紅を待たなくていいだろうか。
戻ってこない紅に思いをはせて早1時間。
流石に眠くなってきた、とゆうのもあるけれど。
一番は、あんな中途半端な状態だったとゆうことだ。
正直な話をするとあの行為を最後までしなかったとゆうのは嬉しい。
いや、嬉しいと言うのは少し語弊があるけれど。
少なからず今日は逃れられる、なんて思ってしまったのは確かだ。
自分ってこんなに嫌なやつだったか。
覚悟があるって周りにも、自分にも言い聞かせていたくせに。
いざとなったら無理とか我儘すぎだろう。
結局自分は生半可な覚悟しかなかったのだろうか。
また明日はシアに愚痴ることがたくさん出来てしまったなぁ。
自分にあきれながら、眠りについた。
次の日、目を覚ますと紅が隣にいた。
驚いてしまったのだが、もう忙しいのは終わったなど言っていたではないか。
戻ってきてくれたことに少しの安堵を覚えながらもその寝顔を眺める。
だけど少しだけ胸が痛いのは、なんでだろうか。
昨日まで頑張っていたのだから起こさないようにベッドを抜け出す。
冬の寒さもそろそろピークを迎えるのか、肌を刺すような寒さだ。
室内だとゆうのに、外はどれだけの寒さだろうか。
乗馬の時は昼間でまだ暖かかったし、運動のおかげで身体が温まっていたからだろう。
だけど今日は筋肉痛もあるし、部屋で大人しくしていよう。
朝は久しぶりに紅と一緒に食べたいし、図書室にでも行ってこようか。
ああ、でも今読んでいる本があるんだった。
お昼は外で読んでもいいけど朝は外に出るのはつらいなぁ。
なるべく暖かい恰好をして本を持ち、行先も考えずにとりあえず部屋から出る。
あてもなく彷徨っていると、メイドさんに出会う。
「おはようございます、透様。如何されました?」
「おはようございます。紅がまだ寝てるんで暇つぶしです」
「朝食はお二人でお召しになるのですね?」
仲がよろしいのですね、と続けられて曖昧に笑う。
まぁ、仲はいいのだろうか?
ここで疑問形になってしまうのでやっぱり違う気もしてくるけど。
「あら、本をお読みになるのなら温室はどうですか?」
「温室か・・・いいですね」
「ご案内いたします。冬ですがお花も咲いていますよ」
抱えていた本を見ると、温室を提案してくれたのでそこに行くことにする。
道すがら、いろいろお話出来て楽しかった。
話しやすかったし屋敷内の施設も沢山教えて貰えたので良かった。
「こちらになります」
「わ、綺麗」
「紅様もお気に入りの場所ですわ。ブランケットと紅茶でも用意致しますね」
「お願いします」
気を利かせてくれるメイドさん。
名前でも教えてもらって、今度昼間のお茶会でもお話ししたいな。
そう思っていたが、本を読み始めたら集中して周りのことに気が付かなかったらしい。
肩にかけられたブランケット、そして微妙な温度となっている紅茶。
既に俺以外誰もいない室内では、呼吸の音さえ聞こえてくる。
まだ朝食を食べていないからか頭があまり働かない。
時計を見ると部屋を出てから一時間近くは経過していた。
そんなに読んでいたくせにあまり本の内容が頭に入っていないのでまた読み直しだ。
そろそろ紅も起きている頃かと思って立ち上がる。
一応部屋への道もわかっていると思うが、大きな屋敷なので少し不安だ。
でもこの時間ならば誰かしら廊下に居るだろうと思い温室を出た。
「・・・紅?」
「透、おはよ。温室に行ってたって?」
「うん。綺麗だった」
「じゃあ朝食は温室で食べるか?」
「いいの!?やった、温室で食べたい」
温室を出てすぐに紅と出会った。
綺麗な温室で食事とは、朝から気分がいいものだ。
その時通りかかったメイドさんに温室に食事を運ぶように言ってまた温室に戻った。
程なくして運ばれてきた料理を食べる。
まったく、さすがプロが作ってるから美味しいものだ。
温室の和やかな空気が昨夜の事を忘れさせてくれ、朝食は穏やかに済んだ。