>> 押しに弱いぼくっことレイザーさん

【今日からゲームで暮らします】



キルアが絶望したような暗い表情でぼくを見る。
相変わらず大袈裟だなぁ。と思いながら、ぼくはキルアの言葉を待った。
キルアがゆっくり口を開く。


「…ほんとに行くのかよ……」

「…嘘だとおもった?」

「嘘だといいと思った」

「もー、またキルアったら…」


変なことをいうキルアに隣にいたゴンは眉を下げて
珍しくあきれたように笑った。他の人といるときとは逆の立場。
いつも思うけど、何でだろう…


「俺じゃねぇよ!心配かけるこいつが悪い!」

「ぼくは大丈夫だよ、キルア…」


ぼくがそういって宥めてもキルアはすごい顔をして、
ゲームが嫌になったら誰かに“離脱”のカード貰えよ?なんて言った。
押しに弱いというのはみんなにたくさん言われてきたから自覚済みだけれど、
“離脱”のカードを誰かにもらわなきゃいけないくらい弱くはないんだけどな…
ううん、そんなのキルアも知っているんだろう。それでも何でか心配してくれてる。


「うん、わかった。キルア、心配してくれてありがとね」


ゲームの中に住むというだけで、別に戻ってこれないわけじゃないのに。
こうやってわざわざ時間を削って、心配して見送りに来てくれる人がいるんだ。

ぼくは、いい友達をもったと思う。
ぼくがにっこり笑ってお礼を言うと、キルアは照れたようにそっぽを向いた。
相変わらずで少し笑ってしまう。そのまま今度はゴンに向き直った。


「ゴンもありがと…いそがしいのにわざわざごめんね」

「俺たちが来たかっただけだよ、なまえは友達だもん!
しばらく会えないのは寂しいけど、ゲームの中でも頑張ってね!」

「うん、ゴンもがんばって!」


太陽みたいにわらったゴンと握手をかわすと、
隣でそっぽを向いていたキルアも「ん、」と手を出してきた。
それが何だかおかしくて、くすくす笑いながら握手をすると、
そのままキルアはぼくの手をひっぱって、


「…これ、やるよ」


そういって、キルアがどこからともなく取り出しぼくに持たせたのは、
大量のチョコロボくんだった…………








「と言う感じで、キルアがたくさんお菓子をくれたんです」


ぼくがたくさんのチョコロボくんを抱えて
よたよたしながらレイザーさんの元にたどり着くと、
レイザーさんは少し驚いたように片眉をあげた。
そして運ぶのを手伝ってくれながら、ぼくの説明を何も言わずに聞いてくれた。


「ほう、そうか」

「はい!そ、それで…その、」

「なんだ?」


わざわざぼくの目線に合わせてしゃがんでくれたレイザーさん。
何だか目を合わせるのが恥ずかしかったけれど、しっかり目を見て
ちょっとだけ勇気をだしてダメ元で言った。



「ひ、ひとりじゃ食べきれないので…その、あとでいっしょにたべましょう」



そうしてチョコロボくんを差し出しながらレイザーさんに笑いかけると、
レイザーさんは大きな手をぼくの頭にやさしくのせて


「……ああ」


と言った。うれしくてぼくがもっと笑うと
レイザーさんは少しだけぼくの髪をくしゃっとする。
恥ずかしくて手で髪を直していたら、レイザーさんはちょっと笑った。
…かっこいい。


「…えと、これからよろしくおねがいします」

「ああ、よろしく」



ぼくの大切な友人へ

ぼくはこれからの生活が、すごく楽しみです。
ふたりも元気で頑張ってね。


130805
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