>> 学パロフェイタン
【男主】


授業中だというのに廊下をずかずか無遠慮に歩いていく小さなかげをこっそり後から追いかける。
しかしまぁ小さいくせに速いです。なぜだ、歩幅はこっちのが大きいぞこら。何故こっち駆け足。


「おい」


ひたすら追いかけていたら目の前の自分より小さな男は、ぴたりと立ち止まり
くるりと振り返ると不機嫌そうな顔でそう自分に声をかけた。だから自分はとびきりの笑顔で答える。


「なにかな」

「何かなじゃないよ、お前何故ついてくるか」


かなり苛立ったようすで睨みあげてくるこの目つきの悪いちびおのフェイタンさんは
とってもキュートでマイペースな不良である。因みに俺は誠実で協調性のある優等生だ。


「今授業中ね、お前なにしてるか」

「フェイタンこそ授業中だけど何してるの?」

「私が何してようとお前には関係ないね」

「そういえばフェイタンこの前珍しく帰りのHR出たとき
終わったらすぐ帰っちゃったけど何してんの?追いかけようとしたのに」

「別になにも」

「そろばん塾?」

「ちがう」


とうとう此方に見向きもせず歩くスピードを速めたフェイタンに
駆け足でついて行くと屋上に繋がる扉の前についた。不良が屋上とかまたベタな。
ていうかここ立ち入り禁止だし鍵かかってるよ。そう言おうとした瞬間
当然のように鍵を取り出したフェイタンに唖然。どうしてもってる。


「お前暇なら飲み物かってくるよ」


こちらを見ないでそういったフェイタンだったが
俺は当然飲み物は買ってこない。フェイタンの隣に少し距離をあけてすわった。


「フェイタンと話すから暇じゃないんだ!」

「………」

「ねぇねぇフェイタン」

「………」

「なんでいつもマスクしてんの?」

「しゃべるな」

「そんなぁ…」


わざとらしく体育座りしてうずくまると、フェイタンが
こっちをみた気配がした。しばらくそのままにしているとフェイタンが口を開く。


「何故お前いつも私に絡むか」

「………」

「優等生は黙て授業うけてるといいよ」

「……」

「とうとう一緒に授業までさぼるとはどうかしてるね」

「………」

「…何が目的か」

「……なんだろ」

「……」

「なんでだろうなー……なんとなく」


実はフェイタンがただ単に面白そうで可愛くて
からかうのがちょっと楽しいからとかは言わない。絶対殴られるから。
そうして理由をぼやかした俺にフェイタンはなにも言わなかった。
ちょっと影のある優等生って受け取ってくれたのだろうか。


「……勝手にするよ」

「(いよっしゃぁぁああ)」


小さな声で俺の行動を認めてくれた(恐らく)事に対し
こころのなかでガッツポーズを決めているとフェイタンが
でも、と付け加えた。言葉をまつ。


「………」

「……授業は出ろ、優等生」


俺は顔をあげた。


「………あれ?デレた?」

「殺されたいか」


ものっすごい目をして俺を睨みつけたフェイタンは本気だった。
もう照れとかそういうんじゃなかった。ほんとに、まるで凶悪犯罪者の目である。
一体何をしたらこんな目できるの……怖いよ……
まぁあれだ。初めてしつこく絡んだ時よりはマシだ。
あの時は何も言わずにぶん殴られたし。痛かったなぁ……。随分進歩したな。
何故俺がこんな苦労してまでフェイタンに付き纏うのか。
可愛いとか面白いとか楽しいとか、それもそうだけどそれだけじゃない。
ついでに言うと、俺はフェイタンとトモダチになりたかったのだ。



***



放課後、またまた珍しく帰りのHRに出席したフェイタンが
やっぱり一番早く教室をでたのをバッチリ目撃した俺は
こっそりとそろばん塾に向かっただろうフェイタンを追いかけた。
バレないように距離をとって進むと、フェイタンは昇降口には向かわず
また、屋上の方に向かっていく。

あれ、そろばんは……?
結局引き返さずまた鍵を取り出して屋上に入ってしまったフェイタンに困惑する。
しかしいつまでも此処にいても意味がないので、意を決してドアを開けようとした。

ガチャン


「……ん?」


すんなり開くことを想像したが、どういうわけか開かない。
まるで鍵がかかってるみたいな……


「ま、まさか……」


これむこうからも鍵かけられるの?!
待って、鍵かけてフェイタンは屋上でなにしてんの…!?
……こ、これは、


「女の子と逢引…!?」


なんだと!?!?そんなこと非リア充代表の俺がゆるさん!
放課後学校でおんなのこと二人きりでイチャイチャするなど…!!
当然邪魔してやる邪魔したる…!!


「おりゃああああのみかるぎゃん!!!」


がしゃーん
叫ぶと俺は扉に渾身の跳び蹴りを入れてやった!
ちょっと古めだった扉はまるで俺を中に招き入れるかのようにすんなり開く。
そのまま中に飛び込んだ俺は華麗に受身をとって着地した。


「ふぇいたーーん!!!そろばんはどうしたーー!!!」


そういって顔を上げてみると。
そこには思いのほかたくさんの人が…


「あ、あれ…」


しかも皆さん不良っぽい…
そんなかなり怖めの皆さんの視線が一気に俺に突き刺さる。


「こ、こんにちはー……」

「っおまえ…!」


聞き覚えのある声の方を見てみるとフェイタンさんが驚いた顔でこちらを見ている。
や、ちょっと怒ってる…?


「そろばんなんてやってたの?フェイタン」


近くにいた可愛いメガネッ娘がそうフェイタンに問いかけ、
背の高い金髪オールバックのヤクザみたいな奴が鼻で笑った。
フェイタンは不機嫌そうに顔をしかめる。


「お前、私違うと言たはずよ」

「え、なにが?」

「そろばん」

「そうだっけ…あはは、そうみたいだね!」


おもわず笑い声を漏らすとフェイタンは目をいっそう鋭くさせた。
しかしその目には慣れているので笑うのはやめない。俺は屈しないぞ!
そう決意を新たにしていたら、少し高いところにいた恐らくここのトップであろう
黒髪オールバックの奴がやっとしゃべった。


「フェイタン、知り合いか?」

「別に、ただのクラスのアホな優等生ね」

「優等生なのにアホなのか」

「確かにアホそうだね」

「アホではないフェイタンの知り合いの優等生だよ」

「で、なんでここにいるんだ?」

「ちょっとリア充を撲滅しに…」

「リア充?」


皆さんが首をかしげながら一斉にフェイタンをみる。
フェイタンは不機嫌そうな顔を崩さぬままため息を吐いた。
明日俺死ぬかもな…


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