空に散りばめられたキラキラと輝く星々。
手を伸ばせば届きそうで、一つ欲しいと呟けば紅が取ってきてくれそうな気さえした。
楽しい時間は早く過ぎてしまうとよく言うが、本当にそれで、既にあたりは真っ暗闇。
もっと外で遊びたかったとおもってしまう。
だけど久しぶりに外に出れて、いい気分転換にもなったし本当に楽しかった。
「今日はありがとね」
「いつも我慢させてるからな」
その気持ちを伝えると頭を撫でられ、もう一度星々を見てから車へと入った。
今日の最後は丘にあるレストランでディナーを楽しんだ。
普段ディナーなんてオシャレな単語使わないけど、夕飯とか言うのが失礼なぐらいに雰囲気も良く、料理も美味しかった。
この場所に到着した時、既に辺りが暗くなり、一軒家のような外見をしていたので最初は不気味に思ったけど、蝋燭で火を灯したらそんなこと思わなくなった。
真っ赤な蝋に、明るい黄色が揺らめく風景は幻想的でただただ美しかったことは忘れない。
車が出発するその前にも名残惜しくて振り返ってみる。
しかし蝋燭の火が消されたのか、レストランの輪郭すら見ることもできなかった。
幸せな気分のままに眠りにつき、はしゃぎ過ぎたせいかお昼まで寝てしまった。
どうやら紅は既に起きているらしくて、隣には熱すら残っていなかった。
着替えて温室へ向かう。
途中であったメイドさんから紅はお仕事だと聞き、ご飯を頼んだ。
熱い紅茶で目が覚めて、美味しい料理で心が弾む。
このままでいれたら、それもそれで楽しいのではないかと思ってしまった。
一回部屋に戻って本を持ってこようと、腰をあげる。
メイドさんに頼んでもいいけど、少しは動かないとデブになるし寮に戻った後が怖い。
そうして部屋へと戻ったのだが、テーブルの上に本を置いたはずだったのがなぜかベッドの上にあり、困惑しながらそちらへ向かう。
なんでとか思わないでもないのだが、寒い廊下を歩いてきて、少しの時間だったのに身体が冷えた。
だから早く温室へと戻りたい。
寒い中働いているメイドさん達には申し訳ないけど、貧弱な人間なんですよ。
そうして普通に本を取るつもりだったのだけども。
冷たい空気と瞳に、拘束される。
ベッドに縫い付けられるように掴まれた腕。
なんて冷たいのだろう、体温はあるのか。
突然の衝撃に、目を見開く。
あまりにも素早く、一瞬ですらなかったと思ってしまうぐらいだった。
心臓が早鐘を打つ。
痛い、痛い、苦しくて、呼吸ができない。
すると、そいつは何故か拘束を解いてくれた。
目の前の男がその手を使い俺を拘束していたのだが、どうしたのだろうか。
思わず考えてしまうと、男の長細い指が本を指差す。
逃げ出したり声を出せばいいものの、異常な雰囲気にやられたのか俺は本を手に取ってしまう。
本に触れたからといって、なにも起きやしない。
首を傾げ、パラパラとめくってみると紙が落ちてきた。
これは例のアレかと思い、メモを手に取る。
男は俺の行動を黙って見つめたままで、何も言わないし拘束もしない。
ここで逃げればいい、ようやくそれに気がついたのだが、興味は今手に持っている紙に向いている。
俺も男を見つめて、この密室の中で見つめ合うとゆうなんだか不思議なことになる。
暫くそのままでいたのだけど、その鋭く冷たい目に萎縮してしまい、そっと目をそらす。
そうして手に持っていたメモへと目を移す。
いつも通りと言えばいいのか、薔薇の模様が描かれたメモ用紙。
書かれていた言葉は、
『迎えにきた』
咄嗟に顔を上げた瞬間、首筋が燃えるように熱くなり、痛みがはしる。
そのあまりの熱と痛みにクラクラと視界が眩み、過呼吸のように息を求める。
ふいに熱が引き始め、それと同時に意識を失った。