁ……」
やる事がなくてイルミをじっと観察してみる。
時折はらりと落ちてくるサラサラの髪を耳にかける動作にoh…色気…なんてぼんやり思った。
いいなあれ、私も髪伸ばしてみようか。…いや、私は似合わないわロン毛。想像したら笑えてくるくらい似合わなかった。笑った。イルミには無視された。
「なにわらってんだよー」くらい言ってよ…一人で笑うとか恥ずかしいじゃん…
ああ私の知り合いでそうやってノリよく話してくれるのなんて片手で数えられるくらいしかいないか…
それにしても読書イルミほんとに絵になる。自分が読書好きだからか、わざわざ本を読んでいる人間に
これ以上写真寄越せとか言って邪魔する気も起きず、結局イルミが本を読み終わるのを待つ決断に至った。
それから、タイミングをつかめないまま3時間。
「ん…クロロまだいたの?」
「えっ!あ、読み終わった?一冊読むのに時間かかるな…」
「まぁこれ二冊目なんだけどね」
「えっそうなの」
本変えるタイミング見逃してた…!いつだ…!?
一人混乱する私に、イルミはふぅと一つ息を吐いた。
「で?いつ帰るの?」
「えっ…いや、だから写真…返してもらわないとなって」
「しょうがないな…」
イルミは本を置いて立ち上がった。
もう写真は返って来ないと思っていたから若干驚く。
イルミも話せばわかるやつじゃん!そうだよ!
そりゃあヒソカよりは通じるに決まってるし!
聞いてくれないなんて疑って申し訳な…
「夕飯でも食べてく?」
「え」
「だから、夕飯」
………
「いらないならいいけど」
「いただきます」
答えると、イルミはじゃあついてきて、といって
部屋を出る。私も何も言わずについていくことにした。
あれ…どうしてこうなったんだっけ…
140402