3

私はユリウス。

彼はリカルドゥス。

これは、愛し合わない王と花嫁のお話し。


よくわからない力を持ったお姫様は王様と結ばれて、護られて、これで物語は終わり、ハッピーエンド。

嘘よ、何がハッピーエンドよ。

だけど私は護られなければ生きていけない。


あのよくわからない事態から、一週間。
宝具を付け、老婆に、ソフィアに私の力の事を聞かされていた。

嬉しかったわ。
あんなコトが起きて、外へ飛び出した私はそれから家に帰れていなかった。
そうしてやっと家に帰れることになったの。

家族に会えば、心がキュッと締め付けられる
心が一杯で、溢れ出してしまったの、涙としてね。

それからソフィアが事態の説明をしてくれたわ。
何一つ変なことも言わなかったわ。

でもね、ママとパパは幸せになれて良かったねって言うの。
不思議よね、私が愛していたのはあの人だけなのに。
だけどリカルドゥスと結ばれることは運命で、必然で、当然だと言うの。

私が愛したあの人は、そんな運命の下敷きだったのかしら?
私が本当に幸せになれるのはリカルドゥスと結ばれることだけだから。

契約まで交わし、あの日まで家族ぐるみで仲良くやっていたのにね。
彼らのことは丸ごと記憶から抜け落ち、只管に私とリカルドゥスの幸せがどうのこうの語るママとパパ。
私とあの人の幸せを、願ってくれたんじゃないのかしら?

ねぇ、答えが欲しい。

ソフィアは答えをくれる。
あの人との出会いは、所詮運命の踏み台だそうよ。

私の心じゃなくて、ソフィアから与えられる答えが正解だそうね。


帰り道。
もう、あそこは私の帰る場所じゃなくなった。
リカルドゥスの持つお屋敷に住むことになったの。
今までと違って大きなお屋敷だしね、少しだけどメイドさんもいるの。
これが玉の輿ってことね、ラッキーね。

ねぇ、もうパパとママがお家に居ないの?
あそこにただいまって言って帰れないの?

嫌よ。

だけどね、ダメなんだよね。

宝具を付けて外を歩けば、あの日の事は嘘のようで、静かに時が流れる。
恍惚な表情を浮かべた吸血種に襲われることも無い。
それどころか私なんて道端の石ころのように見向きしないわ。

コレが、あるべき姿なのね。



嗚呼、愛しているわ。

愛しているの。

誰を?

あの人を。

あの少年を。

大好きな、私の最愛の人。


私の秘密。
世界中に祝福されるべき王と花嫁の始まりの秘密。

愛してもいない王と共に居るべき運命の私。

だから秘密。
愛し合っていない王様と花嫁なんて、物語に出来ないもの。


そう、コレは運命なの。

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