今日も人気の少ない場所でお昼を食べている。
この前折角作ったお弁当に毒を混ぜられそうになったこともあるので少し警戒中だ。
案の定紅様ファン(笑)の奴らがシアに制裁をしようとしたらしいが、どこからか現れた黒羽さんが毒入りだと教えてくれたので大事にはならなかった。
黒羽さんが他の人には見られない様にしてくれたのでよかったけど、学校での接触はやはりばれそうな気がして怖いんだけどね。
「あーお腹すいたー!」
「僕もー!今日はサンドウィッチ作ってみたんだよね」
「流石翠、美味そうだよ」
「ほんと・・・?詩葵っ!!」
はい茶番ー、とか思わないわけではない。
それでもそんな甘々な関係は本当に少しだけ羨ましい。
「・・・なぁ、お前らってケンカしたこととかないの?」
不意に、そんな言葉が口から漏れ出た。
なんというか、円満な夫婦生活の参考にと言うかそんなところだ。
「普通にあるよ」
「だよなー。まぁ、ほとんど俺が悪いから先に謝るけど」
「何やらかしてんだよ」
「勝手に中に出・・・」
「詩葵馬鹿!!助平!!変態野郎!!」
「・・・?」
急に叫びだした翠の赤すぎる顔に、なぜそうなったのかと首を傾げる。
ちなみにシアにも聞いてみたのだが同じくシアもどうしたんでしょうかと不思議そうだ。
正樹は何かを悟ってるらしくいやーらっぶらぶーなどと叫んでいた。
「兎に角お前らが順調なのはわかった」
「そうだ、俺と翠はずっと仲良いからな」
軽いドヤ顔に少々殴りたい気持ちが沸き起こったけれど、まあ我慢してやろうか。
どちらにせよこのままふざけていても飯の時間が無くなるだけだ。
「ほら、正樹!野菜食え野菜」
「・・・朝トマトジュース飲んできたし」
「だから実物は食わなくていいと?」
「食べます・・・」
いつも通りに正樹の世話を焼きながら、シアと雑談してバカップルに突っ込みを入れる。
まぁ、なんというか面倒だと思う気持ちも無いわけじゃないのだが、楽しいからいい。
それから食べ終わると案外時間がたっぷりあったのでお茶を片手に雑談中だ。
話題は普通に学校のことなど、そしてそろそろ始まる冬季長期休暇のことについてだ。
思えば紅と出会ってから一か月と少したっているんだなぁと改めて気づく。
「俺はなぁ・・・紅とずっと過ごしてるだろうし」
「お前のとこだって随分と仲良しじゃんか」
ま、俺と翠には敵わないだろうけどなと自慢げに続けたのは見事にスルーしてやった。
「だよねー、もう妬けるわー」
「正樹、嫉妬ですか?」
「そんなとこー!」
正樹の話にシアは付き合っていて、バカップルはいちゃいちゃしてるしでなんか疲れた。
俺も正樹達に混ざって冬休みどうするかの話をしていると、何故か紅とは今どこまで進んでいるのかと訊かれる。
「あー・・・いや、言わなきゃいけねーの?」
「きーにーなーるー!」
「うるさい正樹」
「気になるっ!!」
「翠もうっさい!」
「おい透!俺の翠になんてことを!」
もうとりあえず詩葵は黙れと言いたい。
「キスもするし血も吸わせるし飯も食わせてる、以上」
「エロいことしねーの?」
「ちょ、詩葵!?直接過ぎますよ!?」
「でもさーシアも吸血種ならわかるだろ?」
「・・・まあ」
そこで昼休みの終わりを告げる鐘が鳴ってしまい、話はうやむやになる。
吸血種ならば、わかる。それはいったいなんだろう。
というかエロいことってなんだ。
朝も少し想像と言うか妄想してしまったけど、ビジュアル的にも本当にない、絶対ない。
親友で想像するのもどうかと思うけど詩葵と翠ならイケメンと可愛いでなんというか違和感があまりないし、お似合いだとは思う。
そうゆうことしててもバカップルめ!ぐらいにしか思わない。
「透?早く行こうよー!」
「おう、あ、次移動教室じゃなかったっけ!?」
結局次の授業のことを無理やり考えることにして思考を断ち切った。
でも、やはり胸中にしこりが出来た感は拭えなかった。