夢を見た。
物悲しい旋律。
美しい声で音を紡ぎ出す。
泣き出しそうな顔で歌ってる。
愛していると叫んでいるのに。
彼女は、誰を愛してる?
窓はない。
時計もない。
大きなベッドにテーブル、そしてテーブルに乗せられた花瓶には一輪の薔薇。
それは、青い色をしていた。
そして花瓶で押さえるようにメモ用紙が挟まれており、花嫁へ、と書かれていた。
これは俺への献上品がなんなのかわからないけど、不気味だし怖い以外に感情が浮かんでこない。
どう考えてもあのメモを送ってきていた相手、紅の敵だろうとゆうのは想像がつく。
大人しくしていたのに、何故急にこんな強行手段にでたのだろうか。
唯一この部屋から出る手段の小さな扉。
鍵は外からしかかけららないようで開かない。
扉は広い部屋に似合わない小ささで、窓もないし地下にあるのかもしれない。
ならばここは牢獄的なもので隔離するためのところだろうか。
だいたい部屋の間取りは掴めた。
と言ってもここから逃げる手段などは見つからなかったけど。
一度ベッドに座り込み、深く息を吐く。
どうやら想像以上に精神はギリギリだったらしくて震えが止まらない。
何度か深呼吸を繰り返していると、ふいに喉の渇きを覚える。
水が欲しい。
でもここにはない。
出れば見つかるかもしれない。
だけど出れない。
目を伏せ、身体を抱きしめる。
空調が効いてるからか寒くはないのだけど、身体の奥底、心臓が凍りついてるようだ。
これからどうしようかと、じわりと涙が滲みそうになったその時、扉が開いた。
「お初にお目にかかります、愛子」
「・・・だ、れ?」
「クリウスと申します。王に仕える者とでも言いましょうか」
「王とは、」
「神咲紅ではないですよ」
「意味がわからない」
「次期に王が挨拶に来られます。その時に、また」
ここに誘拐されてきて、初めて会った相手。
吸血種か人間かはわからない。
正直この状況だったり、喉の渇きで何も考えられない。
クリウスと名乗った年配の男に水を頼んで、一人にしてもらう。
慇懃な態度っぽいとも思うのだが、普通に俺のことを敬ってるとでも言えばいいのか、そんな気もした。
だけど答えは出なくて、暫くして持ってきてくれた水を飲んでベッドへ倒れこむ。
そのまま天井を眺めていたのだが、ふいに吐き気が襲ってくる。
胃の中がムカムカして、頭がいたい。
誘拐された時のように首筋や頭も痛くなって、視界がゆがむ。
もしかしてあの水に何かいれられたのか。
でも俺は花嫁。
だから大丈夫、なんて言えない。
俺は、吸血種に蹂躙される生贄となるのか。
死ぬのか。
どうする、怖い、怖い。
本能的な恐怖で身体が激しく震え、ついにキャパオーバーとなったのか涙が溢れた。