休み時間。
今日は天気がいいとのことで外で食べることになった。
本当は天気がいいからこそ外に出たくなかったのだが引きづられるように連れて行かれた。
「あ!みんなこっち!!」
そう叫んで手を振ってきたのは吉田翠(よしだみどり)。
詩葵の恋人で契約を結んでいる。
ちなみに契約の説明をしてやろう、俺偉い。
吸血種は血を吸わないと生きていくことができない。
しかし恋人ぐらい近しい存在でないと血を吸わせてくれない。
だから恋人の契約とともに血の契約とも言われている。
本当に心の通い合った仲でないと契約は結べないので結構あれらしい、うん。
この契約を結んでいる者は相手の血しか飲むことは許されない。
吸いすぎると人間は死んでしまうし例え相手が同じ吸血鬼でも人間よりは血が抜かれても大丈夫だがやはり死んでしまう。
だからまぁ、死なせたくない相手じゃないとダメーみたいな。
ちなみにだが契約を交わしていない者達は動物の血を周期的に狩りに行って飲んでるらしい。
「翠っ!!待たせたな」
ただでさえ緩い詩葵の顔が緩んでいてイケメンじゃなかったら相当ひどい顔だと思う。
「いや?そんなに待ってないよ」
詩葵が翠を抱きしめる。
それに嬉しそうに背中に手を回す翠。
ほんわかとする光景だが陽の光が眩しくてもう体力ゲージが500ぐらい減ってる。
「ったく、いつもラブラブだなお前ら」
「でしょー?」
「当たり前だ」
ちょっと嫌味を込めていったつもりだが二人の愛の力と言うのだろうか?うん、とにかくそんなのに弾き返された。無念。
「まぁ、でもそろそろ時間無くなるし食べようよー」
「そうだ良く言った正樹」
軽くぱちぱちしながら言うといやぁ、とか照れたふりをする。
それに苦笑してやってからやっと離れた二人を横目に弁当を用意する。
いつも昼は俺と翠の手作りだ。
流石に夜は食堂を使っているけれども。
THE男の料理って感じの俺の料理の隣に可愛らしく切られた野菜がこれまた可愛らしく入っている翠の料理。
元々翠は料理なんかしなかったらしいが花嫁修業と言うかなんというか、習いに来た。
実家の母親にでも習えと言いたかったが我慢。
世界を飛び回っている両親なので自然と自分で飯を作るようになった、それだけだ。
だから味もあんま気にしないしとりあえず食べれればいいやと言う精神で作っていたけれど翠に教えるときに俺も本から学んだ。
でもこんなの絶対しないと思う可愛らしい盛り付け方とかあって、ちょっとげんなりした。
当たり前だが本は翠が図書館から借りてきたらしい。
「おら、さっさと食え」
「ほーい、いただっきまーす」
「いただきます」
各々が箸を片手に挨拶をする。
そして取り皿の上に好きなおかずをのせていく。
「おい正樹。野菜食え」
「っ!!野菜は世界の敵だ!!てか人参はラスボス…って止めてのせないでっ!!」
「あーはいはい」
「とか言いながらブロッコリー!?あぁ、もう透の馬鹿っ!!」
最初はあんまり気にしてなかったのだが以前偏食が凄くて倒れたのでそれ以来ちゃんと食わせるようにしている。
なんでも食べれるというのは作り甲斐があるようで無い。
だから食べれないものが多い正樹に食べれるものが増えていく瞬間がちょっと嬉しい。
「…あれ?なんか、食べれる」
「調味料変えてみた」
「すっげー!!透のおかげで俺もう倒れないぜ!」
「そうか、それは良かったよ。僕嬉しい」
無表情で棒読みのまま言ってみたけど正樹はもう何も気にしていなかった。
そして因みになぜ騒ぐのが嫌いな俺が騒いでいるかと言うと目の前で
「詩葵、あーん」
「ん、…美味いな」
という会話が為されているので聞かないようにするためである。
もし自分がが翠か詩葵のポジションに居たらとぞっとする、鳥肌がたちまくって怖い。
「透、だし巻き卵なんでこんなに柔らかいの作れるの!?」
「あー翠卵焼き苦手だよな」
「そうなんだよぉ…」
落ち込む翠。
詩葵に美味しいものを食べさせてやりたいという心意気は良いと思う。
こうして苦手を克服しようと頑張るのは良いと思う。
「週末教えてくんない?」
「おー、いいよ。暇だったし」
「ちょ、透!お前買い物付き合えって…」
そう言えば詩葵と買い物行く予定があったような無かったような。
思い出せないけれどまぁ詩葵は嘘吐くような奴じゃないから本当だろう。
「あーそういえばそうだった」
「詩葵!透譲って!」
「そうは言ってもよー」
「…詩葵の馬鹿」
「すいません俺が悪かったです」
拗ねたように馬鹿と言われたら土下座する勢いで謝る詩葵。
この会話だけで十分に二人の力関係というか上下関係が伺える。
翠のことが大好きすぎる詩葵はデレデレしまくって気持ち悪いけどまぁそんぐらい誰かを好きになれるのはいいことだと思う。
「…土曜日は詩葵と出かけるから、翠は日曜日な」
「っ!透…お前やっぱ良い奴」
「さんきゅー」
まぁ、やっぱ先に約束してたんだから優先させておいた方がいいだろう。
俺が二人に告げると嬉しそうな顔するから和むなぁ。
「あ、ねーねー。日曜日味見係で行っていい―?」
「正樹来てくれるの?透適当に美味しいって言うから本当にちゃんと出来たのかわかんなくてさぁ」
だからちゃんと味見係が居るのは嬉しいと微笑む。
それに慌てたように俺も行くと叫ぶ詩葵。
勿論了承の返事を出してから時間になったので今日は解散という事になった。