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暫く見詰め合ったまま、その後再びゆっくりと唇が合わせられる。
貪るような口づけに翻弄されるがまま、パジャマのボタンを数個外されて首筋に手が這わされていく。
血を吸う行為において、首筋を触られたことは何度もあったのに、怖い。

紅はいいのだろうか。
こんな俺に興奮するとでもいうのか。
ああ、でもそういえば俺には吸血種を惑わす色香とやらがあったっけ。

同性同士でも婚姻は出来るし、契約も出来る。
だけど、子供は出来ない。

愛を交わす行為でしか、俺たちのこの行為を有意味と言えない。
そう考えると俺たちは何をしてるんだろうかと少し、いやかなり虚しくなった。

なんだか最近考えてばかりで現実を置き去りにしているみたいだ。
少しだけ笑いたくなった時、肌に牙が刺さる

一瞬感じる痛み。
また思考の世界に向かおうとする俺を引き留めるように、血が吸われて意識がぼんやりとしてきた。

暫くして牙が抜けると紅の手は太もも辺りを撫でてきて、我慢だ自分と若干失礼なことを考えていたらふと痛みを感じる。

「・・・っ、たぁ」

「どうした!?」

「きょ、の、乗馬で、かも」

つったような痛みでジンジンする。
足の付け根が特にひどくて、少しでも動かそうものなら鋭い痛みを感じる。

「あー・・・えと、ごめん」

暫くして痛みに慣れた頃、紅に呼びかけてみる。

これは、俺、雰囲気ぶち壊したってことだよな。

冷や汗をかきながらまだ上に乗っかったままの紅を見つめた。
すると紅は深い息を吐きながら眉を寄せて笑う。

「紅?」

「大丈夫か?湿布でも貼ってもらえ」

「え、うん」

上から退き、メイドを呼ぶためか扉へ向かう。
その背中を見つめることしかできずに、その背中はやがて扉の向こうに消えていった。

暫くして神咲家お抱えのお医者さんだろうか。
白衣を着て眼鏡をかけた、優しそうな男の人が入ってくる。

「筋肉痛ですよね?少し触りますよ」

紅からある程度説明を受けているのか患部に触れ、触診した後に湿布を貼ってもらい、一応痛み止めを貰った。
一日何回かなどの説明を受け、そして去って行った。

紅は、戻ってこない。


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