昔、あるところに一人の少女が居ました。
あまり目立たない、内気な少女でした。
その少女の家は貧しくも、裕福でもない一般的な家庭でした。
両親に愛されて生きていたのです。
少女は隣の家に住む吸血種の少年が好きでした。
少年も少女の事が好きでした。
幼いながらも二人は契約を交わし、両親共々に認められ、幸せでした。
しかし、少女が16歳になった夜の事でした。
少女と少年がそれぞれの家族も交え夕飯を食べていたのです。
少女は少年の事も、少年の家族も大好きだったので、幸せでした。
幸せ、だったのです。
そろそろ食べ終わるとゆう頃に、少年が苦しげに呻きました。
心配で背中を摩ろうと手を伸ばした少女の腕を少年が噛みました。
驚いた少女の首を、少年の父親が噛みました。
暴れだした少女の肩を、少年の母親が噛みました。
そうして三人は倒れていきました。
三人の身体を真黒な痣が覆っていました。
少女の両親は人間だったので何が起こったのかわかりませんでした。
少女は、噛まれた場所がまだ血を流しており、呆然としていました。
三人は、目を覚ましません。
黒い痣も消えてはくれません。
少女は外に助けを求めました。
しかし道を歩けば吸血種に絡まれ、噛みつかれます。
そうして最後には、必ず黒い痣と共に倒れていきました。
泣いた少女の元へ、一人の老女が囁きかけました。
老女は怪しい身なりや言動のせいで、町はずれに一人で暮らしていました。
本当は、老女は予言師であり高度な技術を持った呪具や宝具の職人でした。
老女はこの出来事を予知しており、少女の力を封じる宝具を持っていました。
しかし、宝具は老女には付けることが出来ません。
そう、宝具はたった一人、力の強い吸血種にしかつけられないのです。
ですが、老女のおかげで無事にその吸血種を見つけたのです。
そうして二人は‘花嫁’と、‘王’となったのです。
これは、それからのお話し。
少女の、花嫁のお話し。