1

変わったこと、と言えばなんだろうか。
部屋替えが行われ、紅の部屋に強制移動されられた俺と一人部屋になった詩葵。
もういっそのこと翠も移動させちゃえばいいと思ったけど、あくまでもこの部屋替えは花嫁を守るためのものなので駄目だったらしい。
理事長も一応理事長なので、そこら辺はきちんとしている。

シアが毎朝迎えに来てくれて、三人で食堂まで行くのだが紅とは途中でお別れだ。
紅が常に俺に張り付いている、そんな待遇だとすぐにでも俺が何らかの特別な立場であるとわかってしまうのは一番避けたいのだ。

紅は転入生組で一番の美形だし、一部の人が紅が王様で自分が花嫁だと思い込んでいるので傍に居るのが当たり前、どうしてお前が紅様の隣にいるんだ死ね的なのになるらしい。
理事長も情報統制はしてくれてるのだが、やはり公言していないので堂々と守ることも出来ないしでそっちはどうにも出来ないので俺の護衛を強化すると言ってた。

「透、あまり離れないで下さいよ!」

「ああうん、ごめん。シア」

「どうかしたんですか?」

「いやー?旦那の浮気が気になってね」

「そんな!!こ・・・旦那様はそんなことなさいません」

俺とシアは、紅のことを話す時に旦那様と呼ぶようにしている。
この学園では、この世界では同性愛など大して珍しいことでもないのでむしろ自然だ。

そんな俺らの会話は何故か歪曲されてしまい、シアには彼氏―――旦那様と呼ぶぐらいだから将来を誓った相手―――が居ると噂され、様付けするなら偉い人・上司の人→ご主人様である紅がお相手じゃないのかとまでされている。

シアは滅相もない云々言ってたけどある意味俺が紅とどうのこうのな関係であることはいい感じで隠せているので犠牲になって貰っているのだ。
紅は元々噂なんて気にしない奴だし、むしろ俺と紅の関係が上手く隠されていると言えば、シアにこのまま噂を流れさせとけと命令していた。

そのおかげかシアは紅相手じゃ敵わないと告白される回数も減り、報復を怖がって手を出してくる奴も減って結果オーライと喜んでいた。
まあ例の俺が花嫁なんだぜ!な人たちからは嫌われており、軽い虐めみたいなのもあるがシアを好きな大勢の人が守ってくれるので大丈夫なようだ。
こんな時人気者はやっぱいいなーとも思ってしまうけど、やっぱ目立ちたくないな。

「おはよー透!」

「最近早いな、正樹」

「だってさぁー透ってば放課後は全部予定あるからさー」

「学校では自分に構えと?」

「せーかいー!弁当食い終ったらぎゅーってしてやるからな!!」

「そりゃどーも」

放課後予定があるというのは、学校が終わったらすぐさま部屋に戻されることを言っているのだ。
正樹も仕方ないとわかっているから放課後は諦めて学校でひっついてくる。

別に部屋に呼んでもいいんだけど、なるべく俺と一緒に居ようとしてくれる紅にも悪いし、紅は煩いのとか嫌いだろうから学校だけで我慢。
それに朝・昼は詩葵達と普通にご飯食べているので夜は紅と二人だって構わない。
少し迷惑だがカイン先輩も突撃・夜ご飯とか言って押しかけてくるし。

「てか数Tの宿題やったー?見せてよシア!」

「正樹ったら・・・まだ時間あるでしょ?一緒にやりましょう」

「あー・・・シア、俺もいいか?」

「え、透もですか!?」

「昨日は旦那とハッスルしててなー」

「ひぅ、ななななんてことをそんな・・・!!」

「冗談でーす」

ただ血を吸わせてただけです、何の勘違いをしてるんだろうねー。
まあ、俺も紅とは夫婦ってことだし夜の営みも・・・って俺が何を考えてるんだ。

「あ゛ぁぁ・・・」

「どーしたー?」

「何でもない、強いていえば俺の逞しすぎる想像力が怖かった」

押し倒されてる自分の図が浮かんでくるってどんだけだ、やばいぞ。
てかどちらにせよ俺なんかに食指が動くわけもないんだし紅もそんな目では見てない筈。
性欲が全く無いとも言わないが紅はなんか淡泊そうだ。

「もーだから俺は何をかんがえてんだ!」

「と、透?大丈夫ですか!?」

大丈夫じゃないです。

[ 46/120 ]

[前へ 目次 次へ]
しおり

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -